
ケガが多く、過去にはトラブルもあったエースを放出?
トレードデッドラインが過ぎた後も、移籍の噂がなくなることはなく、次は今オフに向けて真偽定かではないストーリーが飛び交う。そのほとんどは嘘か妄想だが、そのうちのいくつかは真実になるため、移籍市場が閉まっていても人々の注目はそこに留まり続ける。しかも今はルカ・ドンチッチのトレードの余波で、「何が起きてもおかしくない」という空気があり、無茶な噂にもそれなりの信憑性が生まれてしまう。
これは、今シーズン後半戦とプレーオフに集中したいチームにとっては迷惑でしかない。その一つがグリズリーズだ。ある記者がポッドキャストで『今夏の移籍市場で注目すべき選手』としてジャ・モラントの名前を出したのを機に、その噂が広がり始めた。
モラントは5年1億9700万ドル(約300億円)の大型契約の2年目で、更新時期はまだ先だ。それでも移籍市場で注目されるのは、今のNBAでケガの多い高給取りを抱えることがチームにとって命取りであり、モラントは昨シーズンは肩のケガで9試合にしか出場しておらず、今シーズンもここまで54試合のうち32試合出場と稼働率は決して高くない。
さらに言えば、「移籍市場で注目」などと噂されることは、ようやく過去のものになりつつあるモラントの銃にまつわるトラブル、規律面の問題が再び取り沙汰されることにもなりかねない。
オールスターブレイク明けはシーズン後半戦と表現されるが、残り試合数は29しかなく、実際は『ラストスパート』の方が適切だろう。グリズリーズは現在2位とはいえ競争の厳しい西カンファレンスでこの順位をキープするのは簡単ではなく、今のチームの結束を乱すような雑音はシャットアウトしておきたい。そこでグリズリーズのザック・クレイマンGMは、地元メディアの『Commercial Appeal』に次のようなメッセージを送った。
「ジャのトレードを妄想する『事情通』を責めるつもりはないが、それはただの妄想だ。我々にジャをトレードするつもりはない。我々はコート上のパフォーマンスで結果を出すことに集中する。このナンセンスな議論にこれ以上付き合うつもりはなく、バスケの話題に戻るのを楽しみにしている」
若手の台頭に助けられた前半戦、後半はモラントの出番
ここまで好成績を収めているものの、シーズン前半のグリズリーズはケガ人に苦しみ、ラインナップをなかなか固定できないままの戦いを強いられた。今はようやくチームが健康を取り戻し、モラントも休養を挟みつつではあるがコンスタントにプレーできるようになり、リズムをつかみつつある。
不在がちだったのはモラントだけではなく、デズモンド・ベインも11試合を欠場し、プレータイムも制限されながらの出場となっている。ジェイレン・ウェルズとザック・イディーのルーキーコンビ、2ウェイ契約からモラント不在を埋める存在となったスコッティ・ピッペンJr.といった若手の台頭が効いたが、シーズン後半戦とプレーオフでは『主役』がきっちりと仕事をすべきだ。
そのためにもクレイマンGMは一つの手を打った。「トレードしない」と明言しても、実際はトレードを行うケースは多々あるし、結局のところ移籍の噂をすべて消すには至らないだろうが、少なくともこれでチームはプレーに集中しやすくなる。