スミス、宇都の連続バスケット・カウントで決着
3月10日、富山グラウジーズが琉球ゴールデンキングスと対戦。第4クォーター開始時点で2桁のリードを許す劣勢から、得意のインサイドアタックで巻き返し、終了間際に宇都直輝の決勝シュートによって80-78と逆転勝利。前日に3点差で敗れたリベンジを果たしている。
試合序盤、琉球は9日に引き続き岸本隆一を軸に3ポイントシュートを高確率で沈めていく。しかし、富山は前日不発に終わったジョシュア・スミスがインサイドでいつもの支配力を発揮することで応戦。さらに富山は阿部友和、葛原大智、水戸健史、山田大治とベンチメンバーの粘り強いディフェンスで互角の展開に持ち込んだ。
琉球が42-41の1点リードで始まった第3クォーターも膠着は続くが、琉球はターンオーバー奪取からの速攻、セカンドチャンスでの得点によってリズムをつかむ。石崎巧の3ポイントシュート、橋本竜馬のスティールからの速攻、再び石崎の3ポイントシュートで一気にリードを広げた。
それでも富山はここで押し切られず、第3クォーター最後から第4クォーター冒頭にかけ短時間で一気に連続9得点。第4クォーター残り8分20秒で5点差とすぐに立て直す。ここから徐々に追い上げた富山は、残り1分14秒にスミスがオフェンスリバウンドから押し込むバスケット・カウントで1点差に。さらに残り24秒には再びセカンドチャンスから宇都がペイントアタックでバスケット・カウントを決め、土壇場で2点のリードを奪う。琉球は最後の攻めを仕掛けた岸本がゴール下へのレイアップを決めきれず、富山が激闘を制した。
不可解な判定での敗戦を乗り越えてのリベンジ
富山のドナルド・ベックヘッドコーチは「琉球は良いチームで、その相手にアウェーで勝てたのはうれしい。2日間とも競った試合となり、両チームとも勝利に値するプレーを見せた。その中でも今日、勝てたのは幸運だった」と総括する。
両日ともに終盤までもつれる接戦。あと一歩で負けた第1戦と、最後に一歩抜け出した第2戦の違いについて、指揮官は「私が望んでいたのは最後に試合を変えてしまいかねない判定がないことだった。選手たちがしっかりプレーして、勝ちをつかんでくれた」と語る。
この発言の背景には、前日の不可解な判定がある。前日の第1戦、67-67の同点で迎えた残り約1分、琉球の橋本がショットクロックぎりぎりで放ったシュートは外れ、エアーズがオフェンスリバウンドからのシュートを狙うがこれも決まらない。富山がここ一番でよく守ったシーンと思われたが、エアーズがシュートにいくあたりで審判が試合を止めていた。説明がないまま試合は一時中断。状況からして24秒オーバータイムの判定と思われるが、バイオレーションの有無にかかわらず富山としては守り切ったシーンだ。ところが試合は琉球ボールで再開。ここでタイムアウトを取った琉球は、じっくりと練ったオフェンスの末に岸本の3ポイントシュートを成功させて勝利している。
富山にとっては非常に後味の悪い結末。だからこそ指揮官は、前日から気持ちを切り替え、最後に落ち着いてやるべきことを遂行した選手たちを称えた。特に、前日は不完全燃焼に終わったスミスが19得点、宇都が24得点と本領を発揮したことに「スミスは相手のダブルチームにより良い対処ができていた。宇都もうまくフィッシュまで持っていけた」と満足気。これで勝率を5割に戻した富山にとっては、ワイルドカード争いで踏み留まる価値ある1勝となった。
琉球にとっては勝てる集団になるための踏ん張りどころ
琉球はホームで痛恨の逆転負け。佐々宜央ヘッドコーチは「第4クォーターの最初のところ、9-0のランを許した時のパフォーマンスが残念でした。チームとしてやってはいけないプレーが出てしまいました。細かいところよりも、この連続失点が大きかったです」と敗因を語る。
前日も「自分たちのバスケットボールを40分間できるようにしないといけない」と語っていた課題が再び露呈し、それが敗因となったことに「そういう時間帯が生まれているのは僕がしっかり選手をコントロールできていないからで、チームをまとめられるようにやっていきたい」と厳しい表情を見せている。
西地区首位に立ってはいるが、年明け以降は故障者の影響もあって思うように白星が増えない。しかもこの日は持ち味の3ポイントシュートを30本以上放ち、成功率40%以上と自分たちのオフェンスができていながらの敗戦。チームとしてもどかしい状況だが、NBAでもローテーションプレーヤーとして優勝経験のあるシェフ・エアーズは、「結果だけ見ると、『あれ?』と思われるかもしれないが、確実にシーズン序盤より良いバスケットをしていて成長している」と言う。
百選練磨のベテランは「まだシーズン終わりまで時間はある。ここで何か大きなことを変えるのではなく、毎日毎日、毎週毎週チームとして向上していく。最終的な目標はプレーオフで勝ち切ることなので、今ピークが来ないように一つひとつチームとして良いバスケットができるようにしていくことです」と、焦らず地道に取り組むことを強調した。
この2連戦も並里成は両日とも故障の影響でプレータイムを大きく制限され、古川孝敏は欠場と、ベストメンバーで臨めない苦しい台所事情だが、その中でもどれだけチームとして精度を高めていけるのか。琉球にとってプレーオフに出るのは当たり前。そこで勝てる集団となるための踏ん張りどころを迎えている。