太田蒼

「みんなの声掛けのおかげで最後までやりきれた」

四日市メリノール学院vs大阪桐蔭は、外のシュートが当たった大阪桐蔭が序盤に2桁のリードを奪い、その後も試合を優位に進めていた。四日市メリノール学院の稲垣愛ヘッドコーチは頻繁に選手交代を繰り返し、相手の勢いに飲まれかかった選手は一度ベンチに下げて気持ちを落ち着かせ、やるべきことを確認させてコートに戻す。9人ローテの全員が15分以上のプレータイムを得て、チーム全体で大阪桐蔭の勢いに食らい付いていった。

大阪桐蔭は実力あるシューティングチームで、3ポイントシュート28本中13本成功(成功率46.0%)。田中里央菜が6本、舛本碧珠が5本を決め、他の選手もチームで作ったチャンスが自分に回ってくれば自信を持って打ち切った。

快調にシュートを放っては決めていく大阪桐蔭に四日市メリノール学院が食らい付く展開が40分間続く。大阪桐蔭は追い付かれることはあっても要所でビッグショットを決めて逆転を許さない。四日市メリノール学院は33得点を挙げたエースの太田蒼を中心に全員バスケで攻守のテンポを高く保ち、大阪桐蔭にプレッシャーを与え続けた。

ラスト1分で大阪桐蔭が2点リード。それでもドライブからキックアウトを狙ったパスを読んでいた大久保結奈が鋭い出足でボールを奪い取って速攻に走る。そこに合わせた太田の得点で、残り33秒で同点に。最後の攻めも太田に託すが、強引に放ったレイアップがリングに弾かれる。万事休すと思われた残り1秒、伊藤千寛がオフェンスリバウンドを奪い取って、試合終了のブザーとともにゴール下をねじ込む。試合を通して一度もリードを奪えなかった四日市メリノール学院が、このブザービーターで77-75の逆転勝利を収めた。

四日市メリノール学院の勝因は、劣勢でも集中を切らさず粘り続けたこと、9人ローテで勝負どころに足を残していたことだ。稲垣コーチは「相手の3ポイントシュートが前半当たっていましたが、『絶対にどこかで落ちてくるからそれまで我慢、我慢だよ』とずっと話していました。それぞれが持ち味を出してくれて、非常に良く頑張りました」と語る。

四日市メリノール学院

「表情から良くしていくことで流れに乗っていけた」

9人ローテの中でも32分の出場で攻守に走り続け、33得点を記録したエースの太田は「相手の流れになって慌ててしまう部分があったんですけど、みんなの声掛けのおかげで最後までやりきることができました」と語る。

しぶとく食らい付いてはいたが、やはりそこには焦りがあった。それを変えたのは周囲の声掛けであり、チームで楽しむ前向きな気持ちの持ちようだった。「最後も『ヤバい、ヤバい』って焦って、弱気になったんですけど、愛コーチの『まだ終わってない』と『顔だよ!』という声掛けから、みんなで顔を見合わせて笑顔になれて。表情から良くしていくことで流れに乗っていけたと思います」

大会前に掲げた目標はベスト8で、3勝を挙げたことでそこに到達した。今日の準々決勝では岐阜女子と対戦。3回目の出場でベスト8初進出の四日市メリノール学院が、実績十分の優勝候補に挑むことになるが、稲垣コーチは「選手たちがベスト8という目標を掲げて、そこに行けたのでもう上出来。明日はどうしても力の差があるので、当たって砕けろ、恥ずかしい試合だけはしないように。でも大丈夫、楽しんでやってくれると思います」と笑顔で語る。

太田もその思いは同じ。良い笑顔を見せてこう話した。「今日は前半にあまり当たらなくて後半からしか乗れなかったので、最初から最後まで自分たちのプレーができるように頑張りたいです。誰よりも笑顔で、どのチームよりも楽しんで終われたらいいなと思います」