チームの出遅れを挽回「僕は精神的にタフなんだ」
マイケル・ポーターJr.はニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーに続くナゲッツの3番手。エースを張れるポテンシャルはあれど、ヨキッチとマレーのためにフロアを広げて3ポイントシュートを放ち、必要とあればインサイドでの得点にリバウンドにディフェンスにと労を厭わない。ナゲッツはヨキッチとマレーが『看板』ではあるが、ポーターJr.を始めとした他の実力者がチームとして一つにまとまる機能性こそが『王者』の強さを生み出している。
プレーオフ初戦、ナゲッツはレイカーズに114-103で勝利した。ポーターJr.は19得点8リバウンド1アシスト2ブロックで勝利に貢献したが、第1クォーターの彼はフィールドゴール4本中成功1本のわずか2得点と波に乗れず、デンバーのファンの多くが彼の状態を心配した。
それには理由がある。ラプターズの2ウェイプレーヤーだった弟のジョンタイ・ポーターが、オンラインベッティングに絡んでNBAのレギュレーション違反を犯し、永久追放処分を受けたからだ。話はそれだけでは済まない。もう一人の弟は昨年に飲酒運転で事故を起こし、女性を死亡させていた。レイカーズとの初戦の前日にその裁判があり、ポーターJr.はチームの許可を得た上で練習を欠席し、法廷で加害者の家族として遺族にお悔やみの言葉を述べている。弟には懲役6年の判決が言い渡された。
「弟たちに悲しい出来事があったんだけど、ここにも兄や弟が大勢いる。彼らのためにここに来て自分の仕事をする。高いレベルでプレーするための準備をやらなきゃいけないと思っていた」とポーターJr.は言う。
「みんなそれぞれ僕にテキストメッセージで、僕を支える、必要であればいつだって助けになると連絡をくれた。昨日の練習を休むことも理解してくれて、僕の背中を押してくれた」
試合に話を戻そう。立ち上がりのポーターJr.はシュートタッチが悪く、ナゲッツもレイカーズの勢いに押されて最大12点のビハインドを背負った。それでもポーターJr.は第2クォーター途中にコートに戻ると、彼らしい積極性をしっかりと出すことでナゲッツを目覚めさせた。
「良いシュートを打っても決まらないことはよくある。気持ちを切り替え、集中し直すんだ。僕たちはチームの実力に自信を持っている。シーズンを通して、プレッシャーの掛かる場面でも自分らしくプレーしてきた」
第2クォーター残り6分、12点ビハインドの場面で彼がレブロン・ジェームズを鋭い動き出しで振り切り、彼にとって最初の3ポイントシュートを決める。続いてポストアップから得点を狙うアンソニー・デイビスを抑えきった。この一連のプレーをきっかけにナゲッツは攻守にギアを上げ、ポーターJr.はデイビス相手にオフェンスリバウンドをそのまま押し込み、レブロンの手前からフローターを沈める。さらにレブロンを振り切ってのカットインでパスを呼び込み、デイビスのブロックをかいくぐっての同点レイアップと、ナゲッツの猛追を象徴するパフォーマンスを見せた。
ポーターJr.の奮闘で序盤の出遅れを取り戻したナゲッツは、第3クォーターに押し返し、一度優位に立ってしまえば勝ち筋を手放さなかった。ポーターJr.はこう語る。「僕たちだって人間だから、コート外で起きたことの感情をコートに持ち込んでしまう。でも僕は精神的にタフなんだ。これまでのキャリアでも多くのことを経験してきたからね」