チームの完成度でいまだ及ばず、巻き返しなるか
ニックスにとって、東カンファレンスで自分たちより上位にいるキャバリアーズとセルティックスとの連戦は、レギュラーシーズンで最も重要な2試合と位置付けられていた。82試合の長丁場において、その勝敗はさほど大きな意味は持たないとしても、ここから東カンファレンスのパワーバランスが相当に動かない限りは、プレーオフではファーストラウンドを突破した後、この両チームと対戦することになる。
優勝を目指してロスターを構築し、なおかつ若くて伸びしろがあるわけではないベテラン主体のニックスに求められるのは『今、勝つこと』だ。昨シーズンはカンファレンスセミファイナル止まり。その先に行くことが最低限のノルマであり、キャブズとセルティックスとどう渡り合うかがそのカギとなる。
昨夏にミケル・ブリッジズとカール・アンソニー・タウンズの新戦力を加えて、いよいよロスターは完成形に至ったはずが、実際のところチームは思うように機能していない。キャブズには終始圧倒されて37点差で敗れ、セルティックスにはほとんどの時間帯で2桁のビハインドを背負って13点差で敗れた。
カール・アンソニー・タウンズがコートのどこからでもシュートを打てる多彩さを見せ、空いたスペースに他の選手が飛び込むオフェンスは十分な破壊力を見せているが、ディフェンスは脆い。タウンズはピック&ロールに対応できず狙い撃ちにされているが、ティンバーウルブズはそれを嫌ってルディ・ゴベアとのツインタワーを採用していたように、これはもともと想定できた弱点だ。それが開幕から57試合が経過した今も弱点であり続けている。復帰が近いとされているミッチェル・ロビンソンをセンターで起用し、タウンズと組ませれば守備は改善するだろうが、オフェンスの良さは消えてしまう。
ブリッジズとOG・アヌノビーのウイングは攻守ともにリーグ最強となるポテンシャルを備えていたはずが、彼らの間で良いケミストリーは生まれておらず、2人で2人分の働きはしているものの、それを上回るような何かを生み出せていない。
この時期に良い兆しが見えていれば、そこから積み上げてプレーオフへの期待が持てる。だが、この時点でキャブズにもセルティックスにも歯が立たないという現実から、ニックスは何を積み上げればいいのだろうか?
「コート上で実際にやり続けることが大事だ」
「ちょっと待ってほしい。開幕前から言っているけど、僕らは発展途上のチームだ。ポストシーズンの最初の日まで、僕らは発展途上のチームであり続ける。NBAのどのチームも、レギュラーシーズンを通して学んだ成果をプレーオフで発揮するものなんだ」。タウンズはそう語る。
ジェイレン・ブランソンは「ポジティブな要素に目を向けたい。この試合では第3クォーターのプレーだろうね。こういったことを話すだけじゃなく、コート上で実際にやり続けることが大事だ」と言う。
セルティックス戦はほとんどの時間帯で相手に主導権を握られたが、ニックスは第3クォーターだけは39-25と巻き返し、点差を1桁に縮めている。ただ、前半終了時点で21点のリードがあったセルティックスが第3クォーターでタイムシェアを徹底した一方で、ニックスはブランソン、アヌノビー、タウンズ、ジョシュ・ハートの4人が12分フル出場。接戦に持ち込んだところで勝負どころで厳しくなるのは明らかだった。
指揮官トム・シボドーは「やるべきことが多すぎる」と言い、「まあ、いつだってこんな感じだがね」とボヤいた。彼はチームの成績が良くても悪くてもひたすら仕事に打ち込む男だが、この状態でチームが士気を高く保つのは難しいと言わざるを得ない。
タウンズはこう語った。「ミスの多くは自分たちの自滅で、修正できるものであり、修正しなきゃならない。僕らは学び続けていく」
キャブズはニックスより10多い47勝を挙げて東カンファレンス首位を独走しており、2位のセルティックスには前年王者の自信がある。さらに言えば西カンファレンスを席捲するサンダーを加えた3チームを相手に、ニックスは今シーズンここまで7戦全敗を喫している。この3チームよりベテランが多いが、新戦力をフィットさせるのに時間を要したことでライバルの若い3チームに完成度で劣る。ここからの巻き返しが見られるのか。ニックスに残された時間はそう長くない。