キングスを率いる佐々宜央『下克上戦記』vol.13~胸を張れる戦いのできるチームに

2019/03/26
Bリーグ&国内
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佐々宜央

文=鈴木栄一 写真=B.LEAGUE、鈴木栄一

2018年末のジョシュ・スコット離脱という大きなアクシデントの後、新たに加入したケビン・ジョーンズは着実に馴染んできている。戦力の再整備を行った琉球ゴールデンキングスは徐々に上向いているが、なおも故障者が続きベストメンバーで戦うことがなかなかできない。西地区1位を走ってはいるものの、万全ではないチーム状態でチャンピオンシップを迎えようとしている現状を、若き指揮官はどう感じているのだろうか。

「40分間を通してはやるべきことをやりきれていない」

──レギュラーシーズンも終盤に差しかかっている中、今のチーム状況をどう感じますか。

自分たちのバスケットボールを40分間できたらどんな相手とも戦える。ただ、それができなかったらどんな相手にも負ける。試合の半分以上、やるべきバスケットをできなかったら、入れ替え戦に巻き込まれるような力だと思います。

戦術の遂行度に関しては、個人の差があります。だからこそ今チームとして一つにまとまり切れていない。例えば岸本(隆一)が苦しい時期があって立ち直ったことで自信に繋がりました。その一方で、ここに来て並里(成)や古川(孝敏)がケガをしています。

ベストメンバーで戦えることが少なく、常に個人のアップダウンが入り乱れる中で、チームとしていかに上げていけるか。代表ウィークでの中断前に比べたらディフェンスの強度、オフェンスのスペースの取り方などちょっとは良くなっていますが、40分間を通してはまだまだやるべきことをやりきれていないです。

──3月に入ってからも古川選手のケガなど、コンディション管理に苦戦している印象です。

練習の強度を落としたりしましたが、それでも練習中に故障者が出てしまう。そこはヘッドコーチとして、選手をしっかり見ることができていませんでした。僕はケガについて事故は少ないと思っていて、一概に『運が悪かった』としてはいけない。選手のコンディションや、その時の全体の雰囲気などを把握しきれていなかった自分のマネージメント不足です。

──シーズン終盤になっても、メンバーが揃わないことで選手起用のローテーションを固定できない難しさはどのようなところに出てきますか。

どの組み合わせをどの時間帯で使いたいか、具体的なイメージを試合前に持って臨んでいます。ただ、選手たちにしてみたら故障者がいるといつもと違う形になり、選手としては「ここがプレータイム確保のチャンス」とアピールしたい気持ちが強く出すぎてしまうなど、不安定な精神状況になってしまいがちです。復帰したばかりで這い上がらなければいけないと気持ちが高ぶりすぎている選手を落ち着かせることも大事です。

故障者が増えてくると、「この時間ならが俺出る」、「俺の役割はこれだな」と思っていたことと違うことが出てきます。例えば並里と橋本(竜馬)が揃って故障している間、ずっと2番として使っていた岸本に1番の役割を求めました。それは難しいことですし、半分はかわいそうな部分もありましたね。

佐々宜央

「一番ダメなのは選手を迷わせてしまうこと」

──昨シーズンと比較した場合、今の状況をどのように見ていますか。

去年の今の時期は、どうやってセカンドユニットを乗らせるかに必死でしたが、起用法はほぼ固定化されていました。約30分出場する岸本、古川、田代(直希)がいて、バックアップで石崎(巧)、須田(侑太郎)がいて、二ノ宮(康平)と津山(尚大)をどう使っていくのか。それが、今年はビックリ箱になっていて、どのメンバーで試合に臨めるのか直前まで分からない。ここから起用法を固める作業ができるのか、そしてできなかった時に選手たちのメンタルをどう持っていけるかが重要になります。

──先ほどから、メンタル面の大事さについてよく言及しています。そこは、かなり意識されている部分ですか。

去年から大事だと思っていますし、今はサッカー日本代表の森保一さんの『監督は選手の心を預かっている』という言葉が好きです。監督は選手のプレータイムを決める権限があり、それは彼らの仕事を握っている。だからこそ、監督を続けていく限り、選手の気持ちを預かっていくことになります。

