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チームの方針は『トライアングル・オフェンス』への一本化

ジェフ・ホーナセックを指揮官に招聘し、昨年のオフにはブルズとのトレードでデリック・ローズを獲得したニックス。さらにフリーエージェントになったジョアキム・ノアとも大型契約を結び、再建に向けた陣容は揃ったはずだった。

しかし、蓋を開けてみれば、カーメロ・アンソニー、ローズ、クリスタプス・ポルジンギスの『ビッグ3』は機能せず。ホーナセックは自らの方針を貫こうとしたものの、バスケットボール部門を牛耳るフィル・ジャクソンがレギュラーシーズン後半戦から現場に介入し始め、自身が指導者時代にブルズとレイカーズに3連覇をもたらした『トライアングル・オフェンス』を再び導入することを決めた。

だが、ただでさえ難解と言われるオフェンスシステムが短期間でチームに浸透するはずもない。現場は混乱し、連敗に次ぐ連敗で4年連続のプレーオフ進出を逃した。

大枚を叩き4年契約を結んだノアも、あろうことかNBAと選手会が定める薬物規定に違反するサプリメントを摂取し、リーグから20試合の出場停止処分を科された。もう答えは出ている。ジャクソンのチーム作りは完全に失敗したのだ。

それでもジャクソンは、今後のシステムを『トライアングル・オフェンス』に一本化することを決断。すでに今シーズンの残り試合は若手に経験を積ませる方針に切り替えている。オフにはシステムに適さない選手を放出し、『トライアングル・オフェンス』をジャクソンが求めるレベルでプレーできる選手を集めることも示唆している。

こうなると、エースであるカーメロ・アンソニーの去就も不透明になる。

アンソニーは、消化試合となった今も若い選手に経験を伝えるためプレーし続けているものの、「チーム内の役割が分からなくなっている」という本心を『New York Times』に明かした。

「正直に言って、自分の役割が何なのか分からない。今は、若い選手のためにプレーしている感じ。彼らのためにコートに立ち、練習に参加している。今は、自分が1試合30得点や40得点を決める時期ではない。若い選手が経験を積む時期なんだ」

アンソニーは「野球で言えば『9回』を迎えた選手のプレーを変えるのは難しい」と主張する。

「自分は、これまでに自分が培ったプレーをしてきた。それを変えるのは難しい。自分にとって試練だとは思う。とにかく今は、自分以外の選手を含めた将来のために使う時期だと思っている」

エースとしての優等生発言は立派だが、それが返って痛々しくもある。

メディアの前で口にはしないだろうが、アンソニーがプレーオフ進出を逃した悔しさとともに、自分とチームのビジョンの不一致に憤りを感じているのは明らかだ。キャリア13年目のアンソニーが自分のスタイルに合わないプレーをするには、どうしても無理が生じてしまう。

昨夏のリオ五輪ではアメリカ代表のリーダーとしてチームを引っ張り、自身3個目の金メダルを獲得。残されたタイトルであるNBA優勝を地元ニューヨークで達成したかったのだろうが、ついにジャクソンが今夏アンソニーのトレードに踏み切る可能性は高い。悲願の優勝を狙える環境へのトレードであれば、アンソニーも契約に含まれた『トレード拒否条項』を破棄し、トレードに応じるのではないだろうか。