ペイント内シュートが増えるも成功率は大きく落ち込む
第1戦を落としたとはいえ、第2戦に149得点のオフェンス爆発で大勝したサンダーが、このまま第1シードの強さを見せつけるかと思われました。しかし、舞台をデンバーに移した第3戦はオーバータイムまでもつれながら104得点しか奪えず、1勝2敗と黒星先行になっています。
しかし、ナゲッツのディフェンスが良かったかといえば疑問符がつきます。もともとディフェンスを得意とするチームではなく、すでにプレーオフ10試合目で動きが鈍く、ゾーンディフェンスで誤魔化す部分も見られます。特にゴール下ではたびたびフリーを作ってしまい、サンダーにイージーな得点チャンスを数多く与えました。
それでも、この試合のサンダーのペイント内シュートは速攻でのイージーショットを除くと41%と低調で、第2戦の72%から大きく落ち込んでいますが、アテンプト数は逆に36本から59本に増えています。よりリングに近い位置でのシュートが増えたことはナゲッツの守備をこじ開けたことを示しますが、ここにむしろ『罠』が仕掛けられていたように見えます。
機動力のあるサンダーのオフェンスを追いかけるのは、選手層に問題を抱えて試合数も多いナゲッツには厳しく、また1on1の能力でもサンダーに分があります。一方でアーロン・ゴードンやマイケル・ポーターJr.、ペイトン・ワトソン、ラッセル・ウェストブルックとリムプロテクトに参加できるウイング役が揃っており、高さ勝負では互角以上に戦えます。そのため、あえてインサイドにパスを出させ、そこを素早く囲んでシュートミスを誘う意図があったように見えました。
インサイドにパスを出させる守備は、ペイントの外に人数を割くことを意味し、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのドライブに対しては早めにドライブコースにカバーを準備することでリムアタックを減らし、簡単にファウルを与えないことにも繋がります。
ナゲッツに有利なスローペースの展開に引き込む『罠』
ナゲッツの素早い収縮に対し、チェット・ホルムグレンとアイザイア・ハーテンシュタインのビッグマン2人がともにフィールドゴール成功率40%未満と苦しみ、特に後半は2人合わせて2得点しか奪えませんでした。本来であれば機能していないビッグマンを下げ、サンダーが得意とするスモール戦術に切り替え、ドライブとキックアウト、カッティングでの攻略に出る手段があったはずですが、接戦とはいえ常にサンダーが先手を取る展開、しかもニコラ・ヨキッチへのディフェンスが効いていたことで、得点を取りに行く形にシフトできなかったように見えました。
ロースコアになったのは互いのオフェンスが低調だっただけでなく、ナゲッツ側のスローダウンにより試合のペースが落ちたことも関係しています。速攻の得点はサンダーが14-7と上回っていましたが、ハーフコートオフェンスではナゲッツが有利で、サンダーとしては試合終盤にスピードアップして均衡を崩す選択肢もあったはずです。
ナゲッツディフェンスの『罠』にハマったサンダーは相手が望むハーフコートオフェンスに付き合わされ、自分たちから打開する積極策を採ることもできませんでした。ひょっとしたら第1戦の終盤でヨキッチが見せた怒涛の得点ラッシュへの警戒心が、スモール戦術への移行へ踏み切れなかった理由かもしれません。
ただ、ヨキッチとジャマール・マレーの鉄板のコンビプレーに加えて、ゴードンが勝負強さを発揮していることもあり、接戦ではナゲッツに分がありそうです。サンダーとしては試合終盤で大きなリードを得るために、積極的に変化をうながすリスクを採れるかが第4戦以降のキーポイントになりそうです。