
ゲインズが目指す『ポジションレス』バスケ
バスケ女子日本代表は深圳(中国)で7月13日から20日にかけて行われる『FIBA女子アジアカップ2025』で、2大会ぶりの王座奪還を目標としている。今年から新たに女子日本代表ヘッドコーチに就任したコーリー・ゲインズのもと、これまでの知見を受け継ぎながら新しい境地を見出そうとしている。
パリオリンピックで2大会連続のメダル獲得を期待されていた女子日本代表だが、トム・ホーバスから指揮権を受け継いだ恩塚亨のスタイルが実を結ばず、最下位に終わった。日本バスケットボール協会はこの状況を打破するべく、WNBAフェニックス・マーキュリーを優勝に導き、男子日本代表でもホーバスの右腕として活躍したコーリー・ゲインズに白羽の矢を立てた。
ゲインズは就任会見で選手たちに『ハイエナジー』『安定感』『プレーハード』を求め、可能性を秘めた幅広い世代から選手を招集するとコメント。さらに、恩塚が志向していた40分間走り続けるバスケを既定路線に掲げ、選手が強化合宿に来ることを楽しいと思えるチームを作ると語っていた。
合宿や強化試合を重ねるうちに、ゲインズが求めるスタイルがあらわになってきた。それはポジションレスなバスケットだ。今野紀花や東藤なな子は今までフォワードとしてプレーすることが多かったが、ポイントガードのようにボールプッシュもこなすようになった。コンボガードとしての役回りが多かった星杏璃はより積極的にシュートを狙うことを求められている。ゲインズは選手のポジションレス化を推し進めていくことで多彩なオフェンスパターンが生まれることに期待している。
ウイングプレーヤーとして代表を経験してきた東藤は、ボールプッシュを求められる今のスタイルに対して「自分の強みを忘れず、迷わずに新しいことに挑戦できている感じです」と語る。今野も「このバスケで自分の新しいスタイルや可能性を見いだせるんじゃないか。この思いや好奇心は、代表でプレーしたいのと同じかそれ以上かもしれないです」と変化を楽しんでいる。

過去にはとらわれない、しかし伝統は継承する
若い新戦力だけでなく、これまで代表を長らく牽引してきたベテランたちも健在だ。センターでありながらWリーグで3ポイントシュート成功率1位に輝いたこともある髙田真希は、ゲインズが求めるプレースタイルにマッチする選手。国内で行われた壮行試合では全4試合に出場し、チームに欠かせない存在であることを証明している。
3年ぶりに代表復帰を果たした渡嘉敷来夢も大きな存在感を発揮している。チームの3ポイントシュート成功率を上げるためにはスペーシングが重要だが、それ以上にカギになるのがディフェンスを収縮させギャップを作ること。これを実現するにはインサイドで脅威となる存在が必要で、渡嘉敷は見事にその仕事を遂行している。
髙田は言う。「新体制になって初めて臨む大会なので、まだまだ不安なこともたくさんあります。一試合一試合を通してチームを成長させ、2年前に逃した優勝を勝ち取って日本に戻って来られるようにしたいです」
渡嘉敷も抱負を語る。「アジアカップでは自分の高さを生かして、少しでもチームの勝利に貢献できれば良いと思っています。目標はもちろん優勝することです。まずは、もう一度アジアチャンピオンになって、世界へ挑んでいきたいです」
女子日本代表は7月13日からのグループフェーズでレバノン、フィリピン、オーストラリアと対戦。上位3チームに入れば来年3月開催予定の『FIBA女子ワールドカップ2026世界予選』の出場権を獲得できる。1位はストレート、2位と3位は準決勝進出決定戦に勝利したら準決勝に進出。勝ち進み、王座を奪還できれば『FIBA女子ワールドカップ2026』への出場も決まる。
グループフェーズ、そして今大会における最大のライバルはFIBAランキング2位のオーストラリア。前回大会にも出場したエースのクロエ・ビビーを筆頭とした高い攻撃力を、激しいディフェンスで封じ込められるかが勝敗を左右しそうだ。
■『FIBA 女子アジアカップ 2025』女子日本代表チーム メンバー
#2 今野紀花(SG/179cm/25歳/デンソーアイリス)
#3 馬瓜ステファニー(PF/182cm/26歳/CASADEMONT ZARAGOZA)
#4 川井麻衣(PG/171cm/29歳/デンソーアイリス)
#8 髙田真希(C/185cm/35歳/デンソーアイリス)
#10 渡嘉敷来夢(C/193cm/34歳/アイシンウィングス)
#26 田中こころ(PG/172cm/19歳/ENEOSサンフラワーズ)
#37 薮未奈海(SF/178cm/20歳/デンソーアイリス)
#52 宮澤夕貴(PF/183cm/32歳/富士通レッドウェーブ)
#59 星杏璃(SG/171cm/25歳/ENEOSサンフラワーズ)
#77 栗林未和(C/188cm/26歳/東京羽田ヴィッキーズ)
#75 東藤なな子(SG/175cm/24歳/トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
#99 オコエ桃仁花(PF/183cm/26歳/ENEOSサンフラワーズ)
※年齢、所属は2025年7月7日時点