河村勇輝

「もっと危機感を持ち、スタートとしての責任や覚悟を持ってプレーしないといけない」

バスケットボール男子日本代表は6月22日、オーストラリア代表との強化試合を行い89-90で敗れた。もちろん、今の日本代表はパリ五輪に向けて大黒柱の渡邊雄太は合流しておらず、メンバー選考やいろいろと新しいことを試しているなど、まだまだチーム作りの途中だ。しかし、今回のオーストラリア代表はパリ五輪の候補選手が1人も来日せず、国内リーグ(NBL)の若手を中心とした急造チームで、日本よりも準備不足で臨んでいた。

強化試合はトレーニングの一環とは言っても、少なくない危機感を持つべき一戦となった。先発ポイントガードを務めた河村勇輝も試合後の会見で「トム(ホーバス)さんは、この試合をプレシーズンという風に言われていましたけど、やっぱり勝たなければいけない試合でした」と厳しい表情で語る。

この日の河村は19分3秒のプレータイムでフィールドゴール10本中4本成功の9得点3リバウンド2アシストを記録。スタッツ面は決して悪くなかったと言えるが、ホーバスヘッドコーチは、「本当は(試合の立ち上がりで)もっと河村を長く使いたかったけど、チームのリズムがあまり良くなかった」と、河村を当初の予定より早く富樫勇樹と交代させたと明かす。

ちなみに会見はホーバスヘッドコーチ、河村、吉井裕鷹の3人が出席して行われた。本人を目の前にして苦言を呈することができるのは、指揮官が河村に絶大な信頼を寄せているからこそ。そして、河村はこのコメントを「トムさんがもうちょっと使いたかったのに、流れ的に変えたというのは悔しいです。でも、チームのためにメンバーチェンジをするのは当たり前です」と真摯に受け止める。

さらに河村は指揮官以上に自身のパフォーマンスについて厳しい評価を下し、自らに喝を入れた。「自分が出場したのは19分ですけど、その中で自分ができたことはほとんどなかったと思っています。自分が持っている力を本当に少しも出せなかったのはすごく悔しいです。もっと危機感を持ち、スタートとしての責任や覚悟を持ってプレーしないといけないとあらためて思います」

河村勇輝

「ワールドカップの時よりすべてのスキルでレベルアップをしていかないと」

日本は相手に39本ものフリースローを与えた。このファウルの多さに象徴されるディフェンスの遂行力の低さなど、いろいろな部分で課題が浮き彫りになった。しかし、収穫も少なからずある。中でも、パリ五輪に向けて導入を目指す新しいプレーを実戦で試し、今後に向けて価値ある情報を得られたことは大きい。

河村は言う。「ワールドカップと同じようなコールプレーだと相手に対策されてしまいます。その中でトムさんが新しいコールを考えましたが、チーム練習ではお互いにどんなプレーか分かっています。相手がどんなディフェンスをしてくるの分からない状態でコールした時、そのプレーがうまくいくのか、いかないのか。相手が対応してきた時、僕たちがどうアジャストしていくかは、オーストラリア戦、(7月の)韓国戦と、強化試合でやるべきことです。うまくいかないこともありましたが、それもまた1つの収穫になったと思います」

ワールドカップ2023の前、河村は世界のバスケ界において無印だった。しかし、大会で平均13.6得点、7.6アシストと大暴れしたことで、当然のように今は相手から真っ先に対策を講じられる存在となった。日本がパリ五輪で目標の決勝トーナメント進出を果たすには、そういった厳しいマークを受けながらも、河村が1年前と同等のハイパフォーマンスで日本のアップテンポなバスケットを演出することが必要だ。

パリ五輪で再び世界に衝撃を与えるため、河村は「とにかくトムさんに求められることをより高いレベルで遂行できるポイントカードでありたいです。そのためにはアシスト、得点を取るタイミング、ゲームマネジメント。ディフェンスでは特にオンボールでのプレッシャーなど、ワールドカップの時よりすべてのスキルをレベルアップしていかないといけない」と、自分に高いハードルを課す。

そして本日の2試合目に向け、強い決意を語った。「今日に関して言えば、やはり自分の強みだったり、また一緒に出てるチームメートの強みを生かすこともできなくて、ポイントガードとして良いプレーができなかったです。明日は必ず勝って、僕自身もチームの勝利に貢献できるように頑張りたいなと思います」

河村が消化不良に終わった初戦を払拭するパフォーマンスを見せることができれば、第2戦は内容と結果の両方が伴ってくるはずだ。