「今日はそれをやり遂げることができた」
長くて過酷なレギュラーシーズンでは、時に気の抜けたような試合が起こる。そんな試合でも最後まで勝利を追求すべきだが、選手たちはロボットではなく、無意識のうちに「切り替えて次へ」と考えてしまうことも起こるものだ。
しかし、サンダーは違った。現地2月12日のサンダー戦は、第2クォーター途中に最大21点ビハインドを背負い、その後もずっと劣勢を強いられた試合展開となったが、勝利への意欲が途切れることはなかった。第3クォーター終盤にようやくエンジンがかかって追い上げを開始。83-93と10点ビハインドで迎えた第4クォーターの開始から5分半で24-0の怒涛のランで、107-93と一気に形勢逆転、その後も攻守にヒートを圧倒して115-101で勝利した。
こういった爆発力が発揮されると、オフェンスに注目がいきがちだが、まずはディフェンスに注目しよう。ケンリッチ・ウィリアムズがインサイドの守備を引き締める。そして第3クォーターまでに14得点6アシストを記録していたタイラー・ヒーローを、第4クォーターはルーゲンツ・ドートが0得点0アシスト3ターンオーバーと沈黙させる。
ゴール下を固め、相手のプレーメーカーを抑え込んだ上で、オフェンスの爆発力が遺憾なく発揮された。エースのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーは24-0のランに10得点3アシストで19得点に絡んだ。どこまでもシビアは指揮官マーク・ダグノートは、爆発力で勝つ試合展開に「あまり感心しない。ボールを保持している限りは常に安定したプレーができるチームでありたい」と話したが、それでもチームのあきらめず勝ちに行く姿勢は称えた。
シェイは38分の出場で32得点5リバウンド9アシスト2スティールを記録。第4クォーターのビッグラン、12分間で32-8という完璧な内容についても、「一つひとつのポゼッションで集中して守ることを考えていた。追う展開だったからスティールが必要だったし、それが逆転の可能性を生み出した」と、彼は得点やアシストよりもスティールについて語った。
劣勢をひっくり返す方法を問われたシェイは「自分たちがコントロールできることをコントロールしようとする。僕らは十分にそれを遂行できたと思う」と答えて、こう続けた。「すごく楽しい時間だった。コーチがいつも言っているように、僕たちはグループとしてそういうアイデンティの中に存在していたい。もちろん、完璧はあり得ないからそうじゃないこともあるけど、一番大事なのはゲームの流れと自分たちの状態を把握し、その流れを自分たちへと引き寄せることだ。今日はそれをやり遂げることができた」
トレードデッドラインの緊張が過ぎ、オールスターブレイクまであと2試合という気を抜きそうな試合でも、彼らはひたむきに勝利を追い求めた。
「前半みたいな出来で終わってたまるか、みんなそう感じていたと思う。やり返すのは次の試合じゃなくこの試合の後半であって、機会があるなら全力を尽くすまで。今日の試合を見るために会場に足を運んでくれた全員のためにね」
サンダーにはシェイのようにずば抜けた実力を持つスター選手がおり、脇を固める選手たちもレベルが高く、なおかつ自分のやるべき仕事を理解している。ただ、今の強さの本当の秘訣は選手個々の身体能力やスキルよりも、勝つためのチームカルチャーが出来上がっていることにあると言っていいだろう。