先発は「昨シーズンから比べると少し元気がない」
Wリーグはベスト4が出揃い、今週末に2戦先勝方式のセミファイナルが行われる。東京羽田ヴィッキーズを3点差で下したデンソーアイリスは、リーグ10連覇の『女王』JX-ENEOSサンフラワーズに挑む。
JX-ENEOSのキャプテン吉田亜沙美が「デンソーさんは髙田選手が中心のチームなので、そこを中心に守りたい」と話すように、デンソーの大黒柱は髙田真希だ。東京羽田戦では、ゲームハイとなる31得点を挙げてチームを勝利に導いた。
それでも、大一番を控えた髙田の表情は明るくなかった。若手のステップアップが間に合わないままプレーオフを迎えたことが理由だ。4強のキャプテンが参加した昨日の会見では、チームの注目選手、成長した選手は誰かとの質問がされた。他チームのキャプテンがそれぞれすぐに選手名を挙げていく中、髙田は「スタートで出てる選手は昨年から比べると少し元気がない印象」と、ネガティブな言葉を発している。
昨シーズンは若い勢いをうまく生かしてファイナルへと進出。ただ、そのまま右肩上がりで行かないのがチームスポーツの難しいところ。髙田は若手の発奮に期待しているが、気持ちが足りないと課題を語る。「技術的なことは難しいと思いますけど、今は気持ちの面ですね。『自分が点を取りに行く』とか、『自分が崩しに行く』とか、『絶対に相手を抑える』とか。そういった気持ちが足りないと感じています」
東京羽田との試合では大苦戦。「消極的だったり、迷ったプレーが多くて、パスを探してしまう状況が多かった」と振り返る。「エゴになりすぎるのは良くない」と前置きをしながらも、こうした状況を打開するためにも、「もっと自分を出していい」と、髙田は若手の背中を押す。
「積極的にシュートにいって落とすのは一つの経験だし、それで成長していきます。そうすることで、彼女たち自身も楽しくなってくると思います。チャレンジしてほしいです」
「渡嘉敷選手を抑えながら、得点を取りリバウンドを取る」
髙田があえて苦言を呈するのは、彼女たちのポテンシャルを信じているからだ。「プレーに関しては持っているものがあります。強気が出てくればプレーもともない、もっと良いバスケができるはずです」と髙田は考えている。
しかも、全員が持てる力を最大限に発揮しないと太刀打ちできないJX-ENEOSが相手。「相手のエースである渡嘉敷(来夢)選手を抑えながら、点数を取って、リバウンドも取るのが私の仕事」と髙田は言うが、得点王とリバウンド王の2冠に輝いた髙田にしても、ともにリーグ2位の渡嘉敷とはタフなマッチアップを強いられる。
「自分より10cmくらい高いですし、自分以上に走れるし跳べます。ディフェンスしていても疲れますし、オフェンスもなかなか攻めれなくなるかもしれない」と、髙田も言う。
それでも、髙田がこうした難しいミッションに挑むのは、背中で見せることで、若手の心を動かしたい思いがあるからだ。「自分がそうした役割をすることで、周りの選手も『じゃあ自分もやらないと』って変わってきてくれたら、打開できると思います」
今シーズンのWリーグはレギュラーシーズン22試合の短期決戦。若手が多いデンソーにとっては、チームの完成度を高めるのが難しい。チーム全員が乗りに乗っていた昨シーズンもJX-ENEOSには勝てなかった。ここで『女王』を撃破するには、あえて厳しい言葉を投げかけるしかないのかもしれない。それと同時に、「周りの気持ちの変化にも繋がってくると思うので、意地を見せたい」と髙田は背中で若いチームメートたちを引っ張っていく。髙田の強い意思に若手が触発されて『覚醒』すれば、女王の11連覇を阻止できるかもしれない。