試合が進むごとにテンポを上げた川崎が押し切る
3月31日、川崎ブレイブサンダースが敵地に乗り込んで横浜ビー・コルセアーズと対戦。前半は互角の展開となったが、後半にオフェンス爆発と地力の違いを見せつける形で92-78と、前日に続いて勝利を収めた。これで今シーズンの神奈川ダービーを6戦全勝とした川崎は、連勝を6に伸ばしている。
この試合、横浜は細谷将司が12月23日以来の先発出場。「彼は自分たちにとって起爆剤です。彼がいるとエナジーが出るので先発で起用しました」と意図を語る指揮官トーマス・ウィスマンの目論見通り、横浜は攻守に渡りアグレッシブなプレーを披露。攻撃ではパスをしっかり回しアーサー・スティーブンソンがインサイドで加点。守備でも激しいプレッシャーをかけることで川崎にリズムを作らせず、開始5分半で14-7と先行する。
だが、川崎もすぐにニック・ファジーカスの連続得点で応戦。第2クォーターに入るとシェーン・エドワーズが持ち前のスピードを生かしたアタックで加点、一方、横浜は、コストナーが3ポイントシュート2本成功と、このクォーターで11得点を稼ぐ活躍を見せる。さらに終盤にはスティーブンソンが、連続でオフェンスリバウンドから得点するなど、ファジーカス、バーノン・マクリンの強力ビッグマンを揃える川崎相手に、インサイドで十分に渡り合うことで前半は横浜の41-38と僅差で終える。
第3クォーターに入っても一進一退の攻防が続く。しかし、川崎はファジーカス、篠山の得点で突き放しにかかると、さらにターンオーバー奪取から藤井祐眞がブーザービーターで3ポイントシュートを決めるビッグプレー。これでリードを8点に広げる。
これで勢いにのる川崎は第4クォーターになると、藤井、エドワーズを軸に攻撃のテンポを上げていくと、それにスタミナ切れを落とした横浜が対応できずイージーシュートの場面を作りだして着実に得点。残り4分半にマクリンのレイアップでリードを19点に広げると、そのまま逃げ切った。
バランスの良い攻めが機能、終盤は主力を温存
川崎の北卓也ヘッドコーチは、「出だしはハーフコートのオフェンスで、相手のディナイが強くスムーズにボール運びができなくて苦しみましたが、シュートが入らないなりに我慢できました。後半は自分たちが狙っている走ることを表現でき、後半で54得点は爆発したと思います」と勝因を語る。
また、結果的に第4クォーターでファジーカス、篠山竜青の主力2人がプレーしなかった理由を次のように明かす。「第3クォーター終了時に8点リードと、おそらくクロースゲームになると思ったので、どこかのタイミングではと考えていました。ただ、シェーン、バーノンの2人でディフェンスの強度が上がり、横浜さんもちょっと疲れてきたかなという状況でボールを奪って走れました。点差が開いたので、ニックに出なくて大丈夫だという話をしました」
そして「タフなスケジュールなので状況を見ていろいろな選手を出そうと思っていて、ゲームの締めくくり方としては良かった」と、平日開催の過密日程が続く中で、プレータイムを限定できたのは次に繋がると語った。
この試合、川崎はファジーカスの22得点を筆頭に5人が14得点以上を記録。また、辻直人が8アシスト、長谷川技が7アシストとまさにバランスの取れたオフェンスを展開。この日は実に29アシストを稼いでおり、「ここ最近25アシストを上回ってきています。また、ターンオーバーも昨日は4、今日は9とオフェンスの精度が高いです」と指揮官も連携面の成熟度が高まっていることには満足している。
さらに「得点ができなくてもアシストが多いということは得点に結びついています。辻に関しては今日シュートを打っていましたが、調子が悪かったです。長谷川に関してはいつも言っていますが、もっとシュートを打ってもらいたいです(笑)」と続けた。
川崎は3月を11勝1敗で終えた。ただ、それでも篠山は「後半になって離せたことは良かったですが、昨日の千葉と栃木の試合を見てもやっぱり僕らよりもう一段、二段階上のレベルでバスケをしていることは体感としてあります」と反省が多い。何よりも中地区の優勝争いでは首位の新潟アルビレックスBBを2ゲーム差で追いかける立場であり「新潟さんはなかなかコケてくれないので僕らもしっかり勝っていかないといけない。三遠さんは今日、新潟と競っていて良いチームになってきています。三河さんはずっと不気味な存在なので一つずつ積み上げていくだけです」と、これまで以上に気を引き締めている。
ゾーンディフェンスが機能せず、守備に課題
30日に続き後半に失速してしまった横浜のウィスマンは、「前半は自分たちがやらなければならないディフェンスの強度を徹底できたので、良い試合ができました。ただ後半、相手がギアを上げた時についていけなかった」と守備のインテンシティを維持できなかったことを敗因に挙げる。
さらに「第3クォーターまでマンツーマンを続けたが川崎さんは慣れてきた。それで第4クォーターの頭からゾーンを使いましたが、それが機能せずにずるずると離されてしまった」と語る。今回は裏目に出てしまったゾーンディフェンスだが、同時にウィスマンはゾーンの完成度を高めることが、ステップアップのための鍵になると強調する。
「ゾーンは高校生くらいですと、ファウルトラブルを避けたりディフェンスを休ませたりする意図もあると思います。しかし、マンツーマンよりも強度を上げ、相手のリズムを崩すためにするのが私のゾーンです。今、自分たちがやっているのは強度が上がっていない。そうするとただの悪いディフェンスになってしまうので、しっかりできるようにしていくしかない」
パワーを武器にゴール下で暴れるスティーブンソン、非凡な3ポイントシュート力を持ち内と外の両方で点を取れるコストナー。さらに日本人有数のスコアラーである川村卓也と、横浜は攻撃面では頼りになる武器を持っている。だからこそ、やはり課題はいかに守備を改善できるか。「自分はマンツーマンとゾーンの併用が強みになると信じています。前半みたいなマンツーマンの強度を維持し、ゾーンをしっかりできるのが理想です」とウィスマンが目指す形をどこまで構築できるかが残留プレーオフ回避に向けた一番の注目ポイントではないだろうか。
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