ヤン・ハンセン

本人の予想をも大きく上回る1巡目16位指名を受ける

ヤン・ハンセンはグリズリーズに1巡目16位で指名され、すぐにトレイルブレイザーズにトレードされた。中国CBAの青島イーグルスで2シーズンプレーした身長216cmの大型センター。ドラフトコンバインで評価を高めたが、それでも2巡目での指名が予想されていた。

NBAドラフト初日、1巡目上位指名で名前が呼ばれることはないと思っていた彼は、控室で食事をしていたところに代理人から「今すぐ戻れ」の電話を受け、大慌てで客席へ向かった。NBAコミッショナーのアダム・シルバーから名前が呼ばれた時、彼は白いスーツを羽織ったばかりでボタンを留めるのに手間取ったのは、そういう理由があったからだ。

ヤンがドラフトコンバインで話題となったのは、サイズと身体能力だけでなくスクリメージで印象的なパフォーマンスを見せたからだ。即席のチームメートの動きを理解しようと努め、カットインに合わせて正確なパスを出す。中国出身の大型センターと言えばいまだに誰もが『万里の長城』の異名を取ったヤオ・ミンを想像するが、彼が目標としているのはニコラ・ヨキッチだ。

サマーリーグでは、CBAではほとんど打っていなかった3ポイントシュートに果敢に挑戦し、それほど決まっていないにしてもNBAで自分のスタイルを柔軟に変えていく姿勢を見せた。ペリカンズ戦で迷わず放った長距離砲をスウィッシュで決めた際には、会場からどよめきが起きた。パスセンスも引き続き注目に値するもので、数日前に会ったばかりの選手たちの動きに合わせたパスを次々と繰り出した。

河村勇輝のようなイマジネーション豊かなパスではなく、自分の身体を壁にしてボールを守り、味方が走り込むスペースに送る、堅実だが効果的なパス。サマーリーグ初戦のファーストプレーで味方のダンクをアシストしたことが、彼のプレースタイルを明確に表している。課題はむしろディフェンスとリバウンドで、CBAとは桁違いの身体能力に苦労しそうだが、サマーリーグでその壁を経験したことが開幕に向けた準備に繋がるはずだ。

「サマーリーグでは良いプレーも悪いプレーもあった。良かったプレーはそのまま受け入れ、悪かったプレーはしっかり指摘してもらい改善していきたい」とヤンは言う。「これからチーム始動までにトレーニングを積んで筋力を増やすつもりだ。そうすることで、NBAのスタイルやペースに適応できるようになりたい」

サマーリーグでの活躍は、デイミアン・リラードの復帰というビッグニュースにかき消されてしまった感があるが、オフコートの生活を聞かれて「ほとんど寝ていて、あとは食べているかPS5か」と答えたヤンらしく、「リラードは大好きな選手で、NBA2Kでずっと使っていた。だからまずはケガをしっかり治して、一日も早くコートに戻って来てほしい」と語り、自分の手首を指さす『デイム・タイム』のポーズで周囲を笑わせた。

中国でのプロ経験があるとはいえ、まだ20歳になったばかりの彼は即戦力ではなく、時間をかけてNBAに順応していけばいい。それでもブレイザーズはディアンドレ・エイトンの契約をバイアウトし、センターはドノバン・クリンガンとロバート・ウィリアムズ三世の2人。クリンガンもルーキーシーズンを終えたばかりの若手で、ウィリアムズ三世はセルティックから加入しての2年間はケガ続き。勝つよりも育成が優先されるブレイザーズで、ヤンが1年目からリーグに存在感を示す可能性は十分にある。