「勝利は人に失礼な態度を取っていい許可証じゃない」

ペイサーズはオーバータイムにもつれたバックスとの第5戦を制し、4勝1敗でシリーズ突破を決めた。後がないバックスの勢いに飲み込まれ、前半に最大20点のビハインドを背負うも巻き返し、ヤニス・アデトクンボの攻守に圧倒的なパフォーマンス、そして終盤にはギャリー・トレントJr.の3ポイントシュート連発に苦しみながらも、最後までペイサーズらしいハイテンポなオフェンスを貫き、残り1秒でタイリース・ハリバートンがゲームウィナーを決める逆転勝利だった。

バックスはデイミアン・リラードがアキレス腱断裂で離脱したが、悲劇をモチベーションに変えてこのシリーズで最も素晴らしいパフォーマンスを見せた。だが、それをペイサーズが上回った。

プレーオフらしいレベルの高い攻防が繰り広げられたが、試合後は両チームの選手が揉み合となり、後味の悪さが残った。アデトクンボがペイサーズの選手たちと健闘を称えて握手とハグを交わす中、ベネディクト・マサリンと言葉を交わす間に両者がエキサイト。アデトクンボはハリバートンの父とも口論になった。

試合後の揉み合についてアデトクンボは「勝った時こそ謙虚であるべきだ。勝利は人に失礼な態度を取っていい許可証じゃない。僕はそういう考え方には同意しない」と語る。

彼はハリバートンの父を最初はただのファンだと思ったそうだが、敗れたバックスを煽るような態度を「とても失礼な行為だ」と非難した。

「僕の父親は何もないところからスタートして、路上で物を売って働いた。警察に捕まって国に送り返されることを恐れながら子供を守り、謙虚という考え方を教えてくれた。でもNBAにはリスペクトを知らない父親がいる」

少し言い過ぎたと思ったのか、ヤニスは少し笑顔をまじえてこう話した。「こんなことを言うけど、僕の息子がプレーしている時に僕がコートに出てきているかもしれない。20年後にこの会見を見せられて『矛盾してるぞ』って言われるかもね。そうなるかどうかは20年後に分かるさ」

「息子の成功を喜び、幸せに思えるのは素晴らしいことだ。でも、だからと言って僕に近付いて来て侮辱し、罵倒するのはおかしい。それは許せない」

劇的なゲームウィナーを決めたハリバートンは、インディアナのファンと喜びを分かち合い、その後はチームメートに手荒い祝福を受けて揉みくちゃにされた。父親とアデトクンボの出来事については、すべてが終わってコートを離れた後に知ったそうだ。

「父とは話したけど、父の行動は正しくなかった。僕がゲームウィナーを決めたことに興奮してコートに出てきてしまった。試合で起きた出来事は試合で完結すべきで、それ以上があってはならない。ヤニスにも後で説明しにいくつもりだ」