ジェームズ・ハーデン&ラッセル・ウェストブルック

緻密なハーデンを情熱のラスが上回り、ナゲッツが勝利

ナゲッツとクリッパーズのプレーオフ・ファーストラウンドは、お互いに接戦での勝利あり、ブローアウトでの勝利あり、止められないエースの大爆発ありと試合ごとに異なる展開を見せながら、ナゲッツが『GAME7』を制しました

ラッセル・ウェストブルックにとってはジェームズ・ハーデンと共闘したロケッツ時代以来のシリーズ突破となりましたが、この2人のスーパースターはサンダー、ロケッツ、クリッパーズで3度チームメートになり、そして3度の別れを経験しました。そして今シーズンはウェストブルックがいなくなってもチーム力を落とさなかったクリッパーズと、そのウェストブルックをラストピースとして迎え入れたナゲッツという構図になりました。

開幕前、クリッパーズは大きく揺れていました。ウェストブルックだけでなくポール・ジョージも退団し、スタータークラスの補強はデリック・ジョーンズJr.を獲得したくらい。カワイ・レナードの健康問題も解消しておらず、戦力充実とは言い難い状況でした。

しかし、イビチャ・ズバッツの成長やクリス・ダンがディフェンダーとしてスターターに定着したこと、何よりハーデンがオールスターに返り咲く活躍があり、50勝32敗の成績を残しました。

ハーデンは全盛期のようなステップバックの精度はなく、ドライブのキレも落ちていますが、それでもディフェンダーとの駆け引きでチャンスを生み出す能力は突出しており、クリッパーズのオフェンスをリードしました。ハーデン自身はフィールドゴール成功率41%、4.3ターンオーバーとミスも目立ちますが、ノーマン・パウエルを筆頭に『パスを受けたらシュートを打ち切る』タイプを周囲に配置したことで、リーグ6位のフィールドゴール成功率を記録するなど、チームとしては堅実性が増しました。

ハーデンが35歳にしてプレーメークを大きく向上させたのは、ウェストブルックの退団が要因となっています。プレーパターンは多くないもののディフェンスの状況を見て適切な選択をするハーデンの『緻密なプレーメイク』においては、良くも悪くも次の瞬間にどんなプレーをするのか予測のつかないウェストブルックは異端でした。

そのウェストブルックはこのシリーズでも良くも悪くも暴れまくりました。ノーマークのレイアップを外すこともあれば、勝負どころで3ポイントシュートを決めて勝利を呼び込むこともあり、ハードなディフェンスでピンチを救うこともあれば、凡ミスでピンチを作る要因にもなりました。ただ、ニコラ・ヨキッチから繰り出されるナゲッツの多彩なオフェンスに、全く異なるプレーを組み込むウェストブルックは異端だからこそ機能しました

ハーデンの緻密なゲームメークに対して、ウェストブルックの情熱を前面に押し出すスタイルは対極的です。この2人のコンビは、お互いの短所を補う面も、お互いの長所を邪魔する面もあり、それがチームメートになっては別れ、再びチームメイトになるという関係性を作ってきたともいえます。そして『GAME7』ではウェストブルックの情熱が攻守に機能し、白熱したシリーズに終止符を打ちました。

ナゲッツのセカンドラウンドは、今シーズンの西カンファレンスに『1強』として君臨してきたサンダーが相手です。計算通りの展開となればサンダーが優位で、ナゲッツはチャレンジャーとして予想外の展開へと持ち込まなければいけません。それこそまさにウェストブルックの仕事であり、それはまだサンダーファンが退団から何年を経ても忘れないウェストブルックのパフォーマンスでもあります。