「ディフェンスに喝を入れられる選手は僕だと思っていました」
優勝を目指すチームとして常に期待を受けた川崎ブレイブサンダースは、昨シーズン、Bリーグ開幕以降は初めてチャンピオンシップ(以下、CS)進出を逃した。大黒柱ニック・ファジーカスの引退や、ヘッドコーチの交代など1つの節目を迎えたこのオフ、新加入ながら存在感を示した野﨑零也に昨シーズンの振り返りと新シーズンの展望を聞いた。
──33勝27敗でフィニッシュした昨シーズンの振り返りをお願いします。
終わってみて、すごく難しいシーズンだったと感じています。序盤は12勝2敗とスタートダッシュに成功しましたが、その後は思ったように勝ち星を得ることができず、連敗もありました。終盤に進むにつれて状態は良くなってきましたが、時すでに遅しと言いますか。「良いシーズン」とは言えませんが、個人としては勉強になったシーズンではありました。
──具体的にどういった部分に難しさがありましたか?
昨シーズンはディフェンスのシステムがガラッと変わりました。シーズンを通してどんどん良くなっていき、終盤やCSには完成していく計画だったと思うのですが、うまくいかなったときに「これで良いのか?」、「スタンダードに戻したほうが良いのでは?」という声も出ました。あとはケガ人も多かったのも痛かったです。ニックやJ(ジョーダン・ヒース)も離脱しましたし、僕も体調不良やケガの時期もあったので、ケガなくやれていればCSに行けたと感じている部分はあります。
──ファジーカス選手がラストシーズンということで、チーム内の士気は高かったのではないかと想像しています。
最後のシーズンということもあり、みんな気合いも入っていました。僕自身は特別に意識していなかったですが、もちろん「ニックのために」という気持ちはありました。ただ、今思うと、その気持ちが強すぎたのかもしれません。誰か1人のためにやるのではなく、優勝にベクトルを向けてチーム一丸にならなければいけなかったかなと思う部分もあります。
──野﨑選手は新加入ながら攻守に渡って存在感を示しました。ご自身への評価はどうでしょうか?
シーズンを通してみると、あまり良くなかったと感じています。2月あたりからスタメンで起用してもらっていたんですが、そこまでは難しいところも多かったです。10月から2月までの期間は、もっとできたのではないかなと考えさせられました。ですので、まだまだ成長できるなという感触はあります。
──どういう部分に「もっとできる」と感じていますか?
ここ最近の川崎のウイングプレーヤーは、辻さん(辻直人、現群馬クレインサンダーズ)ほどのインパクトは残せていないと言われているので、もっとやれたのではないかと思います。ディフェンスでは多少買ってもらっていた部分はあると思いますが、ニックと祐眞さん(藤井祐眞、現群馬)が得点できない時に日本人ウイングが点を取れずに落としたゲームもありました。そこを打開できるようになっていきたいと思っています。
──シーズン終盤以降、スタメンに定着していたのはディフェンスでの貢献が大きいからでしょうか?
ディフェンスで勢いを与えられたのは、自分でも分かっていることです。長谷川さん(長谷川技)の代わりにディフェンスに喝を入れられる選手は僕だと思っています。相手のエースやハンドラーにマッチアップさせてもらって、前線から当たっている背中を見てもらって、チームに良い影響を与えたいと思ってプレーしていました。
「『祐眞さんやニックがいないから勝てない』とは言われたくない」
──新シーズンは転換期になりそうですね。
ここ数シーズン、祐眞さんとニックのチームと言われていましたが、メンバーがガラッと変わります。約半分が新加入でヘッドコーチも変わり、再建の年になるのを感じています。昨シーズンよりも難しいシーズンになると思いますし、最初はうまくいかないことばかりかもしれません。そんな中でも強度の高いディフェンスなど、僕自身がやることは変わりません。ただ昨シーズンとは違うところも見せていけたらなと思っているので、ハンドラーとして周りを生かしたり、アタックして自分で得点をするなど、そこにはこだわっていきたいです。「祐眞さんやニックがいないから勝てない」とは言われたくないので。
──ロネン・ギンズブルグ新ヘッドコーチは、リリース時に「ディフェンスを重んじ、速いペースのオフェンスを得意とする個に頼らないチームバスケットを展開するヘッドコーチ」と紹介されていました。どのようなバスケになると思いますか?
練習ではオフェンスリバウンドを重視していて「全員がオフェンスリバウンドに入る意識を持とう」と言われています。そこから全員が走るというバスケットになり、選手からするとすごいキツいバスケットになると思います(笑)。長谷川さんや竜青さん(篠山竜青)もヘッドコーチから「もっと走れる」と言われています。1人が3、40分コートに立ち続けるバスケットではないので、3分でも5分でも一人ひとりが全力を出して走るという全員バスケになると思います。僕としてはそういう速い展開は好きなので楽しみですし、いろんなスタイルを経験できるのは今後のキャリアの中でも大事になってくると思います。
──見ているファンも、より熱狂できるバスケになりそうですね。
見ていて楽しいバスケになると思っています。攻守の切り替えが速く、バスケットの良いところが詰まった試合をしたいです。1番簡単に得点できるのは速攻のレイアップですし、いかに効率よく得点を重ねていけるかというのが重要になってくると思います。シュート力のある選手も多いですし、ディフェンスでも全員が足を動かして守れるので、ファンの皆さんには期待してほしいですね。
──同ポジションにマシュー・ライト選手が加入しました。どのように違いを作っていきますか?
マシューはオフェンス型でガンガン点を取るスタイルなので、自分とは真逆のタイプだと思っています。彼のアウトサイドシュートを生かすためには僕のペイントアタックが大事だと思いますし、彼が気持ちよくプレーできるようなサポートをしていければと考えています。彼に「こいつには任せられる」と思ってもらえるように、僕自身も頑張らなければなりません。「移籍してきてよかった」と思ってもらいたいですね。
──同じ中地区には、アルバルク東京や名古屋ダイヤモンドドルフィンズなど積極的な補強をしてきたクラブも多いです。熾烈な中地区で勝負していくために、何が必要になってきますか?
もうこれまでの川崎ではないので、常にチャレンジャーの意識を持っていることが重要です。強豪と言われることはうれしいですが、昨シーズンはCSにも行けていないので僕としては強豪ではないと思っています。どこのチームもレベルが上がっていて、どこのチームも強豪です。だからこそ、チャレンジャーとして臨まないと。身構えていたらやられるだけなので、自分たちから先制パンチのようなアクションを起こす必要があります。
──最後に応援してくださっている方にメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。選手やコーチが変わって、不安に感じている方も少なくないと思います。移籍が多いBリーグは、どのクラブにもガラッと変化するタイミングが訪れるものだと思っていて、そこでいかにチーム力を発揮できるかが重要だと考えています。プレー面では僕たちも練習からしっかりやっていきますが、勝つためには僕たちだけでなくファンの皆さんの応援が大事になっていきます。変わらずとどろきアリーナに来て、新生川崎ブレイブサンダースを見て下さい。応援のほどよろしくお願いします!
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