林咲希

練習不足で苦しんだシュートタッチ「激しい練習をしているからこそ、試合でできる」

7月4日、バスケットボール女子日本代表はニュージーランド代表との国内最後の強化試合第1戦に臨み、125-57で快勝した。

日本は25本の3ポイントシュートを45.5%の高確率で沈め、ターンオーバーから53点を奪い、速攻から27点を生み出した。大黒柱の髙田真希も「アグレッシブなディフェンス、自分たちのスタイルをしっかり出せたと思いますし、終始自分たちのペースだったと思います。もちろん修正するところはありますが、最後までしっかり自分たちのペースで戦えたと思います」と言う、まさに完勝だった。

前述の通り、日本は3ポイントシュートが好調だったが、林咲希は前半で6本中1本の成功に留まった。積極性を失わない林は第3クォーター開始から約2分間で4本の3ポイントシュートを放ったが、すべてリングに弾かれるなど、なかなかリズムに乗れなかった。それでも、最終クォーターの立ち上がりには2本連続で長距離砲を射抜き、結果的に4本の3ポイントシュートを含む16得点(チーム3位)を記録した。

練習の虫として知られる林だが、足に違和感があったため合宿では別メニューで調整していた。今回、思うように3ポイントシュートが決まらなかったことで、練習がどれだけ大切かをあらためて実感したという。「なかなか練習に混ざることができなくて、練習しなきゃ本当に難しいなって感じました。激しい練習をしているからこそ、試合でできるんだなって。コンディションの部分もしっかり調整してやっていきたいなと感じました」

『走り勝つシューター軍団』をコンセプトにしているように、シューターと呼べる存在が多くいる日本の中でも、林の精度はトップクラスを誇る。そのため、シューターのイメージが先行しているが、豊富な運動量やディフェンスの激しさも林の武器の一つだ。実際、狙いすましたスティールからワンマン速攻に繋げるなど、チームハイ(タイ)の3スティールも記録している。林は言う。

「スリーが入らなかったので、ディフェンスに集中するべきだと思っていました。ローテーションだったり、1対1の部分で絶対にズレを作らないところ。そこは絶対にやり切ろうという気持ちで試合ができたのは良かったです。ディフェンスのスティールは全体的に勢いが出るので、チームディフェンスができた時に良い流れができたと感じました」

林咲希

「ワンプレーワンプレーがお客さんに魅せるための機会」

第3クォーター残り6分35秒、林は宮崎早織のキックアウトから3ポイントシュートを射抜いた。11本目の試投にしてようやく2本目の成功となり、アシストした宮崎を指さして笑顔を見せた。長距離砲を沈めるという自身の役割を全うできたことへの喜びはあったが、それよりも多くの観客に日本バスケのクオリティの高さを示せたことに林は意義を感じている。

「こんな(大きな)会場でやっていて、私たちにとってはワンプレーワンプレーがお客さんに魅せるための機会です。そこの責任感はすごくあります。3ポイントが入らないもどかしさはあったんですけど、やれることをやるという必死な感じでやっていたので、無意識にガッツポーズしていたと思います。みんなもやっと決めてくれたっていう気持ちもあったと思いますし、私もやっと決めれたところでうれしかったです」

もちろん、良いパフォーマンスができれば、自然と笑みはこぼれるだろう。ただ特筆すべきは、この時点ですでに30点を超える大差がついていたこと。大量リードによって集中力を欠き、点差を詰められることはよくある。それでも、林を含めた全員が高い集中力を維持し、最後まで全力プレーを貫いたことが、125-57というスコアに繋がった。林はあらためて、日本のこうした強さについて言及した。

「私たちは世界一を目指していて、1秒1秒のプレーが命取りになるようなこともあり、それを練習でやってきました。気持ちのズレからいろんなズレは出てくるので、チーム全員で戦っているという意思は忘れずに、戦っていかなきゃいけません。みんながズレを作ることなくやり抜くというところをやってきたので、それが染みついているんだなって、あらためてすごく感じました」

昨日の第1戦は女子日本代表の試合では過去最多となる1万1624人の観客が足を運んだ。林の一挙手一投足から、世界一を目指す日本のプライド、ファンへの思いが多くの人に伝わったはずだ。