ナズ・リード

「バスケを楽しみ、自分らしく、良いプレーを」

ナゲッツとティンバーウルブズによるカンファレンスセミファイナル初戦、ウルブズは106-99で敵地での貴重な1勝をつかみ取った。試合開始から3分半で14-2のランをアンソニー・エドワーズが主導する。それでもナゲッツはすぐに出遅れを取り戻し、その後は接戦の展開が続く。勝負どころで両チームに差を生み出したのは、意外な選手だった。

前半はエドワーズの個人技頼みだったウルブズは、第3クォーターに入ってマイク・コンリーとカール・アンソニー・タウンズが得点を重ねる。コンリーは「前半はアント(エドワーズ)が全部シュートしてしまうから、リズムなんかつかめないよ」とのジョークで周囲を笑わせたが、彼らの得点が生まれ始めたことでオフェンスのバランスが良くなったのは確かだ。

しかし、第4クォーターに入ってタウンズが立て続けにファウルを犯し、残り8分半の時点で個人ファウル5つでベンチに下がることに。ここで控えセンターのナズ・リードが奮起した。

『意外な選手』という表現は、シックスマン賞に輝いたリードに失礼かもしれないが、第3クォーターまでのリードは14分の出場で2得点しか奪えず3ターンオーバーと低調で、プレーオフ経験の乏しさが響いているように見えた。だが、そのリードがタウンズの代わりではなく、あくまで自分らしいパワフルなプレーを披露。ディフェンスではニコラ・ヨキッチとアーロン・ゴードンを相手に身体を張り、オフェンスに転じれば常にリムを見て積極性を出していった。

ジャスティン・ホリデーとのミスマッチを突いたゴール下での得点からリードの時間がスタートする。タフショット気味に放った3ポイントがバンクショットとなって決まったのはツキがあったのかもしれないが、コンリーがお膳立てしたワイドオープンのチャンスではリングの中央を射抜く3ポイントシュートを決めている。

特筆すべきはヨキッチを手玉に取り、一番怖い相手のリズムを乱したことだ。エドワーズのシュートが外れた瞬間にヨキッチの上から押し込んだダンク、ゴードンをかわしてカバーに入ったヨキッチからファウルを引き出しつつ決めたバスケット・カウント。タウンズがコートに戻った残り3分の時点でスコアは98-91、試合の主導権はすでにウルブズの手中にあった。

「全力でプレーすることだけを考えた。調子が良くても良くなくても、その部分でブレないのが僕のスタイルなんだ」とリードは言う。「自信を持ってプレーできず、この1年間を通してやってきたバスケができていなかった。でも、それを僕らは挑戦だと感じたんだ。僕らはレギュラーシーズンで多くの成功を収めてきたから、ここでそれを無駄にしたくはない。バスケを楽しみ、自分らしく、良いプレーをして勝ちたいんだ」

「僕は絶対にあきらめない。その強さはドラフト外でNBAにやって来たことで備えたものだ」と彼は言う。2019年のNBAドラフトにエントリーするも指名を受けられず、2ウェイ契約でGリーグのアイオワ・ウルブズでプレーしたのが彼のプロキャリアの出発点だ。

困難があってもうつむかずに戦い続ける。そんな強みを持つ彼は「サンズとのファーストラウンドでは自分らしくプレーできなかったから、今回はもっと頑張らなきゃいけない」と言い、長く厳しい戦いになりそうなシリーズで存在感を発揮するつもりだ。