タイリース・マクシーにとって最高のお手本に
カイル・ラウリーは38歳になり、NBAで19年目のシーズンを迎えている。ラプターズのチームリーダーとしてトロントに初めての優勝をもたらしたのは33歳の時。その後、チームのサイクルが終わりを迎えたことでラプターズを離れてヒートに移籍してから、彼の存在感は次第に薄れているように見えた。
しかし、昨シーズン途中にセブンティシクサーズに移籍したのを機に、その情熱の炎は再び燃え盛っている。ニック・ナースと再会し、ポテンシャルはあるが『勝ち方を知る』ベテランを欠くチームで自分の居場所を見いだした。シクサーズではシーズン後半の23試合に出場して8.0得点、4.6アシストを記録。ベンチから出るベテランではなくタイリース・マクシーと組むスターターとなり、相手のオフェンスの組み立てを激しく賢いディフェンスで阻害するガードとしてプレーオフでも存在感を発揮した。
ラウリーは新たなシーズンへの抱負をこう語る。「昨シーズンにこのチームで過ごした時間は、短くても楽しかった。ニックの下で再びプレーできることが加入の決め手だったが、タイリースと知り合えたのも良かった。プレーオフのファーストラウンドで負けるとは正直思っていなかったけど、このチームのポテンシャルは間違いないと思う。全員が優勝したいと願っているし、優勝を狙える力がある」
ラウリーの真価が発揮されるのは、シーズン途中の加入ではなくプレシーズンのチーム作りに関与できる今回だろう。トレーニングキャンプで試合の様々な状況を想定した練習をする時、ラウリーはバスケIQとリーダーシップを示す。指揮官ナースは「基本的な攻撃のセットにカイルがいくつかのオプションを組み込んでいる。他の選手たちにその方法を教え、導くんだ。たった数日の練習でも、その効果は明確に表れている」と話す。
昨年の今ごろはジェームズ・ハーデンとフロントの対立が話題となっていた。ハーデンはトレーニングキャンプに遅れて合流したし、開幕戦はフロントが「コンディション不良」と判断してチームに帯同させず、その直後に移籍が決まっている。ナースがこの件について不平を漏らしたことはないが、多彩な戦術を駆使して戦う彼のスタイルを磨き上げるためにプレシーズンが重要なのは間違いなく、ポイントガードがフロントと衝突して準備が進まなかったのは大きすぎる痛手だったに違いない。今回はそれとは真逆で、ナースのやり方を熟知しているラウリーが練習でリーダーシップを取っている。
それは、今まさにリーダーとして成長しようとしているタイリース・マクシーの素晴らしいお手本となるはずだ。マクシーについてラウリーはこう語る。「昨シーズンの彼は、少しずつ声を出せるようになっていたところだった。大きな契約を得たことで責任が増し、まだ若いから慣れていない部分はあるけど、彼はその挑戦を楽しみにしている。きっと上手くやれるだろう。これから長くオールスターに選ばれ続けるタレントだよ」
ナースはオフェンスの舵取りを若きスターであるマクシーに託し、ラウリーにはプレーの面でもリーダーシップの面でもそのサポートを任せている。ガード陣はベテランのエリック・ゴードンにレジー・ジャクソン、即戦力として期待されるルーキーのジャレッド・マケインと層が厚く、ラウリーは昨シーズンと同じようにプレータイムを制限しながらも重要な局面を任されるだろう。
ポール・ジョージを始めとする戦力補強で優勝候補に挙げられるシクサーズで、ラウリーは間違いなく『良い仕事』をするはずだ。