ヘナレHC「苦しい展開になったが、逆境から追い上げることができた」
約3週間の中断期間を経て、11月30日に三遠ネオフェニックスvs島根スサノオマジックの第1戦が豊橋市総合体育館で開催された。試合開始前の段階で各地区の首位を走っている上位チーム同士の対決らしく終始緊迫感のある展開となったが、島根が85-79で勝利した。
第1クォーター、島根は9つのターンオーバーを喫し5点のビハインドを背負うも、第2クォーターは3ポイントシュートとフリースローを高確率で成功させ逆転し、3点リードで試合を折り返す。後半もクロスゲームとなるが、島根はミスマッチを突いてペイントでの得点を着実に積み重ねていき、先行する展開に。最終クォーターに再び三遠の反撃を受けたが、同点で迎えた残り56秒に安藤誓哉が沈めた3ポイントシュートが決勝点となり、接戦をモノにした。
最終スコアは6点差だが、後半は多くの時間帯で1ポゼッションを争う展開となった。少しの差で大きく結果が変わるような試合に勝利し、島根のポール・ヘナレヘッドコーチは胸を撫で下ろした。「三遠のような強豪チームに勝利できたのはうれしく思います。序盤から苦しい展開となりましたが、そのような逆境から追い上げることができました」
ヘナレヘッドコーチが言うように、島根は第1クォーターで後手に回り、なかなかリズムをつかむことができなかった。特にアウェーの地では、この試合のような入りはズルズルと流れを持っていかれてしまうことはよくあることだ。そんな中、第2クォーターで気を吐いたのが、昨シーズンまで三遠に所属したコティ・クラークだった。積極的にリングを狙いファウルを誘発して、このクォーターだけで7本のフリースローを含む10得点を記録。試合を通じては安藤に並ぶチームハイの20得点に加え、4リバウンド4アシスト1スティールの活躍で見事な凱旋勝利をつかんだ。
クラークは昨シーズンに中地区優勝を果たしただけに、三遠の強さは十分に分かっていたと話す。「三遠がどれだけタフで強いチームなのかを知っています。さらにどんな準備をしてくるのか、どんな心構えで試合に臨んでくるのかを分かっていましたので、自分たちも覚悟を持って試合に向き合いました」
「自分らしくあることが重要。ベンチスタートでも関係ない」
所属していたからこそ、三遠がどんな戦い方をしてくるか他の選手よりも理解していただろう。それでも、チームメートやコーチ陣に特別な共有をして試合に臨んだわけではないと話す。「特に自分から三遠についてチームに話すことはありませんでした。スタッフ陣も三遠がリーグトップチームというのは当然理解しているので、十分なスカウティングをしてくれました。そして選手みんなでそれを遂行できました」
クラークは、Bリーグでのキャリアの大部分で先発出場してきたように、チームのエースを担ってきた。実際、昨シーズンはチャンピオンシップを含む出場したすべての試合で先発を務めているが、今シーズンは得点こそチーム最多であるものの、全試合ベンチスタートとなっている。役割が変われど、自分のやるべきことは変わらないとクラークは言う。「自分は自分らしくあることが重要だと常に考えています。これまでたくさんのクラブに所属してきましたが、ベンチスタートはほとんどありませんでした。でも、それ自体は関係ないと思っていて、コートに立った時に自分のプレーをすることだけに集中しています」
さらにプロ選手として、自分の役割をまっとうする言葉が続く。「チームに必要とされるプレーをすることが重要だと大学の時にコーチから言われました。プロ選手として、チームが必要とすることをプレーで提供する意識でやっているので、今の起用法に不満を感じていません。先発出場するよりも、素晴らしいチームメートに合わせてプレーすることの方が重要です」
クールにチームファーストの姿勢を崩さないクラークだが、1シーズンのみの所属だったとは言え三遠ブースターに対する気持ちは特別なものがあったようだ。多くの歓声に応える姿や、三遠時代のクラークのTシャツを着た子どもにグータッチに向かう場面も見られた。「昨シーズン、三遠で特別なことを達成することができたので、素晴らしい思い出があります。通常であればアウェーではブーイングされることが多いですが、今日は多くの人が歓迎してくれてうれしかったです」
感傷に浸るような試合展開ではなかったものの、いつも以上の準備をしてクラークは己の役割を貫いた。第1戦の結果でチームは西地区単独首位となり、初の地区優勝やその先にあるチャンピオンシップに向けて視界良好といったところだろう。新戦力としてチームを牽引するクラークの奮闘に期待したい。