河村勇輝もフィットする超攻撃的バスケの継続なるか
サマーリーグでのブルズは河村勇輝の参戦もあり注目を集めていますが、今オフ最大のポイントであるジョシュ・ギディーとの契約がまとまらない状況が続いています。デマー・デローザンに続いてザック・ラビーンも放出したブルズが39勝43敗と前年と変わらない成績を残せたのはギディの活躍が大きかったのですが、それでも安易な契約延長ができないチーム事情があります。
昨シーズンのブルズはチームカラーが一新されました。リーグ3位の3ポイントシュートアテンプトからリーグ6位の平均117.8得点、アシストの29.1もリーグ5位とオフェンスに強みのあるチームとなり、特にトランジションでの得点は前年リーグ28位だった18.1から2位の31.9へとジャンプアップしています。
この変化はチームトップのスティールと2位のリバウンドでボールを奪い、チームトップのアシストでオフェンスを構築したギディーの存在なくして語れません。勝率が変わらないとは言え限界が見えていたデローザンとラビーンのチームから、ギディーを中心とした若いチームへと変わり、始めたばかりのバランスアタックが機能しました。ブルズのサラリー総額はタックスラインまで余裕があり、ギディーに高いサラリーを払っても問題にはなりません。
それでもギディーが望む契約を提示しないのは、来オフにチームを解体する可能性を残しておきたいからだと推測されます。来シーズン終了後に契約が保障されているのはパトリック・ウィリアムズとジェイレン・スミスの2人だけ。2年目のマテウス・ブゼリスも含めてチームを刷新するチャンスでもあります。
実際、契約を更新したばかりのロンゾ・ボールを来オフに契約が切れるアイザック・オコロとトレードしました。継続か再建か、方針が定まらないからこそギディーの契約延長にも結論が出せないようです。特に今オフはデイミアン・リラード、デアンドレ・エイトン、そしてブラッドリー・ビールとバイアウトが続いたこともあり、長期の高額契約の怖さを感じているのかもしれません。
一方でNBAドラフトでは1巡目12位で指名したノア・エセングを動けるビッグマンとしてサマーリーグで起用しています。自らクリエイトして得点を生み出せるタイプではなく、トランジション中心の戦いで優れたパサーがいてこそ輝くエセングのドラフト指名は、ギディーの存在が前提にあったはずです。これもブルズの方針が揺れ動いて見える理由になっています。
スピードのある河村勇輝は、現在のスタイルに合っているからこそサマーリーグのロスターに加えられたと考えられます。フルコートのゾーンプレスでは上のパスを通されて苦戦していますが、ビッグマンも含めて全員が走るチームスタイルにはフィットしており、ギディーの契約が進まない現状ではロスター枠も埋まっておらず、契約を勝ち取る可能性を残しています。
オールスター以降のギディーは21.2得点、10.7リバウンド、9.3アシストとトリプル・ダブル級の活躍で、さらに苦手だった3ポイントシュートも45.7%と高確率で決めています。これを成長と見るか、一時の好調に過ぎないと見るかで、契約内容は大きく変わってきます。
マックス契約にはならないとしても、かなりの高額契約となることは間違いありません。ギディーを引き留めるのか、見過ごすのか。その判断によりブルズの方向性は明らかになります。