バトラーがどんな態度を示すかにヒート内部は戦々恐々
ヒートはジミー・バトラーのトレード要求を受けて移籍先を探しているが、この1週間で複数のチームと交渉したものの、成立の見通しは立っていない。
バトラーは年明け早々のペイサーズ戦の試合後、バスケをプレーする喜びを取り戻したい。ここではコート外では幸せだけど、コートで支配的な存在に戻りたい。思う存分プレーしてチームの勝利に貢献したい。今はそれができていない」と語り、ヒートでそれが実現できるかと問われて「おそらく無理だね」と答えた。これに対してヒートは「チームに有害な言動があった」としてバトラーに7試合の出場停止処分を科した。
現在のヒートは6試合連続の長期遠征中で、バトラーはチームに帯同せず、マイアミに残ってトレーニングを続けている。それと同時にマイアミ市内で『BIGFACE COFFE』を出店した。念願のコーヒーショップを出店したバトラーは上機嫌だったが、「すぐに次の店舗を出す予定なんだ。どの都市になるかは分からないけど、もうすぐ分かるんじゃないかな」という挨拶の言葉は、トレードを予見させる。
しかし、バトラーの問題発言から10日が経過しても、移籍交渉がまとまる気配はない。このままだと現地17日のナゲッツ戦からバトラーは試合に出場できる。サンズが有力な移籍先とされるが、トレード拒否条項を持つブラッドリー・ビールを放出しなければバトラー獲得は実現しない。ビールがトレードを受け入れるとしても、2027年まで高額の契約が残る彼を下位チームに引き取ってもらうには、追加の指名権などを譲渡する必要がある。そこまでしてバトラーを獲得しても、すぐに厄介な契約延長交渉をまとめなければいけない。現時点ではトレードが成立するとしてもシーズン中より動きの取りやすい今シーズン終了後で、2月のトレードデッドラインを過ぎてもバトラーはヒートに残る可能性が高いと見られている。
そうなった時、バトラーがどんな態度を示すかに、ヒート内部は戦々恐々としている。ティンバーウルブズで同じことが起きた2018年、彼はトレード要求を言葉だけでなく行動でも示し、躊躇することなくチームをぶち壊した。
『Inside the NBA』で解説を務めるチャールズ・バークレーは「結局はカネなんだ。契約延長を勝ち取り、2027年までプレーできることになれば、彼は喜びを取り戻せる」と言い、こう続ける。「契約がある限りはプレーすべきだ。来シーズンの契約最終年はプレーヤーオプションかもしれないが、今シーズン中は契約がある。今の彼はその先のことばかりを考え、今シーズンにチームのために働くことを放棄している」
バトラーとしては、納得のいく新契約をヒートが提示しないのであれば、それを出すクラブにトレードしてくれ、それがなければこのままヒートに居座って、どんな行動に出るか分からないぞ、という姿勢をちらつかせることで、球団にプレッシャーを掛けている。
バークレーの言うように、今のバトラーはコート上でプレーするよりも少しでも良い契約を勝ち取ることを優先しているように見える。プロである以上、評価は金額で測られるものという考え方はあっていい。しかし、契約交渉とプレーは切り離して考えるべきで、これで5年前のミネソタのようにバトラーがチームをぶち壊すような行動に出れば、その評価と名声は大きく損なわれることになる。
パット・ライリーのバトラーへの接し方が高圧的でリスペクトを欠いたものだったのは確かだが、我々がバトラーに求めるのはバスケの試合に勝つために全力を尽くす姿で、契約交渉で強引なまでの手法を使って勝ちに行く姿ではない。ヒートに来てからの5年間の活躍と存在感が素晴らしいものだっただけに、それを自ら汚すような行動は思いとどまってほしいものだ。