大敗の中で際立った熊谷のオールラウンドな働き
仙台89ERSは4月に入りいまだ勝ち星がなく、リーグ最下位に転落してしまった。3月終盤にトップスコアラーのウェンデル・ホワイト、先発ポイントガードの石川海斗が続けて離脱してしまったことが一番の要因である。
昨日の千葉ジェッツ戦、仙台は結果的に100点ゲームの大敗を喫した。「相手にやりたいこと、得意なプレーをやらせてしまいました。そこはすごく反省しています」と熊谷宜之からはネガティブな言葉が発せられた。だが、その大敗の中で14得点を挙げ、1人奮闘していたのが熊谷だ。
第1クォーター、10-24と先行されて早くも悲観ムードが流れる中、熊谷の連続3ポイントシュートとリングへのアタックによって踏み留まり、20-26で第1クォーターをしのいだ。
「試合の流れは大事ですし、いつも考えてます。ここで取られたら、ここで取れたらっていうのは意識してます」と熊谷は試合の流れを読み、自分のプレーを選択している。
試合の趨勢が決まっても、集中したプレーを随所に見せた。中でもパワー、スピード、ハンドリングのすべてが一級品のタイラー・ストーンからオフェンスファウルを獲得した場面は印象的だった。プレッシャーをかけシュートを打たせない微妙な距離を取り、完璧にコースを読んだ。「相手の特徴を理解してるつもりなので、そこはやらせないようにと意識しました」と冷静に語ったが、熊谷の能力があってこそのプレーだった。
今の仙台は身長のミスマッチや得点力不足など抱えている問題は多い。その中でオールラウンダーの熊谷は最も大事な存在となる。
「得点もそうですし、リバウンドが取れない時はリバウンドにも絡みたい。もちろんディフェンスで相手をストップしたいです。足りない部分を僕が埋めていくことを念頭においてやってます」と多くのミッションを献身的に遂行する。
苦しい戦いが続くも集中を切らさず「単純に我慢です」
どんな選手でも審判のコールに不満を感じることはある。高さで不利な仙台にとって、リバウンド争いでファウルを吹かれるのは最もダメージが大きい。昨日の試合でもスクリーンアウト時にファウルをコールされる場面が目立った。一瞬だけ表情を崩すものの、すぐに平常心を取り戻し、プレーに戻っていく熊谷の姿は印象的だった。
「そこで精神的にブレてしまうと次のプレーにも影響しますし、最悪テクニカルにもなるので、そこは言うところは言って、引くべき時は引きます。ストレスは溜まりますが、戦う相手が違うので」と熊谷。
メンタルを適切に保つ秘訣を聞くと、「単純に我慢です」と苦笑した。
厳しい戦いが続く仙台にとって、残留プレーオフの話題は避けては通れないが、それでも熊谷が下を向くことはない。「濃厚って言われてますけど、まだ100%じゃない。回避できるように頑張ります。もしトーナメントに行ったとしても、残り5試合をトーナメントのために、チームの意識を上げるプレーをしたりだとか、レベルアップできるようにしていきたいです。残り5試合勝ちに行きますけど、そういうトーナメントを意識した戦いをしたいですね」
大敗後とあって、もちろん明るい雰囲気ではなかったが、「B2の可能性もあるので日々の練習からやっていかなきゃいけない。落ち込んでる暇はないです」と、その口調は力強かった。
厳しい状況に変わりはないが、まだ降格が決まったわけではない。いや、むしろ十分にチャンスが残されていると言える。熊谷が『足りない部分』を補うことで、道は拓かれるかもしれない。
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