「今日はバックスを上回るだけの力を出せた」
ペイサーズはファーストラウンドの初戦を94-109で落とした。バックスはヤニス・アデトクンボ欠場にもかかわらず優勝経験のある男たちが力強いプレーを見せ、経験豊富なデイミアン・リラードが35得点で主役を演じた。
一方のペイサーズは、パスカル・シアカムが36得点13リバウンドと大活躍だったものの、他の選手は緊張でいつも通りのプレーができず、ペイサーズらしいオフェンスのスピード感や積極性が影を潜めた。チームの特徴であるアシストはバックスより1つ少ない20しかなく、得点はレギュラーシーズンの平均から29も減った。
しかし、彼らは精神的にタフだった。第2戦の前日にタイリース・ハリバートンは「良い攻撃は良い守備から作らなければならない」と言い、アーロン・ネスミスは「もっとハードに、もっとタフに、みんなで声を掛け合って連携して48分間を戦う」と言った。そしてマイルズ・ターナーは「みんなそれぞれ乗り越えなきゃいけないけど、チームとして良いところにいる感覚はある」とあくまで前向きだった。
そして現地4月23日の第2戦、ペイサーズは『らしさ』を取り戻す。バックスではリラードが相変わらず好調で34得点を挙げ、アデトクンボに代わって先発するボビー・ポーティスが力強いプレーを見せるたびにミルウォーキーのファンは沸き、チームを力強く後押ししていたのだが、ペイサーズはそこで受け身にならず、粘り強く守り、ボールを奪うと素早く攻撃に転じ、チームでボールをシェアして攻めた。
後半は常にリードを保ち、第4クォーターに一気に差を広げて125-108の完勝。アシストは38まで増え、ターンオーバーはわずか6。人とボールが猛スピードで連動しているにもかかわらずミスの少ない、ペイサーズらしい魅惑の攻撃バスケを展開した。
シアカムはフィールドゴール23本中16本成功、仲間がお膳立てするチャンスを効率良く決めて37得点11リバウンド6アシストを記録した。「みんなすごいよ。第1戦では前半に出すべきインテンシティを出せなかった。分かっていても実際に修正するのは難しいのに、今日はバックスを上回るだけの力を出せた」とシアカムはチームの成長を称える。
「今日はみんな落ち着いていた。目を見れば分かるよ。自分たちのやり方を正しく行えばチャンスはあると確信している目だ。後半に一気に自分たちのペースに持っていけたのは、それが理由だと思う。プレーオフでは簡単な試合なんて一つもないけど、タフに戦って一つずつ取っていく。このチームにはその気概があると感じられたよ」
ペイサーズは若いチームで、爆発力はあるが安定感に欠ける部分がある。ほとんどの選手がプレーオフ未経験だけに、優勝経験のあるシアカムの安定感は貴重だ。指揮官リック・カーライルは彼をこう称えた。「トレードで加入して以来、彼が動揺したのを見たことがない。みんなから信頼され、尊敬される存在なんだ」
ハリバートンは12得点12アシストというスタッツ以上に、オフェンスを引っ張るリーダーシップが目立った。「第1戦での僕はちょっと焦ってしまい、ボールを手放すのが早すぎた。だからボールを保持する時間を少しだけ伸ばして、相手ディフェンスを引き付けてオフェンスを組み立てることを考えた。バックスの守備は僕らの攻めの起点にプレッシャーを掛けてスローな展開に持ち込もうとしたけど、僕らがまず守備で良い働きをすれば、そこから始まるトランジションは止められない。リバウンドを取って走る。それだけのことだけど、今日はそれで良い流れを作れたよ」
第3戦ではアデトクンボの復帰が見込まれている。連敗した上にバックスのエースが戻って来るとなれば大ピンチだったが、敵地で大きな1勝を挙げたことで胸を張ってインディアナに戻ることができる。ペイサーズがプレーオフで1勝を挙げたのは2018年4月以来。続く2シーズンはファーストラウンド敗退、その後は3シーズン連続でプレーオフ進出を逃している。ペイサーズの本拠地ゲインブリッジ・フィールドハウスに舞台を移す第3戦は、NBAオールスター以上の盛り上がりが待っているだろう。ハリバートンはうれしそうにこう話す。
「会場の熱気はプレーオフ全体でも見たことのない、想像を超えるものになるだろうね。ホームに帰って僕らの最高のファンの前でプレーするのが楽しみだよ」