ファウルトラブルも第4クォーター猛追の立役者に
『Softbank ウインターカップ2024』男子3回戦、洛南(京都)は前年優勝チームの福岡第一(福岡)との名門対決に臨み、最後まで食い下がったが65-71で敗れた。
試合の立ち上がり、洛南は福岡第一の持ち味である豊富な運動量と抜群の機動力を生かした激しいプレッシャーディフェンスに苦戦。なかなか思うような形でシュートを打てない上に、エースの松本秦が第1クォーター中盤に2つ目のファウルを喫して交代を余儀なくされる。攻守ともに精彩を欠いた洛南は、第1クォーターで8-22と大きく出遅れてしまう。
しかし第2クォーター、洛南は質の高いチームオフェンスから中島悠登がこのクォーターだけで10得点とけん引。22-12とやり返し4点差にまで追い上げる。第3クォーターは福岡第一のトランジションを止めることができず2桁のビハインドを負ったものの、第4クォーターは守備で踏ん張り、松本、中島を軸に得点。残り3分には松本がスティールを奪い、自ら3ポイントシュートを決めて60-63と肉薄する。
しかし、洛南の猛追もここまでだった。八田滉仁を起点とした福岡第一のオフェンスを勝負どころで食い止めることができず、あと一歩で逆転勝利を逃してしまった。
洛南の絶対的エースである松本だが、18得点16リバウンド4アシスト3ブロック2スティールと獅子奮迅の活躍を見せた初戦の尽誠学園戦(78-74)で足を負傷。昨日の県立四日市工業戦(98-69)ではプレータイムを約9分と制限して今日の大一番を迎えた。
コンディションが整わない中で戦った強敵の印象を、松本は次のように話した。「第一さんのゾーンプレスやディフェンスの対策はしてきましたが、想定を遥かに超えていました。簡単にボールをもらえなかったり、1対1で仕掛けてもすぐにヘルプが来たり。相手のほうが上手だったと実感しました」
そして、「気持ちがコントロールできずにファウルをしてしまった部分もあります」と語るように、前半で3ファウル、第3️クォーター中盤に4つ目のファウルを喫したことで、プレータイムは27分40秒にとどまった。
最終的に松本はフィールドゴール12本中3本成功の9得点に終わり、チームも惜敗。「何もできないウインターカップでした」と不完全燃焼な形で終わってしまった。だが、彼がエースの働きを全うできなかったかと言えばそうではない。第4クォーターだけで、松本は7得点とエースの意地を見せた。
「納得のいくプレーができず、ファウルもしてチームに迷惑をかけてばっかりでした。その中で仲間たちが追い上げてくれました。後半に入っても最初は相手の流れでしたが、もう一度、自分たちの流れに持ってこられて、終盤に1ゴール差まで持っていけました。そこは自分たちが3年間やってきたことが出せたと思います」
「未熟だった自分を先生方が受け入れてくれた」
河合祥樹コーチも、苦しい状況でも最後まで前を向いて戦い続けた松本を称え、「エースの役割は得点を取ることだけではない」と話した。
「府予選から3ポイントを決めて、オールラウンドに30点近くを取ってきました。周りは彼に点数を取ることを期待していて、松本本人も『チームを勝たせよう』と得点に責任を持っていたと思います。でもバスケットボールはチームスポーツ。点数を取るのはエースの責任ではないです。点数を取れなかったら他の選手が取ればいいし、ドライブできなかったら他の選手がドライブしたらいいのです」
そして河合コーチは洛南のエースに求める姿を次のように語った。
「松本が先頭を走ることで、チームメイトは彼を追いかけていきます。リバウンドを頑張る、味方のためにスクリーンをかける、声をかける。エースはそういうことをやるだけで、チームに大きな力をもたらすと話しました。この試合はファウルが込んでベンチにいることが多かったですが、それでも歯をくいしばってプレーしたことが最後の3ポイントの成功につながったと思います。彼を褒めてあげたいです」
高校最後の試合を終え、松本は洛南での3年間について何よりも感謝を強調した。「何から何まで未熟だった自分を吉田(裕司)先生、河合先生が受け入れてくれて、1年生の時から真剣に面倒を見てくれました。そのおかげで人としてもバスケットボールプレーヤーとしても成長できた、濃い3年間だったと思います」
今後については「オールラウンダーになりたくて入学して、最後の試合で目指したプレーはできなかったですが、少しずつ見につけることができました。大学でもこれを繋げていきたいと思います」と語り、トリプル・ダブルを狙えるような選手を目指す。
故障、そしてファウルトラブルで、本来の力を発揮できずにウインターカップを去ることになった松本だが、大器の片鱗をしっかりと見せてくれた。次代を代表する192cmの万能フォワードとして、次のステージでどんな活躍を見せてくれるのかが今から待ち遠しい。