文・写真=鈴木栄一

9シーズン在籍した『古巣』と思い入れたっぷりの対戦

3月19日、アルバルク東京はサンロッカーズ渋谷との『渋谷ダービー』をディアンテ・ギャレットの劇的ブザービーターにより66-64で制した。最後に大仕事をやってのけたギャレットはもちろんだが、彼と同じくここ一番で重要なシュートを決めて勝利の立役者となったのが竹内譲次だった。

竹内にとって、SR渋谷は東海大学を卒業した2007年から昨季まで日立サンロッカーズ、日立サンロッカーズ東京のチーム名時代に計9シーズン在籍した思い入れのあるチームであり、普段とは違う気持ちでプレーした2試合となった。

「特別な気持ちはありましたが、チームスポーツなので自分の気持ちはできるだけ胸にしまって戦おうと思っていました。そうすることで昨日、今日と積極性が失われていて自分自身、難しさを感じました。ただ、最後は良い形でチームに貢献することができたと思っています」

こう振り返る竹内だが、実際、18日の試合でも95-63と大量得点を奪って圧勝する中で、自身はわずか2得点のみ。そして、19日の試合も第3クォーターを終えた時点では3得点に留まり、シュートを狙う回数自体もいつもと比べると少ない印象だった。

そして、第4クォーターも残り2分を切ってA東京が2点を追う中で、竹内は3ポイントシュートを狙うが失敗。続くディフェンスで竹内はアイラ・ブラウンへのシュートファウルを取られてしまい、そこでブラウンがフリースローを2本成功させ、リードを4点に広げられてしまう。

竹内の連続6得点がギャレットのブザービーターを導いた

チームとともに竹内にとっても悪い流れが続く状況だが、勝負どころで本領を発揮した。残り1分、オフェンスリバウンドを取ったギャレットからのパスにうまく合わせてバスケット・カウントを獲得し、フリースローも決める。さらに直後のディフェンスでは、マッチアップしたブラウンへのパスを見事にカットするスティール。続く攻撃で、再びゴール下にドライブしてバスケット・カウント。フリースローも決めて、竹内の連続6得点が、最後のギャレットの決勝弾を導いた。

「しっかり集中できていたと思います。こういう展開でその時、その時における正しい判断をしなければいけない。そういう状況が、自分を集中させてくれました」と、終盤でのビッグプレーを語る竹内。また、ブラウンとのマッチアップについては「アイラとは2年間、ずっと練習でマッチアップしていましたし、僕のプレーを彼は分かっていたと思います。もちろん逆も然りで、自分のプレーが読まれているんじゃないか、というやりづらさはありました」と振り返っている。

今シーズンからA東京に加入した竹内だが、チームはシーズンも後半戦に入ってから外国籍2人を入れ替えており、ビッグマンの中では彼が最もチーム在籍期間が長くなっている。それだけに新加入のジェフ・エアーズ、トレント・プレイステッドを引っ張っていく立場でもある彼が、インサイド陣として何よりも重視しているのはリバウンドだ。

「とりあえずリバウンドをしっかり取ること。リバウンドをしっかり取れれば、ウチの選手はタレントが揃っていますし、個で打開できる力もあります。そこさえしっかりできれば自然と良い流れのオフェンスになる。一番意識しているのは、リバウンドです」

我慢比べのロースコアゲームを制したのは『収穫』

そして竹内個人として、最近になって目立っている変化といえば3ポイントシュートをより打っていること。「3ポイントは意識して練習から打っていますし、コーチ陣からもそういう話はあります。あとは外すことを恐れずに、打っていく。まだちょっと打つ時に迷いが出るので、もちろん決めたいですが、まずは試合で打つことに慣れることにフォーカスにしていきたい。ただ、主戦場がゴール下のペイントエリアであることは忘れてはいけないです」

今日の試合、3ポイントシュートは3本打って成功なしだったが、終盤の2つ目のバスケットカウントは、3ポイントの位置からシュートフェイクでブラウンを抜き去ってのアタックだった。ブラウンが思わず反応してしまったのも、それまでに3ポイントを打つ意欲を見せていたからこそ。相手によっては、より守りにくい竹内のプレースタイルができつつある。

「ロースコアのゲームは我慢比べですが、今までそういうゲームを落とすこともあった中で今日はしっかり勝つことができた。我慢して勝てたのは大きいことではないかと思います。古巣との対戦は予想していた以上に感情がこみ上げるものがありました。結果が出たということもあると思いますが、試合を終えた今はうれしかった、楽しかったという気持ちです」

彼にとって特別な2試合を上記のように総括した竹内。ギャレット、田中大貴という個人技に長けたガード陣。NBAで優勝経験のあるジェフ・エアーズなどタレント豊富なA東京ではあるが、チームの屋台骨を支える竹内の攻守の働きが、シーズン終盤に向けてより重要となってくることは間違いない。