文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

ギャレット&田中を実力派の黒子が支える盤石のA東京

激戦の東地区で2位を争うアルバルク東京と千葉ジェッツの直接対決。両チームともチャンピオンシップ出場は決めているが、より有利なポジションを得るために負けられない戦いとなった。

前半はアルバルク東京が40-35とリードするも、展開としては互角。絶好調の田中大貴とディアンテ・ギャレットのドライブ、そこからインサイドのジェフ・エアーズにフィニッシュを託す形で得点を伸ばしていく。対する千葉は富樫勇樹を起点とするチームオフェンスで対抗。両チームともに組織ディフェンスが機能し、簡単にはノーマークを作らせないが、それでも高確率でシュートを沈めるレベルの高い攻防が繰り広げられた。

そして第3クォーターの立ち上がりから千葉が走る。前半は2得点と沈黙した石井講祐が決めたこの試合最初の3ポイントシュートを皮切りに9-0のランで44-40と逆転。その後も、スクリーンプレーに対してA東京が素早くスイッチしても、瞬時に次の判断をして攻め手を止めず、優位を作り出した。

だがA東京も屈しない。ビハインドを背負った状況でギャレットを休ませた時間帯、ザック・バランスキーが頭脳的なプレーで得点にアシストにと見事なつなぎを見せれば、正中岳城が強引な突破を次々と成功させる。伊藤大司も富樫のドライブに一度は抜かれながら、ジャンプシュートを背後から叩き落すハッスルプレーを披露するなど、実力派の黒子たちが千葉に傾いた流れを力強く引き戻した。

逆に千葉はセカンドユニットがつなげない。第3クォーターのラスト2分あまり、ヒルトン・アームストロングがベンチに下がるとエアーズにインサイドを支配され、55-59と逆転を許して第3クォーターを終えた。

A東京は勝利を一気に引き寄せるべく、第4クォーターの頭からギャレットをコートに戻す。ギャレットと田中の強力タンデムがここでも威力を見せ、約6分間で12-5のラン。この12得点のうち8得点はギャレットが決めたもの。さらにはエアーズのアリウープのアシストも記録しており、まさに『無双』の働きだった。

2桁のビハインドと富樫のケガ、絶体絶命からの逆襲

残り3分49秒、ギャレットのファストブレイクを浴びたところで千葉はタイムアウトを取る。60-71と点差を2桁に広げられたこともあるが、その直前の攻めで正中との1対1で衝突した富樫がひざを痛めて動けなくなってもいた。その後、ベンチでの富樫の様子を見るに大事には至っていないようだが、この時点では起き上がることができず、そのままコートに戻って来ることはなかった。

富樫を欠き、11点のビハインド。絶体絶命のピンチだが、ここから千葉が猛烈な巻き返しを見せる。まずは石井がキャッチ&シュートの3ポイントを決め、次のポゼッションでも素早いパス回しで石井のフリーを作り出し、3ポイントシュートを決めて一気に5点差に。

残り3分、A東京は1対1でキープしていればボールを失う恐れのないギャレットがゆったりした攻めで時計を進める。ここで千葉は焦らなかった。逆襲を喰らう恐れのある無理な攻めではなく、腰を据えてしっかり守り、攻めの形を作っていく。富樫に代わってポイントガードに入ったのは西村文男だったが、ボールを運ぶ役割を担ったのはタイラー・ストーン。富樫抜きでもホーンズ(1-2-2)のセットオフェンスを続け、ピック&ロールを駆使した攻めを展開した。

じっくり攻めすぎたギャレットが24秒バイオレーションを取られた後、残り1分4秒でストーンがキャッチ&シュートの3ポイントを沈めて2点差に。その後、残り30秒を切ったところで田中を右ウイングでフリーにしてしまう守備のミスを犯すも、この3ポイントシュートが落ち、最後の攻撃機会が千葉に巡ってくる。

ファウルで止められてからのリスタート、ストーンはアームストロングのスクリーンを使い、スイッチでマークに来たエアーズを速さで振り切ってシュートを放つ。これはリングに嫌われたものの、アームストロングがタップで押し込み73-73、試合は延長戦へともつれ込んだ。

託されたチャンスを得点に変え続けた『大当たり』の石井

延長戦、もはや千葉の勢いを止める術はなかった。最初のポゼッション、ストーンとのピック&ロールでゴール下でボールを受けたアームストロングが、逆サイドの石井に振る。フリーの石井は涼しい顔で3ポイントシュートを決め、これで千葉が逆転。さらにはドライブで仕掛けるフェイントからストーンがそのまま3ポイントシュートを決めて突き放す。A東京はタイムアウトを取り流れを切ろうとするも、次の得点も石井の3ポイントシュート。鋭いサイドステップでマークに付いていたエアーズを転ばせて決めたビッグショットで82-73と突き放した。

A東京もギャレット、エアーズが強引な3ポイントシュートを沈めて追いかけるが、千葉はもう一度ディフェンスマインドをセットし、それ以上の追い上げを許さない。最後のファウルゲームも難なく乗り切り、最終スコア87-81で大きな勝利を手にした。

千葉は14本の3ポイントシュートを決めてA東京を撃破。ただ、このチームにとっては『ディフェンスの勝利』だ。大野篤史ヘッドコーチは「得点が止まってしまい苦しい時間もあったが、選手たちに『必ず流れは来る。しかし、ディフェンスで耐えなければそれは来ない』と伝え、それを皆が実行して我慢してくれました。自分たちのバスケットができました」と語る。

『神がかり的』と言ってもいいぐらい3ポイントシュートを決め続け、17得点を挙げた石井は、「チャンスがあれば思い切り打とうと思っていました。仲間が良いパスをくれるので、決めることができて良かったです」と話す。「明日もすごく大事な試合なので、連勝したいと思います」と語る表情は、いつものように淡々としていた。

ギャレットとともにゲームハイの23得点を挙げたエアーズは敗因をこう語る。「40分間のうち38分間は自分たちらしいバスケができたが、その2分間で相手にビッグショットを決められたのが敗因。自分なりに仕事はできたが、すべてはチームの勝利なので、負けてしまっては意味がない」

ただ、明日にもまだ千葉とのゲームは残っている。エアーズは「残りの試合をチャンピオンシップと思ってプレーすることが大事」と頭を切り替えていた。