ジョーダン・プール

ブライアン・キーフの下で混乱を脱し、攻守ともに成長

ジョーダン・プールは昨シーズン終了時点での会見で、オフに若手を集めて自主ワークアウトを行うことを明かしたが、自分自身のプランについては「まだ言えない。いずれ分かることだ」と話した。その2カ月後、彼のペリカンズへのトレードが発表された。

ウィザーズはプールとサディック・ベイ、今年のNBAドラフト40位指名権を放出し、CJ・マッカラムとケリー・オリニク、将来の2巡目指名権を得た。再建中のウィザーズは若手の指南役を重視しており、退団したマーカス・スマートの後任としてマッカラムがリーダーシップを担う。同時に、マッカラムもオリニクも契約は残り1年のため、ウィザーズは来年オフに大きなキャップスペースを得られ、再建を一気に加速させられる。

プールはウィザーズで2年間を過ごしたが、チームは再建期を脱することができなかった。チームが成績を残さない限り、選手の評価は上がらない。多くのファンがウィザーズに関心がなく、プールの印象は『ドレイモンド・グリーンに殴られた男』のままだろう。しかし、ウィザーズのファンはプールが去ることを惜しんだ。

一昨シーズン、プールのウィザーズ最初の数カ月は苦戦が目立った。ウォリアーズを放逐されたことで自信を失っていたし、実績豊富なベテランが居並ぶ状況から一転、若手を引っ張る立場に置かれ、勝てないチームで自分が何をすべきか迷っていた。そんな彼の転機となったのはブライアン・キーフのヘッドコーチ就任だった。ウェス・アンセルドJr.の解任により指揮を執るようになったキーフが真っ先に行ったのはプールをスタメンから外すこと。チームのことは一度忘れて、自分らしいオフェンスを取り戻すことを第一の目標とし、同時に「ディフェンスでも若手のお手本となる姿勢を見せてくれ」と伝えた。

ここからプールは少しずつ変わっていく。自ら積極的に攻める姿勢を出しつつ、相手ディフェンスが寄ってくればパスをさばく。得意ではないディフェンスでも集中力が続くようになった。「僕にもディフェンス面の強みはあって、スピードと予測、素早く手を出すことだ。コーチと協力して、それを最大限に生かす方法を学んだ」とプールは言う。

「キャリアハイのスティールを記録できたのはそのおかげだ。それ以上に印象的なのは、チームとして連携して守れたことだ。このチームにはディフェンスの得意な若手が多く、一人が抜かれてもカバーが期待できる。それを活用するような連携を意識しながらチームで守れたことは、僕にとっても大きな成長だ」

落ち着きと自信を取り戻したことで視野が広がり、プレーメークも向上した。この過程をプールは楽しんでいた。「相手ディフェンスが仕掛ける様々なディフェンスに対応する。毎試合で異なるディフェンスのどこを見て、どう対処するかを学ぶのは楽しい挑戦だった。今シーズン、僕はこの面で考えられないほど上達できたと思っている」

彼のプレーメークの下で多くの若手が成長したが、いまだ再建期にあるウィザーズと彼のタイムラインは噛み合わなくなり、今オフのトレードに至った。今オフにペリカンズの球団社長に就任したばかりのジョー・デュマースは、プール獲得をこう語っている。「今のNBAではダイナミックなガードのプレーが必須条件となっており、ジョーダンはこのリーグで最高のガードたちと肩を並べるスキルセットを持っている。優勝経験があることも含め、彼を獲得すべきだと判断した」

勝利という結果が出ない以上、プールの復活は注目されず、『負け犬』のレッテルが貼られたままだが、この2年で状況は確実に良くなっている。20.5得点と4.5アシスト、1.5スティール、3ポイントシュート成功率(37.8%)はキャリアハイの数字。ジョーダン・プールは新天地ペリカンズで『完全復活』を果たすだろうか。