「Bリーグに来てから最もタフなシリーズだった」
琉球ゴールデンキングスは5月19日、三遠ネオフェニックスとのチャンピオンシップセミファイナル第3戦に77-69で勝利し、4年連続ファイナル進出という快挙を成し遂げた。
注目の立ち上がり、琉球は最悪のスタートを切った。優位に立たないといけないゴール下において、三遠のヤンテ・メイテンにオフェンスリバウンドから2度に渡って得点を奪われ、ノンシューターとして離して守っていた根本大にも3ポイントシュートを連続で決められた。しかし琉球は、この劣勢を文字通りの全員バスケットで挽回。第1クォーターだけで10選手がコートに立ち9選手が得点するという全員の積極的なアタックが光り、2桁のリードを奪う。
第2クォーター以降は、三遠の激しいディフェンスでボールムーブが停滞し、タフショットを打たされる機会が増える。対照的に三遠はテンポの良いパス回しから効果的にドライブを仕掛けるなど、質の高いオフェンスを発揮。第3クォーター序盤で逆転を許した琉球は、中盤で8点のビハインドと危険水域を迎える。
だが、琉球はこの崖っぷちを最大の武器であるリバウンドでなんとか踏みとどまる。シュートタッチは良くないもののオフェンスリバウンドをもぎとってなんとか得点に繋げ、くらいついていく。我慢に我慢を重ねることで第4クォーター中盤からようやく流れを手にした琉球は残り3分、ヴィック・ローの連続タフショット成功で逆転に成功し、激闘を制した。
琉球の桶谷大ヘッドコーチは、「3戦とも死闘で、どちらが勝ってもおかしくないゲームでした。最後はヘロヘロで1人ずつ交代しましたが、その中でもリズムを崩さずに力を出せた。みんな最後まで一丸となって戦ってくれました」と、チーム力でつかんだ勝利を強調する。
さらに指揮官は、「理不尽なトランジションがありながら3ポイントシュートもリバウンドも強い。良い意味でよくわからない、むちゃくちゃな強さで、現代バスケットボールの一番すごいバージョンをしています」と三遠を称えた。岸本隆一、ケヴェ・アルマの不在も大きく影響して、よりインサイドを強調した時代に逆行するスタイルで戦う琉球が、僅差で自分たちが上回ることができた理由を「自分たちの強みを生かし、相手の良いところを集中して止めたことがよかったです」と振り返る。
「キングスの強みは、みんなの力を1つにして戦えること」
この試合、30得点を挙げたエースのローは、「Bリーグに来てから最もタフなシリーズだったと思います」と語る。
クォーターファイナルの島根スサノオマジック戦に勝利した後の会見で、ローは「僕がグッドな選手であることが忘れられている」と強い反骨精神を見せていた。だが、レギュラーシーズンに続いての活躍によって、自身がBリーグを代表する選手であることを証明したことは間違いない。
それでもローは「より自分のことを証明できたことはハッピーです。ただ、スポーツでは良い時もあれば悪い時もあります。外の声に影響されてはいけない。自分がどうバスケットボールに取り組むかが重要です」と、これまでと変わらないスタンスだ。
そして再び頂上決戦へと戻ってこられたのは、個人のスターパワーではなく、すべてチーム力のおかげだと続ける。「昨日、松脇圭志選手の最後のプレーがなければ今日の試合はなく、自分の活躍もなかったです。ジャック・クーリー選手、アレックス・カーク選手、脇真大選手もこのシリーズは良い活躍をしてくれました。チームメートへの感謝を忘れずにいます。キングスの強みは、みんなの力を1つにして戦えていること。僕だけ、スター選手のおかげでなく、チーム全員に加え、ファンと一体となることでキングスはとても強くなれます」
このようにローは、ファンのサポートを心から大切にする。だからこそ、試合後には観客席に自ら足を運び、浜松まで駆けつけたファンと勝利のハイタッチを行った。
「ファンのことを愛しています。浜松にも来てくれた人はもちろん、沖縄アリーナでの観戦イベントで応援してくれた人にも感謝しています。皆さんのサポートは素晴らしく、Bリーグ屈指のファンベースだと思います。ファイナルにも沖縄からたくさんの方が来てくれることを望んでいます」
「どんな状況でもビッグプレーヤーはビッグプレーを決める」
チームファーストの姿勢を何よりも強調するローだが、同時にチームリーダーとして勝負どころで大きな責任を背負ってプレーする覚悟を持っている。この試合の第4クォーター、大きな重圧がかかる場面でもためらうことなくシュートを打ち続けた理由をローはこう語った。
「ゲーム1では、決めれば勝つシュートを外しました。ゲーム2も同じ状況で自分に託されたのに外してしまいました。ただ、ゲーム2の試合後、ホテルの天井を眺めながら明日の試合を想像して、もしビッグショットの場面があったら絶対に打ちたいと思っていました。そういうシュートを打つためにバスケットをやっています。ゲーム3はフィールドゴール24本中8本成功でしたが、重要なシュートを決められてうれしいです。もし、今日の試合でシュートを20本続けて外していても21本目を打ちます。それを決めてチームを助けたい。リーダーとして周りから信頼される存在になるために、試合の命運を握るシュートを率先して打つことには常にハングリーな気持ちでいます」
Bリーグ随一のクラッチシューターである岸本の不在もあり、どの試合も試合終盤になるとローへのマークはより厳しくなっていく。それはおそらくファイナルでも変わらない。だが、ローは「どんな状況でもビッグプレーヤーはビッグプレーを決めるものです」と、苦境を乗り越える覚悟を持ってコートに立つ。