自らの成長とビッグクラブへの挑戦を糧に飛躍を誓う

昨シーズン、地元クラブの大阪エヴェッサで60試合全試合出場という実績を残しながら、島根スサノオマジックに移籍した飯尾文哉。まずは昨シーズンの振り返りから聞いた。

「監督が代わって求められることが少し変わったことで、アジャストするのに時間がかかりましたが、シーズンの後半にかけてはディフェンス面で成長できたという手応えがありましたし、試合に出るために必要なことが明確だった分、取り組みやすさはありました。ただ、僕は大学までオフェンスでリズムを作る選手だったので、ディフェンスから流れを作るのは難しく感じた部分もありました」

飯尾は「昨シーズンは9:1くらいの割合でディフェンスを求められていました」と言う。自身が持ち味と自覚しているオフェンスは「自分の実力不足です。シュートの確率も含め、もっと結果を見せられていたらオフェンスでも信頼を得られたと思います」と不完全燃焼だったものの、60試合すべてに出場するなどチーム内での信頼は確かなものだった。

「藤田弘輝ヘッドコーチには『ディフェンスの部分で買っている』と強く言っていただきましたし『シュートの確率が上がれば、とんでもないプレーヤーになる』とも言ってもらいました。自信を持てましたし、ディフェンスについて昨シーズンほど深く考えたのは初めてだったので感謝の気持ちでいっぱいです」

飯尾はこのように大阪で得たものを語り、移籍を決めた理由について話を進めた。

「大阪の時は自分の実力不足を痛感する場面も多くて、もっと成長したい、挑戦したいという思いが強くなりました。ずっと同じチームにいたら気づけないことがある。違う環境に飛び込めば、違うものが見えてくるかもしれない。その感覚が大きかったです。正直、正解かはわからないけど、自分の人生においても大きなチャレンジです」

自由交渉選手リストに公示され、オファーを受けたとき、島根はちょうどチーム再編の真っただ中。選手もスタッフも入れ替わる、まさに『未知の環境』だった。「正直、不安もありました。でもZoomで監督と話して、求めるプレースタイルやコーチ本人の人柄に惹かれました。『成長できる』という言葉がとても心に響いて、決断しました」

求められるディフェンスと求めていくオフェンス

クラブが変わっても、飯尾が期待されているのは引き続きディフェンスの強度。しかし、本人はオフェンスの成長も明確な目標として掲げている。「特にシュートの確率ですね。そこが上がらないと、このリーグでは生き残っていけない。今は大阪時代に取り組んでいたキャッチやリズムの作り方を自主練習で復習中です」

大阪時代には田中亮アシスタントコーチ兼スキルディベロップメントコーチに映像分析や細かな技術指導を受け、ウィークポイントを見直すきっかけを得た。「試合後の振り返りって、正直好きじゃなかったんです。でも田中さんと一緒に全試合を見直し、アドバイスをもらえたのはすごく勉強になりました」と飯尾は感謝を口にし、「島根でもコーチ陣とたくさん話して、さらにプレーの精度を高めていきたいです」と語った。

島根には今シーズンより岡田侑大や中村太地といったポジションが近い実力者も加入した。彼らとどのように共存し、競争していくのかが飯尾の移籍初年度のテーマとなりそうだ。

「中村選手とはあまり対戦したことがないのですが、岡田選手は京都ハンナリーズに所属している時から何度も対戦していて、守るのが嫌な選手です。でも練習で対峙することで学びを得られます。彼を守ることができれば、他の選手も守ることへの自信になります。自分は外国籍選手のガードなどにマッチアップすることが求められていて、それは裏を返せばチームのオフェンスの核を止めるということ。しっかりと守っていきたいです」

チームで求められているディフェンスの強度を武器に、相手のエースを抑える仕事を請け負う覚悟と、自身がこれからリーグを生き残るために改善しなくてはいけないシュート確率。明確な目標を立て、大きなチャレンジへと向かう飯尾は最後にファンにメッセージを語ってくれた。

「島根スサノオマジックのファンやブースターさんはとても熱く、対戦した時には会場全体でそろった応援がとても威圧感がありました。それが声援となることはとても心強いですし、僕がファイトする姿を見てもらって、もっと熱くなってもらえたら嬉しいです。大阪では関西のノリを見せていましたが、今年は真面目キャラで行くので、あんまりいじらないでください(笑)」