吉井裕鷹

「中国にアウェーで勝てれば日本は前進できる」

バスケ日本代表は、アジアカップ2025予選Window3で2月20日に中国、23日にモンゴルとアウェーゲームを行う。すでに本大会出場を決めていることもあり、今回の強化合宿はトム・ホーバス体制になってから主力を務めてきたベテランがこぞって不在となった。

代表経験の少ないメンバーが主体となることは、多くの選手に出場機会を与えるトライアウトの場になり得るが、ホーバスは「プレータイムのシェアは考えていません」と必勝態勢を強調。ホームで絶対に負けられないとベストメンバーで来るであろう中国に、歴史的な勝利を挙げることを目指す。

今回の代表で要となるのは吉井裕鷹だ。強化合宿参加メンバーでは唯一、ワールドカップ、オリンピックの大舞台で主力としてプレー経験のある彼を、ホーバスはキャプテンに指名した。ホーバスは、「この合宿メンバーで代表経験が一番あります。彼はウチのバスケットをよく分かっている。バスケIQが高く、先輩にも後輩にもいろいろと声をかけています」と吉井への絶大な信頼を語る。

特に日本の場合、キャプテンといえばチームの顔としての役割を求められがちだ。今回のメディア公開の囲み取材でも、協会の指定によってホーバスの次に吉井が登場した。

キャプテンとなったことでこれまで以上にリーダーシップを意識してチームを引っ張っていきたい、という流れは一般メディアが求めがちなステレオタイプだ。だが、良い意味で吉井は、自身のスタイルを崩さない。「キャプテンじゃない時からも声を出すようにしていたので、それは変わらないです。変わったことを挙げるとすれば、こういうところに立つくらいですか。まあ……それくらいですかね(笑)」

このように自然体の吉井は、「バスケット面ではいつもと変わらず、僕自身ができるプレーをやり続けること。それ以外のところで言ったら、みんなに声をかけるだったりとか、自分自身ができることをやっていこうと思います」と、自分の役割を捉えている。

これまで代表において吉井の主な役割はディフェンスで、オフェンスに絡む機会は多くなかった。だが、今シーズンの彼はBリーグでここまで平均11.8得点、3ポイントシュート成功率40.0%とオフェンス面でスタッツを大きく向上させており、今回は中心選手としてオフェンスでのインパクトも期待したい。

だが、吉井は、いつも通りのプレーをしっかりと遂行し続けることにフォーカスする。「プレースタイルは僕の中である程度確立できています。トムさんもこれまでの代表でプレーしてきた吉井を招集していると思うので、そこはブレずに行きます」

そして今回の中国戦に向け、「中国にアウェーで勝つことができれば日本は本当に前進すると思います。そのために一日一日を大切に練習を積み上げていかないといけないと思っています」と勝利への強い意欲を見せる。

吉井は名実ともに今の日本代表の中心メンバーとなったが、その姿勢はポジティブな部分で全く変わらない。20日の中国戦、吉井がパリオリンピックと同じハイパフォーマンスを見せ、日本に歴史的勝利をもたらすことを期待したい。