「いつもと同じプレーを、いつもの強度でやっただけ」
セルティックスはキャバリアーズとの首位対決を落としたが、その翌日のヒート戦を108-89と手堅く勝利した。長いリーグ戦を勝ち抜くには、まずは連敗しないことが最も大事。ケガ明けで連戦を避けているクリスタプス・ポルジンギスに加え、アル・ホーフォードとドリュー・ホリデーが欠場したが、キャブズ戦を欠場したジェイレン・ブラウンとデリック・ホワイトが復帰し、それぞれ29得点と19得点の活躍で勝利に貢献した。
このような試合では選手層の厚さが問われる。主力の誰かが抜けても、他の誰かがカバーすることでセルティックスは安定した強さを保っている。そして、ベンチから出るキーマンとなっているのがペイトン・プリチャードだ。ホリデーが欠場したヒート戦ではジョーダン・ウォルシュが先発起用されたが、そのプレータイムは13分に留まった一方で、プリチャードはベンチから33分出場し、25得点と活躍した。
ヒートのベンチから出場した6選手の得点を合わせても21得点にしかならない。ブラウンやジェイソン・テイタムがベンチに下がる時間帯にもプリチャードがオフェンスを牽引する役割を果たし、セルティックスはペースダウンを避けられている。
「いつもと同じプレーを、いつもの強度でやっただけさ」とプリチャードは言う。「ペースを上げて激しいディフェンスをして、相手にプレッシャーを掛ける。オフェンスになったら常にアグレッシブにチャンスを狙って、正しいプレーを選択する。僕がやっているのはそれだけだ」
プリチャードは2020年の1巡目26位指名でセルティックスに加わった。当初はプレータイムが伸びず、チャンスを求めて移籍を考えたこともあるが、そのオフェンス能力は最初から高く評価されていた。サイズがないことで『守れない選手』と見られたことが、彼のステップアップを妨げていた。だが、ジョー・マズーラは違う。闘争本能をむき出しにして相手に食らい付くプリチャードのディフェンスを評価し、ローテーションに組み込んだ。
チャンスをつかんで頭角を表し始めた当時、彼はいつも「コートに立った時に自信を持ってプレーするには、普段の練習でそれだけの準備をしておかなければならない。逆に言えば、やり残したことがないほど準備しておけば、それが自信になる」と語っていた。
そして今、5年目の26歳となった彼は、チームメートにそれを伝えている。「全く問題ないよ。ウチの選手たちはみんな、自分の役割を理解し、覚悟を持ってコートに立っている」とプリチャードは言う。
彼がブレイクした時も今も、セルティックスは各ポジションとも層が厚く、実績のない選手がチャンスを得るのはそう簡単ではない。だが今、ドリュー・ピーターソンが新たな戦力として浮上した。2ウェイ契約の新人フォワードはこれまでローテーション外だったが、キャブズ戦で25分、ヒート戦で26分のプレータイムを得て、自分の役割を果たした。主力が揃えば出番を失うだろうが、こうして少ないチャンスを生かして信頼を積み重ねることで道は開ける。
そうやって世に出た『先輩』であるプリチャードは、今シーズンはシックスマン賞の有力候補だ。ジェイレン・ブラウンはこう語る。「まだシーズンは始まったばかりだが、ペイトンの活躍はシックスマン賞に相応しいと思う。いつも早くから練習場に来て練習に打ち込む努力家で、その努力が試合でのプレーに反映されている」
シックスマン賞についてプリチャードは「狙うつもりは全くないよ。そのためにスタッツを稼ぐつもりもない」と微笑む。「もし投票でその栄誉を授かるのならありがたいけど、それより僕はチームの勝利のためにプレーしたい。その結果として幸運が舞い込んだら、それは名誉なことだね」