『優勝のためのチーム改革』はケガで完遂できないまま
セブンティシクサーズはジェームズ・ハーデンのトレード騒動がありながら順調なスタートを切りましたが、ジョエル・エンビードの離脱が大きく響いて順位を落とし、東カンファレンス8位となる可能性が高くなっています。エンビードがいない試合では13勝27敗と大きく負け越しており、大黒柱の存在感を感じずにはいられません。
ヘッドコーチにニック・ナースを迎えた今シーズンは、エンビードを強く押し出した戦い方もあれば、逆にスピードを生かした戦い方にシフトしてアドバンテージを作るなど、勝ちパターンが多彩になりました。ハーデンとのトレードで加わったニコラス・バトゥームが気の利いたポジショニングでチームに足りなかった相手の弱点を使う動きも加わり、『プレーオフで勝てるチーム』への進化も期待できる内容でした。
しかし、これらの戦い方は適切なロールプレーヤーを組み合わせた『エースを効果的に使う戦い方』でもあり、従来のスター選手を並べたパワーハウスの戦い方とは異なります。そのためエンビードが離脱するとロールプレーヤーの機能性が低くなり、シンプルに戦力不足に陥ってしまいました。バディ・ヒールドやカイル・ラウリーを獲得したものの、新加入が増えたことでオフェンスの連携に欠くようになる悪循環も発生しています。
4年目のタイリース・マキシーはオールスターへと成長しましたが、エースとして1人立ちするには至っておらず、エンビードの離脱前と離脱後で彼の得点が増えているわけではなく、その一方でチームの平均得点は12.6も減りました。フリースローのアテンプトが9.2本減り、さらにディフェンスを引き付けるエンビードがいないことでロールプレーヤーがオープンで打てるチャンスも減ってしまいました。
プレーイン・トーナメントに進めばヒートやホークスと対戦する可能性があり、その先のプレーオフでは1回戦でセルティックスとの対戦になるかもしれません。この3チームは過去4シーズンにおいてプレーオフで負けた相手であり、いずれもエンビードには個人技での突破を許容することで『エンビードを孤立させる』ことを強いてきました。シクサーズが『プレーオフで勝てるチーム』に進化するためには、この課題を克服することが必要になります。
そのエンビードは4月初旬に復帰する目途が立っていると報道されており、ぶっつけ本番でのポストシーズンは避けられそうです。わずかな期間ではあるものの、エンビードの個人技に頼るのではなく、チーム戦術の中で個人技を有効活用する形を再構築できなければ、例年通りの敗北が待っていることでしょう。
優勝のためのチーム改革を志したシーズンは、勝ちパターンを増やし順調なスタートを切ったものの、エンビードの離脱により連携が熟成されたとは言い難い状況でポストシーズンを迎えることになりそうです。エンビードが戻ってくればすべてが解決するのか、それとも連携不足を露呈してしまうのか、今オフはエンビードとポール・リード以外の契約が切れるため、プレーオフで惨敗となれば大改革も予想されるだけに、シクサーズの方向性を大きく左右する残り8試合になりそうです。