トレイ・ヤング

ケガを押してプレーしたヤング「難しい試合になった」

ホークスはプレーイン・トーナメントでブルズに敗れて2023-24シーズンを終えた。レギュラーシーズンで36勝46敗のホークスにとってプレーオフ進出の期待値は決して高くなかったが、それでも敗れた直後のチームには悲痛な雰囲気が漂っていた。

ブルズのコービー・ホワイトは5年のキャリアで最高となる42得点を叩き出してヒーローとなり「プレーオフの雰囲気を作り出してくれたファンに感謝している。最高の試合だった」と試合後も興奮が収まらなかった。ホワイトは2019年の1巡目7位でブルズに指名されたものの、ポイントガードとしてはロンゾ・ボールの控えで、得点力を発揮すべきガードはザック・ラビーンであり、実力を試す機会に恵まれずにここまで来た。それでも、この大一番でブルズを救う働きを見せた。

一方でオフェンスを引っ張る働きが期待される生え抜きのガードとして、トレイ・ヤングは結果を出せなかった。左手の小指の靱帯損傷で2月下旬から欠場が続き、レギュラーシーズンの最後3試合でようやく復帰した彼は、本来のリズムを取り戻せていなかった。43分プレーするもフィールドゴール12本中4本成功と効率は悪く、アシストは10を記録するもターンオーバーも6と止まらず。守れない弱点を露呈してコートに立っていた時間帯の得失点差は-27というひどい数字だった。

「ケガ人が多くて苦しい状況でよくここまで来れたと思うけど、上手くいかなかった。コービーの活躍はすごかったし、ブルズは他の選手も良いプレーをしていた。僕らは集中して対処しようとした。でも一発勝負ではゲーム中に多くの修正ができるわけじゃない。難しい試合になった」とヤングは言う。

彼は左手に装着していたサポーターを後半になって外した。「立ち上がりから積極性が足りず、考えすぎていくつかターンオーバーをしてしまった。サポーターを外したからドクターは怒っているだろうけど、序盤の出来が悪かったから何かを変えたかったんだ。手については何事もなく試合を終えられて良かったんだけど、試合の流れを変えることはできなかった」

ホークスは3年前にカンファレンスファイナルまで勝ち上がったが、その後は2年連続でプレーイン経由でファーストラウンドで敗れ、今回はプレーインで敗退した。デジャンテ・マレー獲得はヤングの得点力をさらに引き上げるとともにディフェンスの難を隠すはずだったが、実際はヤングの攻める回数が減り、バックコートのサイズ不足がより顕著になった。ロールプレーヤーの層を厚くする試みも、結局は今シーズンのケガ人続出による失速が示すように上手くいかなかった。

ホークスに起きているのはヤングとマレーを軸とする成長ではなく、ゆるやかなチーム力の低下だ。この間、優勝を狙えるチーム力はなかったし、ヤングとマレーのコンビは機能しないことが分かった。『現体制は限界』という判断をフロントは下さなければならない。

今年2月のトレードデッドラインの時点で、ホークスのフロントはマレーのトレードを模索したと言われる。これは結局まとまらず、その直後にヤングがケガをして、しばらくホークスは『マレーのチーム』となったが、そこでチームが大きく浮上することはなかった。ホークスのフロントは(その保守的な傾向も含め)ルーキーイヤーから6シーズンに渡りエースを張ってきたヤングを選択し、チームを再編すると予想される。

ホークスは賭けに負けたことを認めなければならない。敗者がいれば勝者もいるもので、このケースでの勝者はスパーズだ。マレーを擁したままでは昨シーズンに22勝まで落ち込むことはなく、それはビクター・ウェンバニャマを引き当てるチャンスもなかったことを意味する。スパーズはティム・ダンカン以来のタレントを手に入れ、そしてこのままホークスが低迷を続ければ、マレーと交換で手に入れた2025年から2027年のホークスの3つの1巡目指名権の価値は極めて高いものになる。

ホークスも負けたままではいられない。今オフはチームの今後3年、5年を左右する重要なものとなる。