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「一生懸命プレーする姿はチームにとってプラス」
B1第22節、仙台89ERSはアウェーで群馬クレインサンダーズと対戦。リズムの良い時間帯を作りながらも、総じて群馬に力で押し込まれて連敗となった。これで8連敗を喫し、東地区最下位を抜け出せない状況が続いている。
12月18日に特別指定選手として加入した新沼康生は、第1戦で11分59秒の出場ながら3本中2本の3ポイントシュートを決め、第2戦では加入後最長となる21分1秒の出場をして8得点と活躍を見せた。ここまで9試合に出場し3ポイントシュートの成功率は高確率の64.7%と途中加入の現役大学生としては及第点と言える成績を残している。しかし、新沼は第2戦の試合後、悔しさを滲ませ顔を上げることができずにコートからなかなか出られなかった。
新沼は試合を次のように振り返る。「(トレイ)ジョーンズ選手や八村(阿蓮)選手とのマッチアップで無駄なファウルをしてしまいました。チームとしてやられてはいけないことを、自分がやれてしまうケースが多すぎたし、ガムシャラにやりすぎて、柔軟に判断できていませんでした。今日のゲームは僕が崩してしまったと反省しています」
攻守に奮闘していても、新沼は自身のパフォーマンスに全く納得していなかった。特に連敗している中で、期待されて出場時間を与えられている自分に対する責任を感じている。
「今はもらったプレータイムの中で、一生懸命プレーする姿はチームにとってプラスになっていると思います。ただ今日みたいな試合では、それだけではカバーしきれないです」
落合嘉郎ヘッドコーチは新沼の良さを次のように話す。「バスケットボールに対するひたむきさが彼のすべてです。ハングリーですし、バスケットが上手くなりたいから身体と心が充実していると思います」 そして、特別指定選手だからといって育成ではなく、チームを勝たせる中心選手として新沼を評価している。「育成をしたいからではなく、戦力として活躍してほしいという思いで起用しています」
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「その瞬間、正しいシュートを打つ」
新沼は大学時代、セカンドユニットながら出場時間が長い試合も多く、15年ぶりにインカレを制した日本大になくてはならない存在だった。Bリーグに来る上ではインサイドからウイングへのコンバートが必要で、仙台加入前から今後のキャリアを考えて準備していたと明かす。
「大学の時から仙台の試合を見ていて、ウイングのシュート力は必要だと感じていました。ただ大学では4番ポジションをやっていたので、仙台に加入してから求められることの全部を準備できるわけではありませんでした」
その中でもシュートに関しては、特に意識して取り組んできた。「大学の時からその瞬間に正しいシュートを打ち、それを1本でも多く決める。その瞬間が来たら迷わない。とを決めていました」
ディフェンスでもステップアップすべく、課題を持って準備を進めてきた。「インサイドからアウトサイドの選手になることで、ディフェンスの足は必要になってきます。(半澤)凌太さんや(星野)曹樹さんに聞くこともありますし、まだまだですが、自分なりに大学の時から勉強して取り組んでました」
「加入した時にからチャンスがあったらものにしたいと思っていました。自分を信じるしかなかったですし、それで使ってもらえなくても、僕のキャリアは終わりではないのでブラさずに積み重ねていくしかないです」
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「全然変われていないのが本当に悔しい」
Bリーグの舞台でも日々課題と向き合っている新沼は、「デビューとなった三遠戦からいろいろと経験しても全然変われていないのが本当に悔しいです。毎回やられているパターンが一緒なので、対応できていない力不足を感じています」 と反省しきりだが、その中で手応えも感じている。
「キャッチ&シュートは相手にとって止めにくいものになっていると思います。ただ、それだけでは勝てないのも分かっています。欲張りすぎるとブレるので、考えすぎずに打ち続けることが大事です」
今節の2試合で4本決めた3ポイントシュートは武器になっており、第2戦の終盤にはレイアップも決めた。ドライブの速さや、ゴール下で待ち構えるビッグマンに臆せずに挑む姿には非凡なものがあった。「今日の試合では最後にペイントタッチできたのが良かったです。あれができたのは自分のポテンシャルだと思いますし、そういうワークアウトもしているので、それが発揮できる最高のシチュエーションでした」
「今はルーキーだから許容されていますが、今後はそういったミスを減らしていく必要があります。この先はガムシャラだけでは登って行けない階段なので、自分の良さは残しつつ柔軟に頭を使ってやっていきたいです」
特別指定選手制度は育成の側面もあるが、新沼はそれに甘んじることなく自身とチームを向上させることだけにフォーカスしており、若手とは思えないほど、しっかりと自分が見えている。あとは一つひとつ壁を越えていくだけ。新沼のハングリーな挑戦はまだ始まったばかりだ。