ツイ・ヨンシー

エース放出に代わる補強のないネッツ、若手育成の年に

現地9月20日、ネッツは21歳の中国代表ガード、ツイ・ヨンシーと2ウェイ契約を結んだことを発表した。ヨンシーは中国の広州龍獅で20歳にしてCBA新人王に輝き、2年目の昨シーズンに15.7得点、3ポイントシュート成功率36.5%を記録したシューターで、ミネソタでのNBAグローバルアカデミーに参加し、NBA入りを目指した今夏はネッツやペイサーズのドラフト前のワークアウトに招待されていた。

ドラフト指名は得られなかったが、トレイルブレイザーズの一員としてサマーリーグに出場。そのトレイルブレイザーズでトレーニングキャンプ参加の内定を得ていたものの、ネッツが2ウェイ契約を提示したことで合意に至った。

ヨンシーは昨年夏、中国代表の一員としてワールドカップに参加している。20歳だった彼が多くのプレータイムを得たわけではないが、5試合に出場して平均8.5分と限られた機会で3.0得点を記録した。また、今年2月に行われたアジアカップ予選でも日本戦とモンゴル戦でプレーしている『期待の若手』だ。

ペイサーズのワークアウトに参加した際のヨンシーは、「参考にしている選手はカワイ・レナードやジョシュ・ハート。タフに戦う選手でありながらスマートにプレーする選手でもあるから」と語るとともに、「小さな枠に収まらずに挑戦し続けたい」とNBA入りの熱意を語っている。

彼の獲得は、ネッツのオーナーであるジョー・ツァイの悲願でもあった。台湾系カナダ人のツァイは2019年にネッツを買収してから、中国人選手獲得の意向を常に持っていた。チームが再建期に入り、今シーズンも有効な補強が打てずに若手育成に専念する状況で、ヨンシー獲得が実現した。

今のところネッツは多くのブックメーカーから優勝の可能性が最も低いチームの一つとされており、『FanDuel』が予想する勝利数は昨シーズンの32から大幅に落ちる19だ。エースのミケル・ブリッジズをニックスに放出した一方で目立った補強がなく、チームで一番の高給取りはケガでほとんど稼働していないベン・シモンズ。数多く保有する指名権を活用することもなかった今オフの動きから、今シーズンは勝つことよりも若手育成を優先し、豊作と言われる来年のNBAドラフトに賭けると予想される。

それでも2年目を迎えるスモールフォワードのジェイレン・ウィルソンは『NY POST』の取材に「僕らはすべてのチャンスを恵みとして受け止め、一つも残さず全力で取り組む。僕ら若い選手には自分の能力を示すチャンスだけあればいい。サマーリーグから始めて夏のワークアウト、トレーニングキャンプと、すべての機会を生かすつもりだ」と語る。

今シーズンのネッツでプレーする選手は、実績不足であっても将来性を買われてプレーする機会を与えられる。しかしチャンスが与えられる期間は限られており、今シーズンのネッツのロスターに入った選手も、その多くがどこかで淘汰されていく。2ウェイ契約を得たヨンシーも苛烈な生存競争に身を置くことになるが、それはNBA入りを夢見る多くの若者が切望する環境だ。