「初戦までに少し休んで心を整えれば大丈夫だ」
レギュラーシーズン最終戦、マジックはバックスに113-88と完勝して東カンファレンスの5位を確保した。レギュラーシーズン終盤戦には疲労の蓄積で持ち味であるハードワークが損なわれていたが、順位決定の正念場となる試合で完璧なパフォーマンスを見せ、バックスを88得点に抑え込んだ。
マジックにとっては2020年以来のプレーオフ進出。指揮官ジャマール・モズリーは若いチームが躍進できた理由を「継続性を持てたこと」と語る。「最初の日から今日まで、何が起きても道を踏み外すことなく、すべてのことから学び、経験を積んできた。その努力を選手が厭わなかった」
一方でバックスは、この最終戦でニックスにかわされ3位に転落。新人ヘッドコーチとともにスタートして、指揮官交代があり、ラスト4試合はヤニス・アデトクンボがケガで離脱。マジックとは対照的に「継続性」のないレギュラーシーズン82試合だった。
それでもラスト11試合で3勝8敗という失速は想定外だった。左ふくらはぎのヒラメ筋を痛めたアデトクンボは復帰に向けてリハビリ中。ペイサーズとのプレーオフ初戦に間に合うかどうか、指揮官ドック・リバースは「そう考えているが、待つしかない」と語る。「彼は復帰に向けたすべてのメニューをこなし、ここまでは順調だと報告を受けている。それはポジティブなことだ。今はそれがすべてだ」
アデトクンボ不在は大きいが、それでもバックスには経験豊富な選手が揃っている。これだけマジックに手も足も出ないのは言い訳ができない。出だしは良かったが第2クォーターに逆転されると、後半は反撃する力を出せなかった。第2クォーター以降は3ポイントシュートをケアされ、1対1で仕掛けるもペイントエリアをこじ開けられずに確率の悪いペリメーターからのシュートを打たされた。こうしてロースコアの展開に持ち込まれた上に、そこからフランツ・バグナーに走られる速攻でイージーな失点が重なるのでは勝ち目がない。
アデトクンボ抜きでオフェンスを引っ張るべきリラードはフィールドゴール14本中成功わずか2本の16得点と不発に終わった。第2クォーター中盤、リラードはジョナサン・アイザックのマークをかわしてシュートを狙った際に足を痛めた。プレーオフ前に無理は禁物で、彼の状態を心配するベンチを制してプレーを続けたが、調子は上向かなかった。彼は内転筋を痛めながらプレーしていることを認め、「勝ちたかったんだ。プレーオフに向けて、休むよりコートに立ち続けるべきだと思った」と語る。
若いマジックの勢いに飲み込まれる最終戦となったが、リラードの気持ちはすでにプレーオフに向いている。「まずはペイサーズに勝つこと、それだけが目標だ。プレーオフだからと言って感情的になりすぎるのは良くない。攻守の強度を保ちながらも感情に振り回されずに落ち着いてプレーする、そんな成熟したチームでなければいけない」
リラードがトレイルブレイザーズを離れて新天地バックスに来たのは、プレーオフを勝ち抜いてNBA優勝を勝ち取るためだ。「この試合を前に、開幕時点での感情を思い出していた」とリラードは言う。「目の前にチャンスがある。そのことにワクワクしている感覚をね。シーズン中はすべてが思い通りに行くわけじゃなく、身体的にもメンタル的にも波があって、ネガティブなことに気持ちが引っ張られがちだ。でも、僕たちには夢を実現する機会がある。そのことは仲間たちにも伝えるつもりだ」
「プレーオフでもヤニス抜きで戦う可能性があるけど、それもチームの成長の機会だととらえたい。ヤニスがいなくても勝つつもりだし、その間に彼が戻って完全なチームになればベストだ」と語るリラード自身も100%のコンディションではないが、これまでずっと満身創痍でもチームを引っ張ってきた経験が彼にはある。「コンディションは完璧とは言えないけど、誰だって完璧じゃないよ。プレーオフ初戦までに少し休んで心を整えれば大丈夫だ」