ケガと戦うNBAキャリアを送るも「焦りは禁物だ」
マーケル・フルツがNBAのコートに帰ってきた。過去5シーズンはマジックで主にセカンドユニットの得点源として、かつ前から粘り強くプレッシャーをかけるディフェンダーとして活躍してきたが、昨シーズン終了後に契約を失った。その実績から考えればいずれどこかのチームからオファーがあるのは間違いなかったが、トレードデッドラインまで声はかからなかった。
キングスはザック・ラビーン獲得のために、ディアロン・フォックスとジョーダン・マクラフリンを放出し、市場に残るポイントガードで最も実績のあるフルツに今シーズン終了までの契約をオファーした。彼の獲得が決まったのはオールスターブレイク直前だったが、彼がすぐさまサクラメントに飛び、チーム練習に合流した。
所属チームのないままシーズンの半分を過ごすのは心穏やかではいられなかっただろうが、フルツは「素晴らしい時間になった。すべての時間を自分のために使い、心身のコンディションを整えた」と語る。
フルツは2017年のNBAドラフトの全体1位指名選手だが、現在8年目のキャリアは常にケガとの戦いだった。彼を指名したセブンティシクサーズでは在籍わずか2シーズン、33試合に出場したのみ。肩と首の間の神経を圧迫するケガでシュートが打てなくなり、即戦力の期待に応えられないことで批判の集中砲火を浴びた。マジックに移籍してようやく復活の兆しを得たと思ったところで、左膝前十字靭帯断裂の重傷を負う。昨シーズンもケガを抱えながらのプレーで43試合出場に留まった。
それでも、コートに立てない期間も焦りや不安はなかったとフルツは言う。「トレーニングはずっと続けていたし、ケガの治療と身体強化も怠らなかった。ケガとの戦いで焦りは禁物だ。だから僕は何かを急ごうとは思わなかった。これまでもずっとケガを抱えながらプレーして、多くのことを乗り越えてきた。自分の身体をどうケアすべきかは分かっているから、誰に何と言われようと気にしない。今は最初の試合に備えて死に物狂いで頑張っているよ。そして、またバスケができることに興奮しているんだ」
10分の出場で8得点「今はバスケに没頭できる」
現地2月21日、オールスターブレイク明けの初戦でフルツに出番がやってきた。キングスにとっては残念なことだが、ウォリアーズ相手に競ったのは第3クォーター途中までで、早々に勝敗は決した。第3クォーター途中、すでに20点ビハインドの場面で投入されたフルツは、新しいチームメートと呼吸を合わせることを優先して自分らしいプレーになかなかいけなかったが、途中からは周囲との合わせよりも『準備してきたものをすべて出す』ようになった。
守備ではステフィン・カリーに粘り強くプレッシャーをかけ、攻めに転じれば思い切りの良いペイントアタックからシュートを狙う。後半のみ10分の出場ながらフィールドゴール5本中4本成功の8得点。3ターンオーバーは余計だったが、ケミストリーはこれから築いていけばいい。
回り道のキャリアを強いられていても、心折れることなくひたむきに前進し続けている。それがフルツの強さであり、周囲からリスペクトを得られる理由だ。「僕は26歳だ。まだ若いし、先は長い。ほとんどの人が僕のように長い時間をかけて健康を取り戻す経験はしていないだろう。人生の早い時期にそれを経験して学んだのは、健康こそが財産だということ」と彼は言う。
「今はこのリーグに来て最高と言っていいぐらいコンディションが良いし、このタイミングでチャンスをもらうことができた。今はバスケに没頭することができる。毎日練習して、日々成長していくだけだよ」