2試合で40得点を挙げるも本人は課題を痛感
前節、シーホース三河は敵地で栃木ブレックスに連敗を喫した。それでも、鈴木貴美一ヘッドコーチは、若手の奮起に発展途上のチームが持つ可能性を感じたと語った。金丸晃輔と桜木ジェイアールの大黒柱2人を欠いた試合で見せた『可能性』の最たる例が、2戦合計で40得点を記録した岡田侑大の覚醒だ。
「あの2人(金丸と桜木)の不在は、チームとしてモチベーション的にしんどいところがありました。自分はそこに勢いをつけたいと考え、僕が点数を取れば行けるというムードを与えたかった」と語る岡田は、初戦の第1クォーターの10得点2スティールで、言葉通りにチームに勢いを与えた。第2クォーターでも6得点を挙げ好勝負を演出したが、「後半にガス欠になってしまいました」と言う岡田とともにチームも失速した。
特別指定選手として今シーズン途中に加わった岡田だが、高校や大学では絶対的な主力選手として長時間コートに立ち、若さもあって体力には自信がある。それでもリーグトップクラスの栃木のフィジカルなディフェンスに疲弊させられた。
「腕の力が強いので、押されると抜けていけない。ボールをもらうだけでもしんどい」と、パスを受ける前から常に体力を削られていた。「いつもなら攻めたいと思うんですけど、あのディフェンスをされると、打ちたくないというか……これがBリーグで1番、2番のディフェンスのチームなのかって感じました」と、スタッツは残してもリーグトップとの実力差を痛感していた。
栃木のヘッドコーチも称賛「将来が楽しみな選手」
それでも、内外から得点を重ね、第1戦で19得点、第2戦で21得点を奪った岡田のオフェンス力は特筆すべきものがある。「栃木さんにピックはあまり効果的ではなく、1対1で崩すほうが有利」と判断した岡田は、単独でのドライブを何度も仕掛けて得点を奪っていった。
ピック&ロールを仕掛けると、その瞬間に囲みに来る栃木のディフェンスを破るのは難しいと判断し、セオリーであるピックプレーをあえて行わなかった。それは「一番の武器はドライブで、そこは絶対に譲れない」という自信とプライドがあるからだ。それでも、個々の守備力も高い栃木を相手に個人技で仕掛けて得点を量産できる選手はリーグでもそう多くない。それを20歳の岡田がやっているのは驚きでしかない。
栃木の中でもディフェンスに定評のある遠藤祐亮も、岡田の個人技に驚かされたと素直に認める。「足の速さにはみんなびっくりしました。身体能力の高さとか、金丸選手のようにバランスが崩れてもフィニッシュがあったり、ドライブ力があったり、守りづらく、的を絞りづらい」
栃木の安齋竜三ヘッドコーチも「彼の得意な部分を潰していけばウチなら差を見せられると考えていましたが、それを上回るくらいのオフェンス能力の高さがありました。将来が楽しみな選手です」と、若い岡田の能力を称えた。
初対決に比江島は「今日は負けました」
それでは比江島慎は、昨シーズンまで自分が担っていた三河の2番ポジションで大活躍する岡田のプレーをどう見たのだろうか。彼もまた「思っていた以上にうまかったです。自分も何回かやられましたし、今後の代表に入る逸材とは感じました」と岡田の能力には驚いた様子。
岡田はかねてから同じポジションの比江島を目標に挙げており、初めてのマッチアップとなった。その比江島を相手にドライブからスピンターンでかわしてシュートファウルを誘発する、比江島の十八番を再現してみせた。そのシーンは岡田にとっても「自分も見たことがある、比江島さんがやってたプレーで気持ち良かったです(笑)」と会心のプレーだった。
本人があこがれを公言しているように、岡田のプレーはどこか比江島を思い起こさせるものがある。比江島も「ドリブルのスキルもあるし、パスもうまいし、シュートも入る。多彩なステップを持ってるし、似ています」と認める。結果的に自分を褒めるコメントに、「僕が似てますって言うのもなんですけど」と苦笑いしつつも「初対戦でしたが、今日は負けましたね」と大型ルーキーの力を認めた。