キヤンテ・ジョージ

指揮官も信頼「他の選手より早く学べている」

ジャズは現地2月6日にサンダーに勝った時点で26勝26敗と勝率5割、プレーオフ進出のチャンスがあった。ドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアの2人を揃って放出した2022年オフから中堅も若手も大きな成長を見せ、チームの再建は周囲の予想よりかなり早く進んでいた。しかし、フロントがこの流れに待ったをかける。トレードデッドラインでシモーネ・フォンテッキオ、ケリー・オリニクとオチャイ・アバジを放出。指名権とのトレードは来シーズン以降に向けた動きで、『今シーズンは勝たなくてもいい』というメッセージとなった。

これを機にジャズは糸が切れたように勢いを失い、3勝21敗と負け続けている。現地4月5日のクリッパーズ戦で29点差の大敗を喫し、連敗は11まで伸びた。これはジャズにとって1981-82シーズン以来の連敗記録だ。

あと5試合が残っているが、もう目的もモチベーションもない。エースのマルカネンは肩のケガで4試合連続で欠場しており、無理に復帰する必要はない。他の主力も今後は休養を取るかもしれない。Gリーグのソルトレイクシティ・スターズがプレーオフで敗退したことで、こちらの若手にNBAでのプレー経験を積ませるほうが理にかなっている。

そんな状況でも根気強くアリーナ通いを続けるジャズのファンが注目するのは、キヤンテ・ジョージだ。昨年のNBAドラフトで1巡目16位指名を受けた彼は、ここまで70試合に出場し、12.7得点に4.5アシストを記録。試合を重ねるごとにNBAのリズムに慣れて調子を上げるルーキーは、3月に出場した14試合で16.4得点、4.7アシストだった。

そのキヤンテについて『Desert News』は、どの選手よりも多くバスケの試合を観戦していると報じている。「毎日上達するのが大事であって、上手くなるためには何でもやる。試合を見ることはその助けになると思うんだけど、やらない選手が多いのは僕には理解できない」とキヤンテは言う。彼は試合を終えて家に帰ったら、その試合をもう一度見る。他のNBAの試合も見るし、大学バスケもチェックして、かなりの時間をバスケ観戦に費やすそうだ。

ヘッドコーチのウィル・ハーディーはキヤンテについて「まだ若いから、他の選手と同じようにミスを犯すし、ベストなプレーができないこともある。だが、彼はそこから学び、ミスを繰り返さない能力がある。それは試合を見ている効果もあるだろうね」と語り、こう続けた。「試合を見ている人とはバスケについてより深い話ができる。ボックススコアを見るだけで『リバウンド争いで大敗した』と言うことはできるが『なぜリバウンドで負けたのか』は試合を見なければ語れない。キヤンテは試合をたくさん見て、他の選手より早く学べている」

キヤンテはNBAで初めてのシーズンを戦っているだけでなく、キャリアを通じてポイントガードとしてプレーするのがほぼ初めてだ。これまでは点を取ることに特化し、プレーメークはやってこなかった。その彼がNBAでポイントガードとして急成長しているのは、学ぶ姿勢が良いからだろう。

そしてキヤンテは、ポイントガードとしての自分の成長について「ウィルのおかげだ」と語る。「ウィルは僕をずっと居心地の悪いシチュエーションに置くんだ。周りにいるのは僕より経験のある選手ばかりだけど、僕が『おい、コーナーに行け』と言わなきゃいけない。僕をサポートしてくれる仲間に対して、ウィルは僕が仕切るよう求めているんだ」

ハーディーは、193cmのキヤンテがNBAで大成するには点を取るだけでなくゲームコントロールを学ばなければいけない、と考えている。20歳の彼にチームを掌握させるために、練習での仕切り役を彼自身でもアシスタントコーチでもなく、キヤンテにやらせることもしばしばあるそうだ。キヤンテはそのすべてを受け入れ、急成長を続けている。今シーズン後半戦、特に残されたわずかな試合を来シーズンのためにどう有効活用するか。その意味でキヤンテに注目するのは悪くない。ジャズのファンはそれを理解している。