ケガなど様々な要因があってストレスがかかっている選手をサポートし、彼らがプレーしやすい状況を作っていきたい思いはいつもあります。ただ、選手の気持ちを考えすぎると、甘やかすことにも繋がるので、それは断絶する。まだ、寄り添う部分と切り離す部分のバランスはしっくりきていないので、そこは見つけていかなければいけないです。

──去年から1つの大きな鍵となっている勝負どころのオフェンスでボールを預ける選手を誰にするかについて、今年はどんな流れになっていくと思いますか。

基本的にはガードになってくると思います。ミスマッチがあるのだったら、フォワードがゴール下でガツガツやるのも一つの選択肢です。誰か個人に特定することはないですが、まずはガードがドライブで崩し、そこから展開していくように最終的にはやっていきたいです。

──3人目の外国籍選手にスコット・モリソンを獲得しました。あくまで3人目でシェフ・エアーズとケビン・ジョーンズに故障がない限りは登録外なのか、どんな起用を考えていますか。

ゲームプランや相手とのマッチアップの兼ね合いによっては使うことも十分にあると思います。勝利のためにモリソンの方が良いという選択もあります。ただ、ここ何カ月のベースを作り上げたのはジェフ(エアーズ)とKJ(ジョーンズ)で、2人への信頼があります。そこはバランスが大事になってきます。試合に出るかもと伝えていて、出られないとストレスは溜まりますから。

モリソンも自分が3人目の外国籍選手であることは状況から理解していますが、そこで接し方を雑にしてしまうと、いざ使いたい時にメンタル面の準備ができていないかもしれない。その対処の仕方は、コーチのセンスの見せどころです。一番ダメなのは選手を迷わせてしまうことなので、どんな状況なのか選手に理解してもらうことは大切です。

佐々宜央

「勝てばいいというシステムを僕は作っていない」

──ヘッドコーチは2年目、昨シーズンの経験がプラスになったと感じるところはありますか。

10年、20年とやっている人たちから見れば鼻で笑われるかもしれないですが、自分の中で去年の経験は大きいです。でも、本当に経験を重ねることが大事な職業で、今はそういうものを身に着けている真っ只中だとも思います。去年の経験が通用しないことも出てきていて、より真摯にならないといけないと実感しています。今はギリギリのところで余裕はありませんが、「早くシーズンが終わらないかな」という気持ちは全くないです。今の問題を解決していくだけです。

──いろいろな要素が絡みあっていると思いますが、いよいよレギュラーシーズン終盤となって特にどんな部分がチームの進化に向けて大事になってきますか。

こういう風に戦っていけばいい、というものが見えてはきています。ただ、いろいろなミスが出て目指す戦いが思うようにできていない。劣勢になると焦って勝手に1対1のオフェンスを仕掛けたり、ディフェンスのルールを実行できないといったミスをしっかり修正できるのか。少しでも改善できるように働きかけていくだけです。

そのためには、チーム全体でいかに高い向上心を持っていけるのか。試合に出ている選手もいれば、そうでない選手と立場の違う人たちが一体となって向上心を持たせられるのかはヘッドコーチの力にかかってきます。見方を変えれば、それがなくなったら終わりなので、最後まで選手に求めていきます。

──どのようなチームを作り上げてレギュラーシーズンを終えたいと思いますか。

どのチームにも40分間、自分たちのバスケットボールで戦うことですね。やりたいプレーをできているのに、ドフリーのシュートやフリースローを外して負けることもあるかもしれません。負けてもそういう理由になるまでチームを作り上げていきたいです。今はそういうレベルには全く達していないです。相手がどうこうではなく、自分たちに何が足りないのか。そこにしっかりベクトルを向けてやっていきたいです。

ただ、ウチは日本人選手がボールを持っている時間が長いチームで、そこに僕は希望を持っています。勝てばいいというシステムを僕は作っていないですし、そこにはファンの皆さんにも夢を見てもらいたい。

自分もこの部分に夢を見たいですが、最後にその選択をした責任を負わなければいけないことも分かっています。また、メンタルだけでなく、技術面でも選手ができるだけミスをしない戦術を作って積み上げていきたい。まずは、ファンの皆さんが「あー……」とため息をつくような戦いでシーズンが終わるのでなく、胸を張れる戦いのできるチームにしていきたいです。