モンクとハーターの離脱で『サボニス対策』の回答なし
レギュラーシーズン終盤戦は、プレーオフに向けた順位の変動だけでなく、『ポストシーズンで勝てるチーム力なのか』も気になるところです。キングスはマリーク・モンクとケビン・ハーターがケガで離脱し、6位へと順位を上げるために戦うはずが、10位まで落ちそうなほど苦しい戦いになっており、それはポストシーズンでの苦しい戦いも予感させます。
セルティックス戦では終始ビハインドを背負い、第4クォーター残り6分の時点で19点差と絶望的な状況でしたが、この試合40得点を奪ったディアロン・フォックスがあきらめることなく次々に得点を奪い、残り27秒でこの試合7本目の3ポイントシュートを決めて逆転に成功しました。セルティックスのセカンドユニットが相手だったとは言え、エースが重要な試合で集中力を高めステップアップする姿は、ポストシーズンに向けた期待値を上げる重要な要素です。
しかし、フォックス以外はセルティックスのディフェンスに対して手も足も出ませんでした。これはシュートの好不調以上にキングスの苦しさを物語っています。
最大のポイントはドマンタス・サボニス対策のディフェンスにあり、それは昨シーズンのプレーオフでウォリアーズが採用した戦略と似たような形でした。チームトップのアシストを稼ぐサボニスは優れたプレーメーカーで、見事なコンビプレーを決めていくフィニッシャーでもありますが、リングから離れた位置でのシュートには消極的です。そのためトップの位置でプレーメークを行うサボニスに対して、マッチアップするセンターは距離を取ってゴール下のスペースを消すことに専念し、周囲はマンツーマンでのチェイスを強めてきます。
ゴール下のスペースを潰すことでキングスが得意とするカットプレーを塞ぎ、高さと運動能力に欠けるサボニスがゴール下へアタックしてきても、分厚く対処することが可能な守り方は『サボニス対策』として極めて有効です。しかもサボニスは熱くなりやすい性格のため、フィジカルな戦いを強いられ続けると自滅してしまうことも多く、冷静さを欠くことはフリースロー成功率の低下という形でも出てきます。
昨シーズンのサボニスはトゥルーシューティングが67%と『超』が付くほど優秀なフィニッシャーでしたが、ウォリアーズとのプレーオフ7試合では52%まで低下しました。同じような守り方をされたセルティックス戦でも50%と、チーム最高のフィニッシャーのはずがオフェンスの弱点へと変わってしまいます。
『サボニス対策』への対処としては、相手センターがゴール下で待ち構えていることを利用し、アウトサイドで部分的な2on1を作っていくのが有効です。実際、バム・アデバヨが同じような対策を講じられるヒートはハンドオフを多用してシューターに打たせる形で対応しています。
キングスではオフボールでディフェンスを引きはがすのが上手いハーターが、サボニスからのハンドオフを使って得点を生み出していました。また、今シーズンはモンクとサボニスのピック&ロールを多用し、強気なジャンプシュートを使って得点を量産してもいました。しかし、両者が離脱したことで『サボニス対策』への答えを用意できないままポストシーズンを迎えることになりそうです。
65%を記録していたサボニスのトゥルーシューティングは、ハーター離脱以降は55%まで落ちています。個人ではなくコンビプレーで得点を生み出すのがサボニスの強みなだけに、他の選手でサボニスとの絡みを増やすか、オフェンスそのものを見直さなければいけません。『サボニス対策』さえ対処できれば、勝負どころの得点はフォックスが何とかしてくれるだけに、残り5試合で解決策を見つけたいところです。