クラッチタイムに圧巻のパフォーマンス
現地2月29日に行われたスパーズvsサンダーは、勝負どころの第4クォーターを34-22で上回ったスパーズが勝利した。リーグで最も若いという意味で共通するこの2チームは、スパーズが12勝48敗と低迷しているのに対し、サンダーは41勝18敗とプレーオフへと突き進んでいる。この日はスパーズが上回り、その象徴が2023年のNBAドラフトで全体1位指名を受けたビクター・ウェンバニャマだった。
ウェンバニャマは28得点13リバウンド7アシスト2スティール5ブロックを記録。試合を通じて注目すべきプレーを連発した。「チームに貢献する最善の方法は、シーズンを通して自分のパフォーマンスを発揮することだと思う。だからルーキー・オブ・ザ・イヤーにはこだわっていきたい」とウェンバニャマは語った。
ウェンバニャマはここまで20.7得点、10.2リバウンド、3.4アシスト、3.3ブロックを記録。その彼とルーキー・オブ・ザ・イヤーを争うことのできる唯一の存在がサンダーのチェット・ホルムグレンだったが、ウェンバニャマはこの日の直接対決で自分の優位性をこれ以上ない形で示したと言える。ホルムグレンも23得点7リバウンド5アシスト1ブロックと、ウェンバニャマに競るパフォーマンスを見せたのだが、勝敗の懸かったクラッチタイムにウェンバニャマはホルムグレンを圧倒した。
第4クォーター残り3分半と2分半にウェンバニャマはホルムグレンの前から3ポイントシュート2本を成功させる。極めつけは残り2分、ホルムグレンのアタックを許さず、ステップバックでのジャンプシュートに飛び込んでブロックに成功。叩き落すのではなく、止めたボールをそのまま保持する圧巻のブロックショットだった。
ルーキー・オブ・ザ・イヤーは1試合のプレーで決まるものではないが、直接対決のパフォーマンスのインパクトは強い。多くのメディアが、すでにほぼ当確だったウェンバニャマのルーキー・オブ・ザ・イヤー受賞がこれで確定したと見ている。言い方を変えれば、ホルムグレンがルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞するにはこの試合でウェンバンヤマを圧倒する必要があったが、そのチャンスを逃したということだ。残り22試合の半分以上を欠場するようなアクシデントがあって『65試合ルール』に抵触しない限り、ウェンバニャマはルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝くだろう。
ホルムグレンはケガで昨シーズンに1試合もプレーできず、デビューが今シーズンに持ち越された。ケガがなければ2022年NBAドラフトの全体1位指名選手であるバンケロを抑えて、2位の彼がルーキー・オブ・ザ・イヤーを勝ち取っていたかもしれない。さらに言えば昨シーズンはプレーイン・トーナメントで敗れたサンダーは、ホルムグレンがいたらプレーオフに進出し、波乱を巻き起こしていたかもしれない。そう考えるとサンダーにとって彼のケガで昨シーズンが完璧ではなかったのは残念だし、ホルムグレンにとってウェンバンヤマという規格外の若手とルーキー・オブ・ザ・イヤーを争わなければならなくなったのも不運だった。
それでも、ルーキー・オブ・ザ・イヤーがその先のキャリアの成功を保証するわけではないし、レベルの高い競争に身を置いて切磋琢磨することでウェンバニャマもホルムグレンもより成長が引き出される。彼らの真価が問われるのは5年も10年も先のこと。レブロン・ジェームズもステフィン・カリーもケビン・デュラントもいなくなった後のNBAで、この2人がどんな立場になっているのだろうか。