ゲイリー・ペイトン二世がプレーヤーオプションで残留
バスケットボール殿堂入り選手を父に持つゲイリー・ペイトン二世は、2016年のNBAドラフトにエントリーするも指名を受けられなかった。Gリーグを経てバックスでNBAデビューを果たしたのだが、チーム内での居場所を得られずレイカーズ、ウィザーズと短期契約を繰り返すことに。2020-21シーズンにウォリアーズにやって来た時も、最初は10日間契約。そこから少しずつ信頼を勝ち取り、2年目にはハードワークと粘り強いディフェンスで自分の居場所を勝ち取った。
ただ、彼のキャリアには不運がつきまとう。絶好調だった2021-22シーズン、カンファレンスセミファイナルで速攻からレイアップを狙った際にディロン・ブルックスのダーティーファウルを受けて空中でバランスを崩し、フロアに肘から落ちて骨折。チームは優勝したものの、彼はその瞬間をコート外から眺めることになった。
そのオフにはトレイルブレイザーズと3年2800万ドル(約42億円)の契約を結ぶも、新天地にフィットせず。数カ月後、セカンドユニットの不調に直面したウォリアーズは、ジェームズ・ワイズマンを絡めた4チーム間トレードでペイトン二世を呼び戻した。
ペイトン二世の不運はなおも続いた。ケガが相次いで復帰後は7試合にしか出場できず、今シーズンも出場は44試合のみ。ハードワークが身上なだけに、コンディションに難があると真価を発揮できない。無理をしてはまたケガをする悪循環に陥り、シーズン最後となったプレーイン・トーナメントのキングス戦もふくらはぎのケガで欠場している。
彼にとって来シーズンはトレイルブレイザーズと結んだ3年契約の最終年で、プレーヤーオプションとなる。今シーズン開幕時点での彼の目標は、ケガから復活して本来のパフォーマンスを取り戻し、プレーヤーオプションを破棄して金額は低くてもウォリアーズとの間に新たな複数年契約を結ぶことだった。だが、それがケガに阻まれた以上、NBAで居場所を確保するために戦ってきた苦労人が『1年生き残る権利』を行使するのは当然だ。
かくしてペイトン二世はプレーヤーオプションを行使して、契約最終年となる来シーズンに年俸910万ドル(約14億円)でウォリアーズに残る。決して大きな金額ではないが、これまで8年のNBAキャリアで2000万ドル(約30億円)しか稼いでいない彼にとって小さくはない。
だが同時に、これはウォリアーズにとっては必ずしも歓迎できない事態だ。今シーズンの年俸総額はリーグトップの2億900万ドル(約310億円)で、こちらもリーグ最高額となる1億7690万ドル(約270億円)ものラグジュアリータックスを支払い、なおかつプレーオフ進出も逃した。年俸削減が至上命題となっているにもかかわらず、ペイトン二世の910万ドルが加わったことで来シーズンの選手年俸はラグジュアリータックスのラインと予想される1億7100万ドル(約260億円)を超えてしまった。
ケガさえなければ、ペイトン二世はタフなディフェンダーであるとともに、オフェンスでもウォリアーズのボールムーブに巧みに合わせ、フィニッシャーとしても機能する。クールな選手が多いチームの雰囲気を盛り上げるムードメーカーで、彼がもたらすポジティブなエネルギーはチームを良い方向へと導く。2年前のパフォーマンスを取り戻せば、その年俸は安すぎるぐらいだが、とにかくケガが多くてコンスタントなプレーが計算できない上に、もう31歳と若くない。
ウォリアーズはこの負担を嫌い、彼をトレードに出す可能性もある。ただ、厳しい決断はこの後も続く。ケボン・ルーニーは来シーズンが800万ドル(約12億円)の契約最終年だが、6月24日までなら300万ドル(約4億5000万円)の違約金で契約破棄が可能だ。ルーニーが必要な戦力であっても、サラリー削減が優先される可能性はある。クリス・ポールの契約も6月28日までなら破棄できる。フリーエージェントとなるクレイ・トンプソンにどんなオファーを出すかも含め、ウォリアーズは非常に難しい決断を矢継ぎ早に下さなければならない。