ジョシュ・ギディー

サンダーはギディーが成長する環境を与えられず

ファイナルの余韻を感じる間もなく、翌シーズンへ向けた熱いオフが始まるのがNBAらしさですが、早くもサンダーのジョシュ・ギディーとブルズのアレックス・カルーソがトレードされました。サンダーから見るとギディーのポテンシャルに賭けるよりも、現実的な戦力を優先したトレードでした。

史上最年少でトリプル・ダブルを記録するなど、ポイントガードながらインサイドのカバーリングやリバウンドにも強いギディーは、オールラウンドな能力が最大の特徴で、それは5ガードも厭わないスモールラインナップのサンダーの戦術にもフィットしていました。ビッグガードならではの独特なリズムでのゲームメークも合わさって、チームのアクセントとして機能してきました。

その一方でシェイ・ギルジャス・アレクサンダーとジェイレン・ウィリアムズという2人のハンドラーとの同時起用になれば、コーナーでのシューター役に回ることも多く、シュート能力の低さは大きな問題でした。3ポイントシュート成功率は毎シーズン改善しているものの、今や西カンファレンスのトップチームになったサンダーの目標は優勝であり、ギディーの成長を待つことはできないと判断されたことになります。

今回のトレードについてチームからの声明では、ギディーをベンチスタートにするのが来シーズンのチーム構想で、それを本人と話し合いをしたところ他の可能性を探ることになったこと、そしてギディーにはオールスター選手になる才能があるが、その才能を生かすことはサンダーにとっての最適ではないという考えが示されました。

それは言い換えると、ギディーという選手はチームの中心に据えてこそ輝く選手であるものの、勝利を求めるサンダーはギディーが成長する環境を与えられる状況にはないということになります。

若き才能が集まるサンダーというチームの成長スピードは、ギディー個人の成長スピードをはるかに上回り、それは3年目のシーズンを終えたタイミングでのトレードという結末を迎えました。21歳のギディーにとっても、サンダーで限定的な役割を担うよりオールラウンドな能力を生かして中心的な役割を与えられるブルズの方が、そのポテンシャルを発揮するチャンスも増えるでしょう。本来その役割を担うはずだったロンゾ・ボールの復帰が見えないからこそ、ブルズはギディーの成長に賭けることになります。

近年のドラフトでは上級生の指名が増え、ポテンシャルよりも即戦力として試合で貢献できるかが重要になりつつあります。どんなに才能があっても試合に出て経験を積まなければ成長は期待できず、優勝を目指す上位チームであれば若手にプレータイムを与えることも難しいだけに、飼い殺しのような状況にもなりかねません。サンダーの決断はチームのためだけでなく、ギディーのためにも必要な決断だったと言えるでしょう。