カール・アンソニー・タウンズ

「兄弟たちとここに残り、大好きな仕事を続けたい」

今シーズンのティンバーウルブズは堂々たる戦いを演じた。カール・アンソニー・タウンズとルディ・ゴベアのツインタワーが結成2年目で機能し、アンソニー・エドワーズはキャリア4年目にして、若かりし頃のマイケル・ジョーダンと比較されるほどのパフォーマンスを見せた。チームを勝たせる老獪な司令塔のマイク・コンリーに、ベンチからエネルギーを注入するナズ・リード。ジェイデン・マクダニエルズにニキール・アレクサンダー・ウォーカー、カイル・アンダーソンといったロールプレーヤーも粒揃いで、カンファレンスファイナルまで勝ち進んだ。

コンリーは36歳だが元気いっぱいで、他の多くの選手がこれから全盛期を迎える。今回はマーベリックスに敗れたが、その経験から学ぶことで優勝に近づくことができる。その感触があるからこそ敗れても選手は誰もが前向きで、すぐに次の挑戦を始めたくてウズウズしている様子だった。

しかし、その未来が明るいとは限らない。フロントは今オフにかなりデリケートな判断を迫られる。まずはサラリーキャップの問題だ。今シーズンのウルブズの年俸総額は1億6600万ドル(約250億円)だったが、来シーズンからエドワーズの新契約が始まり、彼の年俸は1350万ドル(約20億円)から4230万ドル(約64億円)へと跳ね上がる。彼と同じ2020年ドラフト組のマクダニエルズも390万ドル(約5億8000万円)から2300万ドル(約35億円)へ。減額を伴う契約延長を受け入れたコンリーの年俸は2430万ドル(約36億円)から1000万ドル(約15億円)へと下がるが、焼け石に水だ。

コンリーとエドワーズ、マグダニエルズにタウンズとゴベア。スタメンの5人だけで1億6900万ドル(約250億円)と、今シーズンの年俸総額を超えてしまい、これにリードの1400万ドル(約26億円)を足せば贅沢税のラインを超える。アンダーソンは契約満了を迎え、アレクサンダー・ウォーカーは430万ドル(約6億5000万円)と格安だが契約は残り1年で契約更新かトレードかを判断する時期だ。

今のチームが大きなポテンシャルを秘めている以上、あと1年か2年は贅沢税を支払いながら優勝を目指せばいい。そうするべきだ──。ファンなら誰もがそう思うだろうが、ここでウルブズが抱えるもう一つ問題が出てくる。MLBのレジェンド『A-Rod』こそアレックス・ロドリゲスと、ウォルマートのeコマース戦略を主導した実業家のマーク・ロアの2人がウルブズを買収して新オーナーになるはずだったが、その支払いが遅れたことで元のオーナーであるグレン・テイラーは「もうウルブズは売らない」と宣言。両者は対立し、オーナー移管は棚上げとなっている。贅沢税を払うにしてもその最終決定を誰が下し、その金額を誰の財布から出すのかが曖昧なままだ。

巨額の贅沢税を支払う最終決定が下せない現状が長引けば、今オフに誰かを放出せざるを得なくなる。その場合の『犠牲者』は、フランチャイズプレーヤーであるタウンズになるかもしれない。大幅な年俸カットのためには、タウンズ、ゴベア、エドワーズのうち1人を外さざるを得ず、普通に考えれば『外様』のゴベアだろうが、31歳のゴベアの2年9000万ドル(約150億円)の契約は重く、トレードを成立させるのは簡単ではない。次世代のエースであるエドワーズを外すわけにいはいかず、消去法でタウンズとなる。

誰にとっても受け入れがたいが、『最悪のケース』として今オフにウルブズが決断しなければならない選択肢になり得る。2015年ドラフトの全体1位指名を受けたタウンズは、来シーズンでウルブズ10年目を迎える。勝てない時期をずっと支えてきただけでなく、ミネアポリスの街との繋がりも相当に深い。

シーズン最後の会見で、タウンズは他のチームメートと同じように来シーズンへの期待をこう語っている。「兄弟たちとここに残り、大好きな仕事を続けたい。僕の計画はそれだけだ。僕自身は何も変わっていない。ルーキーとして初めてここに足を踏み入れた時からずっと一緒。この街とチームが好きで、自分の人生と家族に与えられたものを愛している」

自分が対象になるかもしれないという前提抜きで、オフの動きについてタウンズはこう話した。「オフに何があるにせよ、雑音に惑わされずに毎日のトレーニングに励み、また自分を最高の状態に持っていきたい。ずっとそうしてきたけど、今シーズンはこれまでの努力が実を結び、キャリアが一歩前進したと感じているんだ。来シーズンはもう一歩踏み込んで、さらに前に進みたい。僕が費やしてきた努力は無駄じゃなかった。そう感じられることが大きな力になる」

これだけ充実したロスターを抱える以上、贅沢税の支払いは避けられない。オーナー移管の対立が早期に解決し、『まともな判断』が下されることを願いたい。