『落とさない』ティルマンへの対応に苦しむ千葉
名古屋ダイヤモンドドルフィンズは今節、千葉ジェッツをホームに迎えた。初戦を75-94で落としていた後の第2試合、第1クォーターは両チームとも外国籍選手のオン・ザ・コート数が「1」だったが、名古屋はインサイドの柱であるジャスティン・バーレルが負傷でまだプレーできない。帰化選手のマイケル・パーカーを起用する千葉に比べてインサイドの攻防は苦しい陣容だった。
にもかかわらず、名古屋が第1クォーターから見事な試合運びを見せる。ジェロウム・ティルマンは第1クォーターの残り6分53秒にこの試合1本目の3ポイントシュートを決めると、10分間で3ポイントシュートを4投してすべて成功。名古屋が第1クォーターを24-23で終えた。
千葉にとっては昨年12月30日の川崎ブレイブサンダース戦から11試合も続いている「第1クォーターをビハインドで終える」展開。ただ富樫勇樹が「決められてはいたけれど、自分たちのオフェンスも悪くはなかった」と語るように、千葉のすべてが悪かったわけではない。
前半の問題はディフェンス面。特にティルマンへの対応だった。大野篤史ヘッドコーチはこう振り返る。「トラップディフェンスと、レギュラーディフェンスを使い分けましたが、ポップのところでローテ―ションが間に合わなかった」。小野龍猛は「ピック&ロールのところでティルマンがポップして、それを上手く3番目、4番目の選手が見られなかった」と説明するように、外に開くティルマンの動きを「空けてしまう」現象が起こっていた。
大野ヘッドコーチが「正直あそこまで入るとは思わなかった」と苦笑するように、第1クォーターで調子づいたティルマンは第2クォーターも3ポイントシュートを4投して3本成功。B1記録の「8本」にあと1本と迫る7本の3ポイントシュートを前半だけで決めてみせた。
これだけ決められると、どんなにオフェンスが良くても展開は難しくなる。千葉は38-41と3点のビハインドでハーフタイムを迎えた。大野ヘッドコーチはロッカールームで「ティルマンに対してはオールスイッチ」という対応を確認した。
小野は「スイッチして富樫に付かせて、他のデカい2人もスイッチして(マークを受け渡す)というのを後半はしっかりできた」と説明する。ピック&ロールの守備に難があったヒルトン・アームストロングは、後半のプレータイムが4分強とこの日のファーストチョイスから外された。そして千葉は後半、ティルマンの3ポイントシュートを「4分の0」と抑えることに成功した。
富樫のピック&ロール主体に猛反撃、終盤は大混戦に
千葉は後半開始直後に8点差まで拡げられたが、小野の連続3ポイントシュートなどで追い上げ、残り7分18秒に富樫の3ポイントシュートで同点に追いつく。その後は再びビハインドになったが、残り1分55秒に富樫が自身のスティールからレイアップを決めて、58-58の同点に追い付いた。
名古屋はレジー・ゲーリーヘッドコーチが「張本(天傑)がケガで外に出たところで、相手がそこを突いてリードを作った」と振り返るように、第3クォーターの残り2分37秒に張本が退くと展開が苦しくなった。
千葉は66-61と逆転して第4クォーターに入ると、ピック&ロールから効果的に得点を奪っていく。特に富樫がタイラー・ストーンの連携から面白いようにゴール下に抜け出し、フリースローも含めて得点を重ねた。
名古屋も残り2分53秒に張本が戻って、ピック&ロールへの警戒を強める。しかし富樫は残り49秒、今度はピックに入ろうとするストーンを制して1on1から見事なレイアップを沈め79-76。さらに富樫は残り35秒にもフリースローを2本得て成功する。千葉が81-76と「安全圏」に限りなく近づいた。
ただ名古屋もここから粘りを見せた。この日は9リバウンド6アシストと周りを生かす動きで貢献していた中東泰斗が残り30秒、自ら切れ込んでフリースローを獲得する。これが2本とも決まって名古屋が81-78と1ポゼッション差に詰め寄った。
そして、その直後に試合の山場となるプレーが出る。相手のスローインに勢いよく飛び込んだ中東が見事なスティール。しかしイージーとも思えたレイアップを落としてしまい、千葉のストーンにリバウンドを奪われる。
中東はこう振り返る。「取れると思ってなかったんですけれど、ギャンブルで自分が出たらボールを取れた。ただその勢いで身体が流れてしまって、決めることができなかった。あそこを決めていたらチャンスはあったので、決め切れなかったのが悔しいです」
ティルマンが反応してファウルで止めたが、直後のフリースローをストーンが2本ともきっちり決め、84-80と逆に点差が開いてしまう。残り25秒の、両チームの明暗を分けたプレーだった。
名古屋もタイムアウト明けにティルマンが36点目となるレイアップを決めたが、直後のファウルプレーは実らず。千葉は後半の修正が実り、86-80の逆転勝利でアウェーゲームを2連勝で終えている。
名古屋Dの指揮官は「勝てる試合だと思った」と手応え
ゲーリーヘッドコーチが「勝てる試合だと思った」と口にするように、名古屋にも勝機はある試合だった。また内容面で、今後につながる収穫もあった。
特にリバウンドはスモールラインアップにもかかわらず、18日が41-42、19日も38-42と千葉に肉薄。「JB(バーレル)がいないので、リバウンドはチーム全員で取ろうと話していた。自分もリバウンドには自信があるので、積極的に絡むようにした」という中東は、2試合で15リバウンドを取っている。
ゲーリーヘッドコーチも「この2日間、リバウンド面はとても良かった。チームリバウンド、チームでボックスアウトした部分が見えた」とリバウンドについては満足している様子だった。
指揮官はこう続ける。「ティルマンだけでなく、他の選手もバーレルがいない中で伸びている。バーレルが戻ってきたら、さらに強くなると思う。石崎(巧)や船生(誠也)、中東もいい時間帯を見せてくれた。それも褒めたい」
また中東のシュートミスについてはこう擁護した。「最後にレイアップを外しましたが、若い選手がそういうチャンスがあるというのも良いことだと思うし、経験になる。次回は絶対入れると信じている」
地元チームは敗れたが、試合後の愛知県体育館は拍手に包まれた。4008名の観客が、ポジティブな何かを感じてアリーナを出ていける試合だったのではないだろうか。