ライジングゼファー福岡は『りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 B2リーグ戦』を42勝18敗のB2西地区優勝で終え、『りそなグループ B2 PLAYOFFS 2024-25(以下プレーオフ)』のクォーターファイナルで福井ブローウィンズと対戦する。5月4日に迫ったプレーオフに向けて、現在のチーム状況や意気込みをシックスマンとして試合の流れを変える中村太地に聞いた。

「福岡はユニークで異質なバスケをするチーム」

──B2西地区優勝おめでとうございます。レギュラーシーズンの振り返りをお願いします。

開幕はこれだけタレントが揃っているのに2勝6敗からスタート。「これじゃやばいよね」と危機感がありましたが、そこからスクーティー(アンドリュー・ランダル)やアイラ・ブラウンが加入して19連勝の記録も作ることができました。後半戦も負ける試合は自分たちの自滅だったので、「自分たちから崩れなければもう負けない」という強さを感じています。

──序盤の連敗から連勝に転じた要因はなんでしょうか?

(ヘッドコーチの浜口)炎さんのバスケットは12月ぐらいからチームとしてまとまってくる感じです。僕は京都ハンナリーズ時代に炎さんのそういう戦い方を経験しているので、ある程度の敗戦は許容範囲で、長いシーズンを考えると負けから学んでいくことも必要だと思っていました。僕の他にも炎さんのもとでプレーしたことがあるメンバーが何人かいましたが、昨シーズンからいる選手と新加入が半々ぐらいだった上に、やっているバスケットも昨シーズンとまったく違ったことも要因の1つだったと思います。

──どのような強みが地区優勝に繋がったと考えていますか?

リーグを見渡しても福岡はユニークで異質なバスケをするチームですが、やはりディフェンスとリバウンドは絶対に必要です。僕はB2でプレーするのが初めてだったので未知な部分もありましたが、B1で優勝しているチームはディフェンスでもったいないミスをしないし、ここ一番でリバウンドを拾うことを徹底しています。それはB2でもB1でも変わらず重要で、ゴール下でのリバウンドの強さや、外国籍選手がインサイドをしっかり守ってくれる安心感は福岡のストロングポイントです。

──福岡は得点能力の高い日本人選手が多いチームですが、その中で中村選手はレギュラーシーズン日本人トップの平均11.2得点を記録しました。手応えはありましたか?

B1でプレータイムをもらえなかったので、B2では圧倒的な支配力や成績を示すというテーマを持ってシーズンに臨みました。3ポイントシュートも向上しましたし、 チームにスラッシャーが少ない中で、ドライブなどでペイントで得点ができているのは大きな成果です。ドライブに行くべきか、パスをすべきかの駆け引きが上手になったと感じます。

──自身のプレースタイルがチームに合っている感覚ですか?

対戦チームはジョシュア・スミスとJB(ジャスティン・バーレル)がゴール下にいたらダブルチームをしないと止められないので、必然的にそこでクローズアウトのシチュエーションが生まれます。そこからボールを受けていろんな展開が作れるので、恩恵を受けてる部分はありますね。

「ていねいにやりつつ大胆さを失ってはいけない」

──また、コートに立っている時間帯の得失点差を表すスタッツ「+/-」がチームの日本人選手トップです。得点以外でチームにどのような貢献をしているととらえていますか?

基本的に僕はシックスマンなので、スタートのメンバーがどっしりやっているのをベンチから見ていて、感じたことをコート上でやっているだけです。 割と自由に個人の判断でやらせてもらえているし、ゲームの流れを読む力は昔からあるほうですので、今シーズンはそれをうまく発揮できていますね。もちろんスタートでプレーすることも重要ですが、流れの中で先発とは違う風を吹かせたり、クロージングをビシッとできるようになるのがバスケットボールの1番の醍醐味で面白いところですので、今はこの起用法がハマってます。

──浜口ヘッドコーチとは京都に所属していた2019-20シーズン以来の共闘です。当時中村選手はほぼ先発起用で出場時間も長かったですし、信頼関係があると想像します。久々に一緒のチームになってどうですか?

あの時は(ジュリアン・)マブンガがチームの脳だったので、僕はオマケでついてやっていた感じで(笑)。今は状況は違いますが、ローポスト中心のオフェンスやプレッシャーディフェンスを求められるなど変わらないことも多いです。ミスに対して厳しい部分もありながらも、割と個人の判断に任せてやらせてもらっています。

──クォーターファイナルは福井ブローウィンズとの対戦になります。どのような展望がありますか?

とにかくゴール下を支配してイニシアチブを取れるかが重要になってきます。福井さんは僕たちに機動力がない分、3ポイントシュートやトランジションでかき回したり、ディフェンスで前からプレッシャーをかけたりといろんな策を講じてくると思うので、そこで惑わされないようにチーム全員で共通認識を持って、地に足をつけてていねいにやれればと。ただ大胆さを失ってはいけないですし、そのバランスをどうやって取るかは頭の中で描いていることもあるので、いかに自分たちを見失わずに強みを出していけるかですね。

──B1昇格を経験しているチームメートも多いですが、何か共有している話はありますか?

もちろん選手同士のミーティングをしています。個人的にはJBから何が重要でどういった集中力が必要なのか、毎日の練習でも聞いています。経験値に関してはとにかくベテラン揃いチームなので、逆に経験がない僕がもっと頭の中に叩き込んで表現できるようにしないといけないですね。

中村太地

「選手・ファン・フロントが重ならないとB1昇格は果たせない」

──プレーオフに向けて課題や修正が必要だと感じることはありますか?

チームでは「ヒットファースト」でリバウンドに取り組もうと話しています。ボックスアウトを怠ってしまうとJBやスミスがいてもリバウンドを逃すことになります。シーズン中から、しっかり相手にコンタクトしてリバウンドをとれている時と、その意識がなくてもとれている時を数値化して、リバウンドをとり逃す後悔をしないようにしています。大切なのはチームとして共通認識を持ってそれを徹底することですが、結局はそれぞれが自分を律しないとできないことなので、どれだけやり切れるかは重要ですね。

──高校時代を過ごした福岡に戻られました。福岡のバスケ熱をどのように感じていますか?

福岡では高校バスケはすごい盛り上がりを見せているので、ウチも負けないように盛り上げたいなと。B1に昇格すれば、アウェーで富樫勇樹選手や渡邊雄太選手のようなスーパースターが来てくれる。子どもたちに日本のトップレベルを体感してもらいたいです。実際、僕は地元が山口で福岡が近かったので、小さいころにライジング(ライジングゼファー福岡)の試合を観たり、クリニックに参加していました。プロ選手に間近で触れられる機会があったのは大きかったと思います。

──セミファイナルまではホームで戦うことが確定しています。

B2でもアウェーで行く会場の中には、すごい熱気や圧を感じるところがたくさんあります。それを福岡でも実現できるようにしたいですね。選手だけが頑張ってもダメで、選手とファンと会社のフロントと、この3つがうまく重ならないとB1昇格は果たせないと思っています。ですので、そういう熱気をファンの皆さんと一緒にプレーオフで作り出して、プレッシャーと期待を感じながらホームコートアドバンテージを得たいです。

──最後に、応援している皆さんへメッセージをお願いします。

地区優勝は果たしましたが、僕たちはまだまだ何も成し遂げていないチームです。 この勢いのままB1昇格を成し遂げられるように、そして福岡のバスケ熱をもう一段階ぐっと上げられるように頑張ります。ぜひ会場に来ていただき、一緒に盛り上げてください!