「これで優勝に一歩近付いたと言いたい」

レジー・ミラーは解説者として中立の立場を取らなければいけないが、試合前のウォーミングアップに出てきたタイリース・ハリバートンに「必ず勝ってくれ」と声を掛けた

キャバリアーズは東カンファレンス1位を確定させており、プレーオフに向けた調整のため主力を休ませた。それでも最後まで接戦が続き、1ポゼッション差のゲームになったのはキャブズの大健闘と言える。それでもペイサーズはどんな形であれ勝利が必要だった。それで4位以内が確定し、プレーオフを本拠地のゲインブリッジ・フィールドハウスで始められるからだ。

ペイサーズが最後にレギュラーシーズンを4位以内で終えたのは2019-20シーズンだが、この時はシーズン途中からプレーオフまでが『バブル』と呼ばれる新型コロナウイルス対策の隔離施設で行われた。その前となると、56勝を挙げて東カンファレンス1位になった2013-14シーズンまでさかのぼらなければならない。

キャリア4年目のポール・ジョージが若きエースとして活躍していた頃のことで、今のチーム最年長のジェームズ・ジョンソンだけが、当時すでに現役だった。TJ・マッコネルもパスカル・シアカムも、もちろんタイリース・ハリバートンもNBAデビュー前の時代だ。

指揮官リック・カーライルは「意義ある成果だ。選手たちに、そしてファンにおめでとうと言いたい」と語る。「美しいバスケができたわけではないが、重要な試合で全員が死力を尽くして戦った。49勝を挙げてホームでプレーオフを戦う、その権利を勝ち取った選手たちを誇りに思うよ」

第4クォーター残り5分の時点で2点のビハインドを背負っていたが、ここからハリバートンが3本連続でシュートを決めて8-0のランで流れを一気に引き寄せた。ハリバートンはこの活躍を「何が何でも勝ちたかったし、終盤に重要なシュートを成功させて自信を得たかった」と語る。その後も競った展開が続いたが、ペイサーズは114-112で激闘を制した。

「僕たちはファンに支えられて良いチームになれた」

ペイサーズは昨シーズンにカンファレンスファイナル進出と飛躍を遂げた。しかし、今シーズンは相手チームの対策が進み、開幕からの1カ月で6勝10敗とスロースタートを強いられた。そこからチームは次第に調子を上げ、ハリバートンを中心とするハイテンポなバスケに、相手の対策を上回る攻守の引き出しの多さが加わり、直近の1カ月は14勝2敗と絶好調だ。

「シーズン序盤のことを考えると、ここまでよく来れたと思うよ。チームは勝てなかったし、僕も様々な課題を抱えていた。だから今の状況を素直に喜びたい」とハリバートンは語り、あまり感傷的にはなりたくないと言いながらも昔を振り返る。「3年前にトレードでやって来た時には、誰も僕のことを知らなかった。それが今は思う存分プレーできている。愛する仲間たちの存在はものすごく大きな意味を持っているんだ」

プレーオフのホーム開催は、彼らにとって何を意味するのだろうか。ハリバートンは「これで優勝に一歩近付いたと言いたい」と答えた。「僕ら選手は家での過ごし方や食事、試合会場への移動など、ルーティーンをできる限り保ちたいものなんだ。ホームなら自宅でリラックスでき、試合会場には家族が来てくれる。ホームでの2試合で勢いを付けて敵地に行けるのは有利だよ。ウチに限った話じゃなく、どのチームもホームコートアドバンテージはものすごく大きいんだ」

「そして、ペイサーズに限った話で言えば、ここのファンは特別にアツい。僕が加入した頃のチームはあまり強くなかったけど、それでも熱心に会場に足を運び、応援してくれた。僕たちはファンに支えられて良いチームになれた。だからファンの前でプレーオフを戦えるのが楽しみだよ」

それが重要な成果であっても、あくまで通過点でもある。彼らの戦いはこれからが本番と言っていい。ハリバートンはこう語る。「ずっと遠ざかっていたからこそ、大きな責任がある。そのつもりで万全の準備をするつもりだ」