昨シーズンは出場2試合のみ、チームバスケで再生
新ヘッドコーチにケニー・アトキンソンを招聘したキャバリアーズは、レブロン・ジェームズ時代の2016-17シーズン以来の開幕6連勝を飾りました。プレシーズン4試合は全敗で新しいバスケが機能するまでに時間を要するかと思われましたが、予想以上に新たな戦い方が噛み合っています。
最大の変化は昨シーズンよりも得点が12.1も増えていること。リーグ5位のスクリーンアシスト数が示す通り、個人技ではなくチームで崩す形が整備され、また相手ディフェンスの状況に応じた判断も重視されるため、コーナーからの3ポイントシュートが平均3本増えるなどコートを広く使えています。その結果、フィールドゴール成功率は53%と高確率のフィニッシュが特徴のチームへと生まれ変わりました。
この得点力アップが主力選手だけでなく、ベンチメンバーも含めた形で実現されたこともポイントです。昨シーズンまでのキャブスは強力なメンバーが揃ったスターターが長時間プレーすることが多く、少人数のローテーションで戦う形が基本でした。それは選手同士の連携を向上させる一方で、チームのオフェンスパターンは乏しくなり、スカウティングが進むプレーオフでの戦いで苦戦する要因でもありました。
そのためアトキンソンは開幕前から10人から11人のローテーションで戦うと明言していましたが、お世辞にも層が厚いとは言い難いロスターだけに難易度の高いミッションだと見られていました。しかし、開幕からローテーションを10人で回し、ここまでの6試合平均で30分以上プレーした選手は誰もいません。タイムシェアでスタミナに余裕が生まれ、ハードワークを繰り返すキャブスのスタイルがより際立っています。
特にポイントガードの控えはキャブスにとっての難題でしたが、ここで見事な活躍を見せているのがタイ・ジェロームです。2019年ドラフト24位ながら5年間で4チームを渡り歩き、昨シーズンは2試合しか出場がなくNBAで生き残るのは難しいと思われたジェロームですが、ここまで11.0得点、フィールドゴール成功率57.5%、3.2アシスト、1.5スティールと別人のような大活躍を見せています。
スピードやフィジカルといった身体能力に秀でているわけではなく、特別なパスセンスを持つわけでもないジェロームは、個人技でチャンスを作る役割を求められる環境では苦しみました。しかし、今のキャブスオフェンスでは自分のために必ずスクリーナーが用意され、マークマンを突破することができ、柔らかなフローターやフィンガーロールの上手さで得点力を発揮しています。ヘルプが来れば的確にキックアウトパスへと切り替えており、予想外の大活躍でチームに貢献しています。
ジェロームは極端な例ではありますが、キャブスの若い選手たちは総じて昨シーズンから大きく変化した戦術に上手く対応できています。エバン・モーブリーがプルアップでの3ポイントシュートを打ってくるなど、従来のイメージとは異なるプレーを取り入れることで対戦相手に戸惑いが生じていることも、キャブスが連勝スタートとなった大きな要因になっています。
キャブスはプレーオフで勝つためにヘッドコーチ交代へと踏み切り、戦術のパターン増加と選手層を厚くするというテーマを掲げましたが、6連勝という結果だけでなく、内容の面でも充実した開幕となりました。